地方自治・イタリア・民主主義論など

10月末から11月頭はちょっとばたばたしていて、頂いてからご紹介に時間がかかってしまいましたが。この2回ほど、らしくない(?)エントリーが続いたのですが、通常営業ということで。
まず、聖学院大学の鈴木潔先生から『自治体の予算編成改革』を頂きました。予算編成過程の重要性は言うに及びませんが、実はこれを書いた研究書はそれほど多くなく、自治体職員の方が体験的に(ご自身の自治体の経験を)執筆されたものがほとんどではないかと思います。枠配分や評価の利用など、総論としては言われているものであっても、全体像についてはなかなかつかみにくいですが、本書では、ケーススタディを踏まえて、新たな予算編成方式についての分析がなされています。実は今月末に著者のひとりとして地方自治の教科書を出版することになっていて*1、僕自身が予算編成過程についてちょっと書いてるのですが、教科書を執筆するときに刊行されていればよいのに!と思いました。

自治体の予算編成改革―新たな潮流と手法の効果―

自治体の予算編成改革―新たな潮流と手法の効果―

  • 作者: 稲沢克祐,鈴木潔,公益財団法人日本都市センター
  • 出版社/メーカー: ぎょうせい
  • 発売日: 2012/05/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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地方自治論入門

地方自治論入門

次に、京都大学の和足憲明先生から、博士論文の『地方財政赤字の政治経済学』を頂いておりました。ありがとうございます。最近の中央地方関係の理論的な検討を踏まえて、多国間の計量分析、事例の比較、そして日本の歴史の検討を行なっていく野心的なご論文だと思います。まだきちんと読めてませんが、ぜひゆっくりと読ませて頂きたいところです。
ちょっとしたご縁があって、阪急コミュニケーションズの出版事業部から『アステイオン』77号を頂いておりました。ありがとうございます。特集は「それでも民主主義」ということで、最近の議論状況を踏まえた民主主義論が展開されています。私淑する空井護先生のご論文を読みたいなあと思っていたら突然送っていただく、という、そんなことがあるのか、という感じでしたが、先生のキレキレのご論文が興味深かったです。
アステイオン (77) 【特集】それでも民主主義

アステイオン (77) 【特集】それでも民主主義

専修大学の伊藤武先生から、『近代イタリアの歴史』を頂きました。ありがとうございます。選挙制度を中心にイタリアに興味を持ちつつも、全く縁のない研究をしているわけですが、この機会に勉強をしたいと思います。しかしじっくりと読む時間がいつとれるのか…そうだ、イタリアに遊びに行こう、ということがあれば読むに違いない、と思ったり(妄想です)。
近代イタリアの歴史―16世紀から現代まで

近代イタリアの歴史―16世紀から現代まで

最後に、同志社大学の市川喜崇先生から『日本の中央−地方関係−現代型集権体制の起源と福祉国家』を頂きました。博士論文をベースにしたご著書ですが、その博士論文をずっと以前に読ませていただいていて、まさに蒙を啓かれて現在の僕自身の研究の重要なバックボーンのひとつになっているものだと思います。博士論文からその後のご論考を踏まえて大幅に改稿され、日本の中央地方関係が戦前から温存されていたのでも戦後に断絶したものでもなく、戦争中から変容していったのだ、という問題意識が極めて明らかとなっています。自分の読書体験を以って一般化するのはなんですが、中央地方関係に関心を持たれている大学院生の方には、専門を越えてぜひお読み頂きたい本だとお勧めします。
日本の中央―地方関係: 現代型集権体制の起源と福祉国家

日本の中央―地方関係: 現代型集権体制の起源と福祉国家

*1:ステマです。