3月ころのいただきもの

年度末で出版ラッシュ?なのか、いろいろといただきものがありました。どうもありがとうございます。
まず浅羽祐樹先生から、『したたかな韓国―朴槿恵(パク・クネ)時代の戦略を探る』を頂きました。浅羽先生は去年の頭に翻訳を出されて、年末に共著本、そして今回のご単著と立て続けに頂いて感謝するとともに、そのご活躍ぶりに驚きます。Twitter以外でのメディア露出(SPA!がうらやましいw)も多く、いやほんとにすごいなあ、と。本書では、選挙制度・執政制度・司法制度などから韓国の政治プレイヤーの戦略を読み解く議論が展開されています。われわれがその立場にいたらどう行動するかを考えることは、戦略的な議論の前提で、政治制度からそれが理解できるということです。Twitterで浅羽先生の問題意識に触れていると、より理解が深まるようにも思います。

したたかな韓国 朴槿恵時代の戦略を探る (NHK出版新書)

したたかな韓国 朴槿恵時代の戦略を探る (NHK出版新書)

早稲田大学の稲継裕昭先生からは、放送大学テキストの『自治体ガバナンス』を頂きました。以前に出版された『地方自治入門』は、仮想的な事例から自治体・地方自治についてコンパクトに説明するという形式でしたが、今回のテキストは豊富なデータや図表を用いながら、より構造的に自治体ガバナンスを説明するものになっていると思います。放送大学の教材というわけで、放送大学のご講義で使用されるのですが、実はちょっとだけ私も出演してますw
自治体ガバナンス (放送大学大学院教材)

自治体ガバナンス (放送大学大学院教材)

同僚の野田昌吾先生からは、『ポピュリズム時代のデモクラシー−ヨーロッパからの考察』を頂きました。野田先生は「デモクラシーの現在とポピュリズム」という巻頭の論考を寄せられています。論考からは「ポピュリズム」について批判的ながらも、研究科長として「改革」に向かい合うなかで考えられてきたこともあるバランスが見られるような感じもしますし、また、お忙しい中でよく最近の議論をフォローされているなあと改めて思うところです。東北大学の善教将大先生からは、『日本における政治への信頼と不信』を頂きました。政治に対する「信頼」「不信」は、しばしば重要なものだと議論されながら、どうしても観念的な議論になりがちです(私自身もやったことありますw)。しかし、本書では「信頼」を一義的なものとして捉えずに、複数のタイプの「信頼」−本書では「認知的信頼」と「感情的信頼」に分けられます−の機能を実証データに基づいて分析した野心的な著作だと思います。膨大な世論調査データを収集・統合し、丁寧に処理した上で、著者が「感情的な信頼」と呼ぶタイプの信頼、時間がたっても変わりにくい政治に対する信頼の重要性が提示されています。
日本における政治への信頼と不信

日本における政治への信頼と不信

愛知大学の野田遊先生からは、『市民満足度の研究』をいただきました。「満足度」という扱いにくい対象をまさに果敢に扱われたご研究で、いろいろな読み方ができるご著書だと思いますが、個人的にはこれまでかなり抽象的な議論が積み重ねられてきた政策評価のようなところへ新たな展開を促すものになるのではないか、と思います。これまでの政策評価の研究は、アドホックな事例の紹介にとどまるものが多く、特に量的な分野での蓄積が弱いところがありました。本書で市民満足度という受益者側の観点からその因果モデルに踏み込んで分析されたことは、政策評価研究への大きな刺激になると思います。
市民満足度の研究

市民満足度の研究

京都大学の奈良岡聰智先生から『「八月の砲声」を聞いた日本人』をいただきました。奈良岡先生は加藤高明の研究を中心とした日本政治史がご専門ですが、本書の前半では第一次大戦時にドイツに抑留された日本人に焦点を当てて、総力戦が起きた時に民間人が大量に抑留される経験について議論されています(後半は抑留された植村尚清という医師の手記です)。普段は国の枠組みをある程度前提とした地方政治のようなものを考えていてなかなか思い至らないところですが、本書を読みつつ平時の国家間の関係が微妙な均衡の上に成り立っていることを改めて感じたように思います。
「八月の砲声」を聞いた日本人 ―  第一次世界大戦と植村尚清「ドイツ幽閉記」

「八月の砲声」を聞いた日本人 ― 第一次世界大戦と植村尚清「ドイツ幽閉記」