家探し

出発前にバタバタして手が回らなかったのと(そういう問題か…),奥さんが現地見てから探そうという感じで考えてくれたこともあって,日本出国前には家を決めずにカナダにやってきた。二週間ほど(まだ滞在中)UBCにあるGage Apartmentというところに滞在して家を探そうということに*1。しかしそうはいっても家族連れで,二週間して家が決まらなかったらどうしようという不安は強烈なもので,行く直前になって慌てて大学のHuman resource sectionに相談するとか泥縄なことを…。UBCは大きなキャンパスの中に住居エリアがあって,教員向けのちょっと家賃が安い住宅とか,キャンパス内でMarket rentalやってる会社があったりする。この辺はやっぱり人気があって,ウェイトリストに載ってなんとか…という感じなので,泥縄ではだめみたい*2
そういうわけで,出国直前からネットで家探しをしていたわけだが,使っていたのはsabbatical homesという在外研究など短期の研究者向けに住宅をマッチングする(要するに在外行く人が来る人に貸す)ウェブサイトと,バンクーバークレイグリスト。前者は何というか「研究者」という身元がある程度はっきりしてる人向けのサイトで割と反応があるのだけども,その分期間などの条件にいろいろ制約があるのでなかなかうまくマッチせず。後者のほうはちょこちょこ出てるんだけど,メールで連絡しても基本的に返ってこない…というやや悶々とした日々が続く。
結局何も手持ちの候補がないままバンクーバーにやってきて,半ば途方に暮れつつ家探し。クレイグリストでいけそうなところにメールじゃなくて電話するとまあ反応が返ってくるという感じになり,何とか内見し,かなり狭いなあとは思いつつ契約へ。まあやっぱり手持ちがなくて全然反応ない状況だと不安になるわけで,きちんと反応してくれる人だとありがたいし何とかやっていけるかなあと思うもんですねえ。しかし「ウサギ小屋」としばしば揶揄される家に住む日本人*3から見ても狭いなあと思う家っていうのはどうやねんと思わんでもないですが。
(一応決まったから言うところあるけど)住宅の研究をしている人間としては非常に興味深いプロセスではありました。住宅について日本みたいに仲介業が発達しているわけではないようなので*4,基本的に相対で契約が行われます。借りる側から言うとどんな人なんだろうというのは不安ですが,貸す側から見ても不安なので,メールなんかで連絡するんじゃなくて家に来てくれる人を優先する感じになるみたい。ていうか,メールだけだととても信用できないというか。この点,sabbatical homesのほうだと一応研究者ということで交渉できるのはまさにシグナリングということなんだと思います*5。通常の貸し借りの場合,家主自身が契約書を作成して,借り手に対して説明するような感じなわけですが,内見に来た客にその説明をしてるときに,客の信頼度合いを判断し,客が本当に信頼できるのかについての照会先(勤務先とか前の大家とか)も重要になっているみたいです。
日本と比べて難しいなあと思うのは,カナダのほうは移民が多い中で,賃貸業をするには移民を相手にせざるを得ないところがあるので,この信頼性の判断を大家自らがしないといけないところかなと。(日本のように)敷金をかなり高くとればまだ簡単なのかもしれないけど,たぶん法定の敷金というのがかなり安くなっていて(家賃の半分)そういうことができないんだと思う。借りる側から見ると,一応帰ってくる敷金を多めに払って解決できるならそれでいい,というのはなくもないだろうけど,他方でそれが用意できない人が住宅にアクセスできないとそれも困るだろうから難しい。まあざっくりした話になるけど,一時的に現金持ってるよりも,ある程度永続的な照会先を持ってる人を選別的に住宅に入れるシステム,と言えるのかもしれない*6
大家さんからいろいろ聞いてるとなかなか面白くて,バンクーバーはやっぱり土地が高くて普通にローンを返すだけだと厳しいと。そこで今回我々が入るLaneway houseと呼ばれる裏庭の小屋みたいな家を作ったり,地下部分をBasement suiteとして貸し出したりして家賃を稼ぐということがよくみられるみたい。このLaneway houseは,ウィキペディアによると2009年ころから始まって,ほとんどバンクーバーにしか見られないような形態らしく,その発達について調べてみるのも面白いかもしれない。こういうのができるのは,もともとの区画がそれなりに広いからということで,土地の細分化を防いでるところはあるけども,このLaneway houseをそれだけで売り出したりするようになるとひょっとしたら細分化が進んだりすることになるのかも。このあたりもなかなか興味深いところ。
自分の生活で研究ネタにするのはあんまり…って感じですが,要するに一応落ち着けそうだということで。家のことでいろいろとご心配いただいた方々,どうもありがとうございます。

*1:ここすごいいいとこなんて,バンクーバー長期滞在の方にはお勧めです

*2:ただ言い訳すると,教員向け住宅は資格がよくわからず,Market rentalのほうは正直うちには高いのでちょっと無理

*3:なおこれは,1980年代にOECDの視察でそいう話になたということですが,あくまで公団を中心とした賃貸物件の話であって,持家についてはそんなに狭いわけではないということになっています。

*4:あるけどエイジェンシーのための料金は高いみたい

*5:このサイトの場合,登録するために大学所属のメールアドレスが必要になるので一応身元は分かる。

*6:ただこれは家族連れ向けのバイアスが大きい話だと思う。たぶん1人向けの住宅はもっと入りやすい。