関所

関空の連絡橋部分が国有化されるために,泉佐野市の税収が落ちてしまうのでどうしよう,というお話。今年の一月に報道があったときは,空港島に限定して固定資産税を引き上げることが検討されていたということなのですが,結局のところ関西国際空港と対岸を結ぶ連絡橋を通行する車に「利用税」を課税することになったそうです。
[地方財政]どっちもどっちなんでしょうが。

大阪府泉佐野市議会は19日の臨時議会で、関西国際空港と対岸を結ぶ連絡橋を通行する車に「利用税」を課税する条例案を、賛成多数で可決した。車1台往復150円を徴収し、年間5億7000万円の税収を見込む。地方自治体が条例で独自に課税する「法定外税」としての導入を目指すが、実施には総務相の同意が必要だ。審査には3カ月程度かかる見込みで、同意が得られるかが焦点となる。
連絡橋道路部分は今年度、関空会社が国に売却することが内定している。通行料は現在、普通乗用車で往復1500円だが、売却で800円程度に引き下げられる見込み。昨年度ベースで約8億円の固定資産税を失う市は、対抗策として値下げと同時の課税を検討していた。
連絡橋は年間約380万台の通行が見込まれ、条例案では車1台往復150円を課税。期間は当面5年だが、今後10年間とすることを検討し、固定資産税額に当たる57億円を回収したいという。新田谷修司市長は「国が損失補てんに応じた場合はすぐにでも取り下げる」と説明している。
一方、総務省自治税務局企画課は「流通の重大な障害に当たるか、慎重に協議する必要がある」と指摘。市内部からも「関所のようで、市外からは理解が得られない」と批判がある。関空会社も「売却は国際競争力強化のための国の施策。売却効果を減じるような課税は理解に苦しむ」と反発している。

関空連絡橋:大阪・泉佐野市議会が通行税条例可決

やはり市の一部地域だけについて固定資産税を上げるというワザは使えなかった,ということなんですかね。原発のようなかたちで法定外普通税を設定するかなり粗い議論もありえたのかもしれませんが,この場合はやはり課税ベースがなかったのかな。空港で課税ベースになりそうなものってちょっとすぐには思いつきませんが。
しかしこの決定はいろいろと考えさせられるところが多い。「国策」か「地方の税収確保」か。国と地方が対等の関係である,という前提のもとではどちらが優先というのは難しいのだろうと思いますが。しかし「国策」のために泉佐野市が丸損食らうというのもどうかと思いますし,国と空港会社が空港の利用促進のために連絡橋の利用料を下げようとしているときに自治体が税収確保のために利用料を取るというのものねぇ…。利用料の下がり方が少し緩くなるものであって利用料が下がることには変わりない,という考え方なのかもしれませんが。ただオモテに出てしまうと辛い話であることは間違いないなぁ,と。売却話をまとめるときに泉佐野市をもう少しかませて調整することはできなかったのかなぁ,と思ったりするわけですが。まさか国交省関空会社の交渉に総務省泉佐野市が入ってないとは考えにくいですが,そもそも泉佐野市に何の補償もないという非協力ゲーム的な決定になってること自体が結構興味深い。「法定外税取るぞ」という脅しがそのまま実行されたら完全にカタストロフィックなチキンゲームなのではないかと思ったりするのですが,日本の行政機関同士でチキンゲームやるっていうのは珍しいような気がします。