新政権

いよいよ新政権が発足。ということでニュースショーをゆっくり見てたけど,やっぱりテンション高いなぁ。民主党でも「国民の勝利」って言ってるんだから,と思ったり。それにしても民主党は政策決定システムをどうするかを非常に強く意識していて,マスコミの関心もそこに集中している。結局のところ今回の選挙では,マニフェストなんかで言われた個別の政策よりも,(マニフェストも含む)政策決定システムというメタ政策こそが重要な争点だったのだろう。そういう意味では,この点に注目して分析された,堤英敬先生の選挙学会の報告論文「民主党有権者」の着想は非常に興味深い*1
報道に戻ると今のところ気になるのは,どうも「グループ(派閥)」とか「二重権力」とかそういう使い慣れてきた言葉が当てはまりそうなところを見つけ出そうという感じか。民主党自民党と同じつくりになっていない(というか同じことができない?)から,そういう以前の概念を持ってきてもズレるような気はするものの,まさに角を矯めて牛を殺すというか,ズレたままでも使い続けてたら何となく流通する観念の方に寄ってしまうかもしれない,という怖さはあるわけで。例えば話題の「国家戦略局」なんて,考えようによっては官邸で政調会みたいなものをするだけと考えられないこともないわけで,「政調会をしてる」こと自体がキライで仕方なければ批判されることになるのかもしれない。
(9月20日追記)結局のところ,各省レベルで政調会みたいなものができるらしい。MSN産経の政府・与党の政策決定システム 「各省政策会議」新設 小沢氏通達という記事参照。「小沢氏通達」となっているが,これは単に(とりあえず政府に入っていない)議員をマネジメントするのが幹事長ということだけではないか。やはり実質的に院内総務というか議員団のリーダーという位置づけなのだとしたらそれはそれで理に適っていると思うが。
でも問題は,そういう「政調会みたいなもの」に出ているメンバーが,社会のどのような利益を反映している層なのか,というところになると思われる。以前の自民党政調会は,しばしば社会における様々な組織(利益団体)や既得権益層と繋がっていて,既得権益を抱える拒否権プレイヤーが多いからこそ現状維持点からの変更が難しかった(妥協できるWinsetが非常に小さい)ということが批判されていた。それに対して民主党の政策調整システムは,党の執行部が社会の要請を集約して実現を図るシステムだし,そもそも地方議会とか地元に根付く利益集団既得権益層とは強い関係を持っていないとされるから*2,少なくとも自民党のときよりは現状維持点からの政策変更は比較的行われやすいだろうと考えられる。しかしながら,そういう決定は「総論賛成各論反対」というのに嵌ってしまう可能性が高い。何だかんだと「各論」のどこかで誰かが困るんだ,という話をマスコミが絶え間なく持ってくるわけで,政党が社会の利益を代表するというフィクションを支えきれずに,小選挙区制のもとで知名度を上げたい議員各人が社会の何らかの利益を代表する,という話になればどっかに「政調会みたいなもの」はできてしまう。自民党の場合は,政調会というものを利用して,「各論」のどこかでの痛みをなるべく小さくしながら漸進的にやってきたとも考えられるわけだが。民主党が党執行部への凝集性を維持することができて,あくまでもそういう「政調会みたいなもの」を排除しようとするなら,一番大事なのは社会的セーフティネット,ということになるのかもしれない*3
ただ早くも残念な話もある。記者クラブを廃止するっていうのは公約だと思ってたんだけど,マニフェストに書いてなければ軽く破ってもいいのだろうか。上げた拳を説明無しにしれっと下ろすのは結局不信感を招くだけじゃないかと思うんだけど。

*1:論文はここで読める(分科会F)。なお,論文の中では「政策調整システム」という表現が使われている

*2:ここのところは実際のところよくわからない。丁寧に実証分析する必要があるところだろう。

*3:うまく党執行部への凝集性を維持できるのであれば,今度はマスコミに対して「総論賛成各論賛成」か「総論反対各論反対」かを迫ることができるかもしれない。それは非常に興味深いところ。でもその場合,今後の二大政党の対立軸は何らかの「総論」のところになるのだろうか,あるいは政策決定システムの違いというところになるのだろうか。