鳥取

鳥取自動車道が3月23日に全線開通したので鳥取に行ってみた。中国自動車道佐用JCTから鳥取自動車道に乗って向かえば、大阪から2時間半もかからないくらいで鳥取まで行くことができる。鳥取自動車道開通の話は、ゼミの学生さんが論文のテーマに選んでいたことで知って、行ったことないし砂丘も見てみたいなあ、ということで、ちょっとした家族旅行先に。
鳥取自動車道は、こう言うと怒られるかもしれないが、「無料」をテーマにした高速道路のように思われる。鳥取道に乗るときは当然だし、鳥取市を走っているときにも、至るところ緑の標識で「無料」がアピールされている。無料なのでもちろんICの乗り降りは自由、ということでSAはなくて、一度降りて近くの道の駅に行くことになる。PAはあるみたいだけど(使ってない)、Wikiで読む限り非常に小さいもので上下線共有だったりするらしい。さらに、西粟倉−智頭南区間では、自動車専用道路なのに一般道路と道(トンネル)を共有する区間がある(個人的には初めての経験だったが、他にあるんだろうか)。これがあって有料化で地元の交通を寸断するわけにもいかないし、新しいトンネルを作るのもムダだ、っていうことになると、無料という制度を変えることは非常に難しいのではないかと思われる。明らかに高速の便益があって、また車はそれなりの速度で走るから維持管理に金もかかるのは間違いないもので、複数の県(鳥取・岡山・兵庫)に跨っている。まあいわゆる新直轄区間なわけだが、普通の高速自動車道が一度税金で建てて料金で償還していくのに対して、新直轄ははじめに地元が建設費を一定率で負担して無料になる。同じ「高速自動車道」っていうのはなんだかなあ、と思わないでもない*1


砂丘は何というか非常にちょうどいいくらいの気温で、ちゃんと砂丘に登って海を見ることができた。次男を抱っこしながら登ったのだが結構きつく、もっと大きい子どもを抱っこしてすっと登っていた若いお母さんに驚いた。しかしまあ春の晴れた日だからこそ登れたわけで、夏の糞暑い日は日陰もなくて登れないだろうし、冬の寒い日はそれはそれで厳しいだろう。砂丘に行った後は、近くの砂丘こどもの国へ。アトラクションは面白いのが多いし、できてからある程度時間が経っている割には非常にきれい。同じように子ども連れの家族が多くて、(砂丘もそうだけど)大阪方面のナンバーをつけた車が多かった。鳥取自動車道効果はやはりあるんだろう。

個人的に印象が強かったのは鳥取市。非常にわかりやすいんだが、市の中心は若桜街道が通っていて、北の端が鳥取県庁。鳥取県庁の北側には鳥取城址となってる小高い丘がある。また、県庁の周りには警察や裁判所、それから若桜街道を少し南に行ったところに市役所、といった施設が揃っていてこの辺りがまちの中心だったことがよくわかる。まあざっくり言えば北に行くほど「格」が高い感じになるんじゃないだろうか。しかしながら経済というのは残酷な話で、若桜街道の南端にある鳥取駅の付近の方が最近では明らかに栄えている感じがする。鳥取駅から県庁まではまあ歩いても行ける距離で、たぶん30分くらいだと思うが。ちなみに、鳥取駅から若桜街道を北に行く途中、若桜街道沿いに南から舞立昇治自民党参院議員候補者)、川上義博民主党参議院候補者(現職))、石破茂、と事務所が続いていた。
さて興味深いのは市役所、というかその庁舎。画像検索すればわかるが、市庁舎は非常に古くかつ小さい。その結果として、鳥取市内にはいろんなところに市の分庁舎があって、まあ地図を見るだけでも不便な感じがしている。当然、というべきなのかはわからないが、この市庁舎の改築という問題が起こっていて、今は鳥取市で非常に大きな政治的争点になっている。市内をドライブしているときに「市庁舎移転反対!」っていう垂れ幕つけた車がスピーカーで街宣してたし。
庁舎移転が争点になっている理由は大きく二つが考えられる。ひとつはまあ言うまでもなく昨今の風潮で、カネがないときになんで市庁舎を新しくするんだ、という話。市庁舎新築移転を問う市民の会のウェブサイトを見ればまあ色々書いてあるように、庁舎移転に絡んで不透明な支出がされていて、耐震補強の方が安上がりなのに選択されないのはいかん、ということ。もうひとつは、あんまり表面的には出ていないので僕の邪推かもしれないけど、まちの中心をどこに置くかという深刻な問題に起因する。つまり移転先が旧鳥取市民病院跡地ということで、先ほど書いた若桜街道の南端、鳥取駅のさらに南口すぐに置かれるということになっていて、これはまあいわばまちの秩序を根本的に変える話になるんじゃないか、と*2。なお、移転が想定された土地の横にイオンが立っているのは象徴的でなかなか興味深い。しかしながら、市庁舎移転については、2012年5月に住民投票が行われ、投票率50%で6割くらいが移転反対で否決となった移転反対派のリーフレットでは、移転先の場所を示すこともなく、徹底的に無駄遣い反対ということで押している。市の方でも耐震改修案の具体化に向けた取り組みを行うことになったらしい。個人的には、朝日の記事に出ていたように「若桜町」を事務所に高齢者が反対派の先頭に立っているところに政治的な争点としての性質を見るわけだが。
まあどこに行っても仕事のことを考えながら動いてしまうのは、多くの人に見られる職業病なんだろうけど…もちろん子どもと遊んでるときは一生懸命遊んでたつもりなんですが。それにしてもいまちょこちょこと調べ始めている庁舎問題は面白い。多くの県庁所在市では、鳥取と同じように県庁と市庁が割と近いところ、元のまちの中心部に置かれて国鉄駅がそこからちょっと離れて作られているように見える。経済的には駅周辺が発展していく中で駅のような新しい中心に絡みながら庁舎移転問題が起こる。ちなみに、調査している長崎市はこの逆のパターンで、県庁が駅に寄っていく計画を立てている。都心をめぐる政治ということで、少し実証的な分析ができるかなあ、という気もしてきたところ*3

*1:いわゆる「高速」のしくみは非常に複雑になっている。これは清水草一『高速道路の謎』に詳しかった。

高速道路の謎 (扶桑社新書)

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*2:検討段階では鳥取駅北口も検討されたらしい。

*3:ネタ的な分析は、以前αシノドスに寄稿しましたので、ご関心の向きはそちらをどうぞ。なんかどうやって見たらいいのかわかりませんが。