第92回会合(2009/8/7)

今回はずっと税財源の議論のみ。冒頭では骨折でしばらくお休みしていた丹羽委員長が復帰。しかし税財源の議論の継続性を大事にするということで,その部分の進行は西尾代理が行うことに。委員長は挨拶で,いない間「ご迷惑ではなかったかも…」と自虐ジョークを飛ばすものの…今回の議論を聞いていると,率直に言って随所で話の流れを断ち切るよくわからない発言が目立ち,やや笑えないところも。

税財源・論点4

前回の続きで論点4から,ということになります。義務付け・枠付けの見直しをしてるのに補助金要綱の縛りが残るようなものはどうするか,という話ですね。今回はまず西尾代理から,もしやるとすればかなり膨大な作業になるものの,ひとつの可能性として,三位一体改革のときに知事会が行っていたような,不要な補助金のリストを作るようなことを考えるか,という問題提起があります。加えてその場合は,三位一体で補助率が一方的に削減されたという反省を踏まえて,補助金の金額ベースで見るのではなくて,最近知事会が提案しているように件数ベースで削減することが望ましいのではないか,とされています。このように補助率を下げるようなことをせずに件数ベースで見る提案には,小早川委員・井伊委員が同趣旨の議論をしています。
その後,猪瀬委員が言い始めた保育所を具体的に念頭に置いたかたちでの議論に移りますが,まず小早川委員からは,保育所について全体的に保育サービスを自治体が提供するという義務付けは従来と変わっていなくて,その中での具体的なやり方についての義務付け・枠付けを外しているから,補助金の要綱でさらに縛っておくことはないだろう,という趣旨の指摘が。この中ではそのお金を国が出すのか,あるいはどの程度出すのかよくわかりません。次に西尾代理は,割と踏み込んで,保育所一般財源化を打ち出してもいいところではないかという議論。ただし,一般財源化を言うと抵抗が強くなって,いまでも抵抗がされている義務付け・枠付けの見直しで妥協できなくなるのではないかという不安がある,と。西尾代理は,この一般財源化という話は井伊委員のお考えと違うのではないか,と井伊委員に水を向けられていましたが,これはなかなか微妙なところ。井伊委員も応えていたように,現行の国による義務付けを全て十分に財源保障しろというのではなく,厳選した上でということなので,保育所がそれに当たるかどうかは精査が必要ということになるのでしょう。ただ,全体的に西尾代理が井伊委員の議論について,そういう精査をせずに10割財源保障すべき,というニュアンスで捉えているのがやや気になりましたが。その後,保育所に加えて公営住宅の話もやや出ましたが,保育所などについて具体的な例として精査?をしていくことになったようです。最終的に一般財源化を目指すものなのか,というところまでは今後の議論になるようですが。

税財源・論点5

次は直轄事業負担金。事務局から出された論点はいくつかありましたが,主に議論になったのは,分権委が以前に出した意見書の以下のくだり,

国の直轄事業の範囲を国が責任を負うべき最小限のものに限定し、直轄事業そのものを縮減することが、地方分権改革の本旨であり、負担金による地方の財政負担を縮小させることになると考える。

で出ているような「最小限のもの」をどう考えるかというところです。特に第二次勧告などで,分権委の議論としては道路・河川である程度「最小限」のものを出しているわけですが(例えば道路なら「30万人以下の都市を結ぶ道路」とか),例えば農水省管轄の土地改良事業などではやっていないよね,という話になります。西尾代理としては,なかなか詰め切れないだろうし,また二次勧告のようなことをやるのは現実的ではない,というスタンスだったようですが,結局ここに拘るだけでは進まない,ということで次の論点へ。

税財源・論点6

今度は交付税改革の議論。宮脇事務局長からの説明では,分権委の第一次勧告で地方税の比率を高めると財政移転の役割を縮小せざるを得ないと指摘をしてきたものの,国からの財政移転のうち,国庫補助負担金については社会保障が大半,大幅な削減が困難であると地方交付税を縮小せざるを得ないという主張についてはどう考えるか,また,交付税の中期的な安定を図るために,特例加算を止めて法定率を引き上げるというのはどうか,といったところ。ここで主に議論されたのは交付税に対する一般会計の特例加算(この図によると2001年から)について。基本的には法定率を上げて交付税の総額がいくらになるかを創から明らかにすることで,地方自治体における財政の予見可能性を上げるという趣旨。ただ,しばしば言われているような「三位一体の復元」が目的だとそれはまずいのではないか,という議論も委員から出ていました。特に民主党が政権を取りそうな中で(この会合は8月頭),消費税を上げないことになったとするとその中で一方的に法定率を現在の水準から上げるのは難しいのではないか,という話。で,しばらくは「民主党どうよ」という話にもなってしまいます。あとはホントに補助金をもう削減できないのか,という論点4に若干類似した話が多少出ていたようですが,一度似たような議論をしているところもあって,あまり深まらず。

税財源・論点7

で,この日最後は地域間の財政力格差の問題。地方税を厚くすると財政力格差が拡大してしまうので,それに対する調整をどのようにするか,ということで,狭く言うといわゆる水平的財政調整制度をどう考えるか,という議論になります。議論の前提とする宮脇事務局長の整理として,「地方共同税」については国の税体系から地方を分離してその中でやる,地方税の充実なしで限定的,47都道府県体制で可能かわからない,とする一方,「地方共有税」については現行の交付税の充実強化,法定率UPが言われているが,現下の財政状況で可能かという問題があると。委員の議論としては,地方税の改革で偏在性が少ない税体系を作るという前提は概ね共有されている感じ。ただ猪瀬委員が前回に引き続いて地方法人税を重視すべきという議論を出していましたが。なぜか法人税の分割基準の話で無駄に時間が過ぎていましたが,議論のポイントとしては,現行の地方自治制度で水平調整を行うことがどうか,ということになります。委員では露木委員が現実的に難しいだろうといっていた他,西尾代理はある地域においてその地域の需要に使う目的で徴収した「地方税」を他の地域で使うことは正当化できないのではないか,という議論。小早川委員からは,財政調整に回る部分ははじめから「地方税」として取らずに,財政調整に回ることを明示しておけばよいのではないか,というコメントも出てますが,全体的に水平調整には否定的な感じ。しかし議論の進め方として,そういう「共同税」的なものがまずい,というのはどうかな,と。「共同税」「共有税」の違いとして,「共同税」の方が国の財政から地方の財政をかなりの程度切り離すことを強調しているのですが,例えば水平調整をしないにしても,国と地方の財政を切り離す,ということをオプションとしてあまり検討していないような感じは受けました。まあそのために資料をキチンと用意するのも面度くさい,ということになるのかもしれませんが。