続・規制権限の分権と二重行政

TBを頂いたのに反映されない,ということで別エントリを。前にもBiglobeのwebryブログからTBを頂いて,それが反映されないことがあったのですが,これはhatenaとwebryの問題なんでしょうかね。
さて,法律関係のご教示を頂き,ありがとうございます。この個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律と平家さんのエントリを読む限りで,都道府県労働局と都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争の処理の整理としては,次のようなかたちになるかと理解しております。

  1. (国の機関である)都道府県労働局長は,個別労働関係紛争に関し,当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合に,当事者に対して必要な助言又は指導をすることができる
  2. 都道府県は,「国の施策と相俟って」個別労働関係紛争の自主的な解決を促進するための施策を推進するように努める

法律の第4条の末尾,「都道府県労働局長は〜必要な助言又は指導をすることができる」という表現がどういう意味を持つのか,つまり初めに読んでたブログでもかかれているように,裏に「しなくてもよい」を含むのかどうかというのはちょっとよくわからないところではありますが,とりあえずそれは措いておくとして,法律の構成から考えると,まず自主的な解決,それから国の機関である労働局による斡旋,そして地方公共団体の努力もありうる,という話だろうと思います。法律の20条を読む限りでは,地方公共団体の事務は努力義務としているように読めるので,基本的に国の機関がこの事務を行うという前提のもとで都道府県は出来るだけ頑張りましょう,というかたちで整理していることになるのでしょう。
もちろん上の議論は理解できるのですが,「二重行政を解消しろ!」と叫ぶ人たちの議論は次のようになっていると思います。

  1. 国の機関と都道府県の機関が「個別労働関係紛争の処理」という同じような事務を行っている
  2. 国の機関と都道府県の機関が同じような事務を行うのは,組織や人員の運用において非効率
  3. 都道府県の機関でできるなら,分権すればいい(専門性や人員が不足するなら国の機関から移譲すればいい)

まあ単純な議論といえば単純な議論ですが。しかし,この場合(それが良いか悪いかは別として)全国一律の基準というのはそれほど大きな問題とはされていなくて,地方自治体が各地域のニーズに合わせて「個別労働関係紛争の処理」という事務を行えばよい,という話になります。住民のニーズがあれば地方政府もそういう事務をちゃんと行うだろう,それで専門性や人員が足りなければ国の機関で従前仕事をしていた人を呼んでくればいいだろうと考えることになります。法律上,国の機関が主で都道府県の機関が従のような位置づけを与えられている現状を前提とするのであれば,「同じような事務を行うのが非効率」なのであれば地方でこの事務をやめればいい,という反論もありうると思いますが,半ばイデオロギー的に「都道府県の機関もある程度やっている→地方もできる→地方に出来ることは地方で」というかたちで押し出されるとき,そういう反論が必ず効果を持つとは思えません。
僕が前のエントリで書いていたのは,この手の話の場合には,単に効率の問題だけではなくて,そもそも規制主体と被規制主体が近くなってしまうと,十分な規制が行われなくなってしまうことのほうが問題じゃないか,ということを言いたかったわけです。特に読んでたブログの内容が,北海道という地方自治体の関係団体を舞台にした話だったので,そこから「公務」の比重が大きい地方部では少し考えたほうがいいでしょうねぇ,ということを書いてみた,ということです。まあとはいえ,必ずしも常に国の機関がこの仕事をするのが好ましいかどうかはわかりません。ある地方自治体の機関が関係団体で発生した個別労働関係紛争を処理するのは問題だろうなぁ,とは思いますが,場合によっては国の出先機関の方が被規制主体と近くなってしまうことだってありうるかもしれません。この辺りは可能であれば実証的なデータを踏まえて慎重に検討する必要があるのではないかと思いますが。
平家さんが何か違和感を感じられているとしたら,まあ僕の不勉強もあると思いますが(ご紹介頂いた法律についてきちんと知っていたわけではありませんし),考える前提がやや違っていたからではないかと思います。まあ現実にはそんなに分権へのイデオロギーってのは強くないのかもしれませんが。