地域の実情に応じて

ここのところ大騒ぎだった定額給付金がようやく決着,ということで。

定額給付金の支給方式決着、麻生首相も了承=河村官房長官
2008年 11月 12日 11:23 JST
[東京 12日 ロイター] 河村建夫官房長官は12日午前の記者会見で、追加経済対策の目玉である定額給付金の支給方式が自民・公明間で決着したことを明らかにした。調整が難航していた所得制限については、各市町村がそれぞれの実情に応じて決定することととなり、法律による制限は設けない。合意内容について麻生太郎首相も了承したことを明らかにした。
決着した概容は、(1)定額給付金は1人当たり1万2000円。65歳以上と18歳以下は8000円加算する、(2)これに要する総額を全国それぞれの市町村に交付する、(3)所得制限を設けるかどうかは各市町村がそれぞれの実情に応じて決定する。所得制限を設ける場合の下限は所得1800万円。所得は収入から必要経費を控除した後の金額で、所得1800万円の場合、給与水準では2000万円程度になる。(4)所得制限を設定した市町村において、返還された給付金は、返還に関連する事務費の一部に充てることができる──など。
(強調引用者)

国で立法措置を取らずに地方自治体に交付金を出して,地方自治体が補正予算(条例は必要ない)を組んで配る,というまあ最も(中央政府にとっては)簡便な方式で妥結したわけですが。でもこれってある種のOff-loadingではないのだろうか…。まあまさか交付税基準財政需要額に入れるわけではないだろうから(だとしたら不交付団体はどうなるよ),何かの特例交付金ということになるのでしょうが,いくつか微妙な疑問が。
まずひとつは,一般財源として配るのだろうかということ。交付要綱付きの交付金として配るのに法律が必要なのかどうかというのはいまいちわからないわけですが,仮に交付要綱なしで交付金配ったときに,もし地方自治体がちゃんと仕事をしなかったら−つまり配らずにガメたら−どういうことになるのだろうか。いや,現実にはいろいろ難しいとは思うわけですが,法的な縛りがなかったら,あくまでも中央政府としては勝手に金を配って,自治体の補正予算に期待するしかないのではないだろうか。これは単に思考実験ではあるけれども,定額交付金として振ってきたお金を政府・与党の意向通りに配るか,それとも「危機に瀕する地域医療」のために全額使うかで住民投票やったらどうなるんだろう。むしろこっちの方が「地域の実情」に応じてる気がするが。
もうひとつは,自治体の側から申請するもんなのだろうか。まあほとんど同じ疑問なわけですが,交付要綱がついてるやつってだいたい申請出さないともらえないと思うんだけど,そうじゃないと国から勝手にお金が降ってくるのだろうか。しかも,辞退者が出たら返還云々とあるけども,辞退といわず単に取りに来なかった人が多かったときに,余ったお金はどこへ行くのだろうか…この感じだと,とてもじゃないけど国に返せ,とはいいにくい気がするんですけど…。それに「国に返せ」って言われたら,その面倒を考えると辞退なんて絶対受け付けないと思うんですが。
しかしこの定額給付金は非常に興味深い。もはや壮大な社会実験としてみるべきでしょう。経済学的な話は知りませんが,少なくとも政治学行政学の観点からは,このよくわからない手続きについてもいろいろグチグチ考えることができるし,何より(所得制限関係なく)辞退者が出たところと,次の選挙における自民党議員の得票率の相関なんかを見れたらなかなかいい実証データになるのではないか。