第59回会合(2008/9/30)

今回からは出先機関についての各省との公開ヒアリング。この「公開ヒアリング」という形式は一次勧告の前にも局長級の「責任ある」官僚の方々を読んで行っていた方式なわけですが,これは聞いてる側としては辛い(しかも長いし)。何が辛いかって(1)委員側の質問に対してわざとかしらないけども官僚側の答弁が微妙にポイントを外していて何を言ってるのかわかりにくい,うえに(2)委員間で整合的な質問がされておらず,ある委員が議論を詰めていっても他の委員が横から別のよくわからない質問/コメントを被せる,という二点です。いや別に誰がとは言いませんが(言ったって意味ないし),少なくとも委員長が毎度唐突に「いやー,でも地方で十分できると思うんですよね」っていうのはやめた方がいいと思うんですが。もちろん根拠がわかるときもありますが,多くは根拠があるように聞こえないわけで,せっかく詰まりつつある論点を消失させてしまうことは少なくないのではないかと。前に橋下徹大阪府知事が改革プログラムを作るときにやっていたのですが,裁定を行う知事は口を挟まずに,知事直属の事務方とヒアリングに呼ばれる方がディベートをしているのを聞いて,そこから判断するというのは結構有益な手法ではないかと。せっかくのヒアリングなわけですから,論点をキチンと絞ってディベートのような手法を入れてみるのもひとつの案だと思うんですけど。

政策ディベート入門

政策ディベート入門

前振りが長いですが,59回の委員会は国土交通省へのヒアリング。内容は地方整備局関係の道路・河川と港湾,地方運輸局関係の自動車交通と観光,とまあ多岐にわたります。今回は長いんで,整備局と運輸局でちょっと見出しを付けてみました。

地方整備局関係

まず道路・河川については基本的に知事会との交渉の進捗報告が中心。いままでは知事会が財源が確保されるかどうかを不安視して進まなかったと。9月16日に出された分権委の意見を元に総務省国交省で国・地方の財政中立の考え方に基づいて整理したことで,これからは知事会・都道府県との個別協議には入れるだろうという見通しが示されます。ここはなんと言うかほぼ猪瀬委員の独壇場という感じなのですが,論点としては主に二つ。まずおさらいをすると,どの道路を移管対象にするかということで,国交省は国が責任を持つべき道路として

  1. 高規格幹線道路
  2. 県庁所在地等の重要都市間を効率的・効果的に連絡し、広域交通を担う道路
  3. 重要な港湾・空港と(1)、(2)の道路との間を効率的・効果的に連絡する道路

を挙げて,このうち(2)の一部が移管対象になるという考え方です。(2)の一部といっても例えばバイパス区間とかひとつの都道府県内で完結する道路,とかあるのですが,そのときに「重要都市」をどう定義するかによって移管対象が変わることが指摘されています。猪瀬委員の主張はその「重要都市」の定義を柔軟にせよということで,国交省はこの点について都道府県の提案も受ける,という答弁をしています。また,似た点の指摘としては露木委員から,「広域交通を担う道路」かどうかについて交通量関係のデータをもとに検証すべきだ,という指摘もありました。要するに,委員側からはいかに(2)のうちで地方で担うことができると考える部分を増やすかということが問題になるわけですが,国交省は一応都道府県からの提案を聞くということなので,まあ比較的柔軟な対応なのかなぁ,と*1
もうひとつは人員の移管について何の説明もない,という指摘。確かにそうなのですが,国交省としても人を動かすのは非常に大変なのだという答弁を。昭和43年から定員の純減を始めて,いまでは当時の半分になっている,少ない人数で大変なんだ,という話なのですが,猪瀬委員からはその分公益法人である建設弘済会に行ってるだろう,という指摘も。まあでも人を動かすのは処遇の問題もあるし大変なんですよ〜,という話しか出てこないわけですが,丹羽委員長から人の処遇については一括して検討すると。処遇問題さえ片付けば(片付くのか?)ここは抗弁のしようが難しい気がしますが,どうなるんですかねぇ。
次は港湾。何か港湾の人は分権委に来たのが初めてなのか,わりとベーシックな説明からスタート。論点としては西尾代理が指摘するように,港湾は整備を直轄でやって出来上がったら港湾管理者に管理委託するのもで,整備面での直轄工事が限定されているかどうか,というポイントであり,第一次分権改革のときに基準を作って直轄工事を限定化したが,それでもまだ広い範囲ではないか,という問題意識になってます。委員と国交省の遣り取りでは市場に近いところが決めるんだとかなんだかヨクワカラン話になってたのですが…。個人的には各自治体が自由に工事をするとなると,隣が持ってるならウチも欲しい,ということで港湾が過大に供給される可能性があるので国がやる,という理屈なのかと思ってたのですが,どっちもそういうことは言わず。猪瀬委員は国がやると作りすぎるという主張だったのですが,どうなんですかね,国というものが(制約なしに)建設予算の最大化を図るという前提を置けばそうなる気もしますが…。まあポイントとしては,国が作った港湾が本当に予定通り機能しているか,ということで,国交省は,港湾ごとに凸凹はあるがだいたい計画通り,あるいは計画以上に機能を果たしているという主張。ただ(1)出てる数値はあくまで全ての港湾を集計した数字であること,(2)いわゆるスーパー中枢港湾と呼ばれる巨大港湾に投資が集中していて,集計するときにそこの数値が占める比率が大きくなること,から本当に「スーパー中枢港湾」以外の直轄港湾が計画通りの機能を果たしているかは正直よくわかりません。委員から「無駄な港湾もあるんじゃないか?」といわれても(当たり前だけど)印象論では応えられません,という答弁だったし。

地方運輸局関係

運輸局関係のうち,自動車交通については,結局のところ前回ヒアリングと同じような話に終始。ただ違うのは前回でも書いてる「キャラが立った」人が終始しゃべってて聞いてる僕が辛かった,というところですが。だいたい「国と地方は対等なんですよ!!!」って絶叫調でしゃべられても…。まあそもそも説得しようとする気があるわけじゃないんでしょうけど。
まあグチはおいておいて,国交省の主張をもういちど整理するとだいたい次のような感じ(前とほとんど同じですが)。

  • 国(本省),運輸局,支局が存在し,そこを人がぐるぐる回ることで教育研修が進むとともにPDCAサイクルが確保される,で,このようなやり方をすれば少ない人数で効率的♪
  • 運輸局が行う仕事の判断は全国統一的な基準によって運用される必要がある,地方自治体に仕事を任せれば仕事はできるだろうが,本省と切り離されているので判断は遅くなる,迅速に判断するためにはいまの状態が望ましい

このコーナーで聞いてて辛かったのは,バス・タクシー事業者の許認可やトラック事業者の許認可といった「自動車交通」の話をしているのか,運輸局がやってる個別の車への「自動車登録」の話をしているのかがぜんぜんわからなかったところ。上で箇条書きした国交省のコメントも,これ「自動車登録」だけなんですよね。委員長の冒頭質問は「自動車交通」の話だけで,国交省の説明もそれが主なのですが,何故か意見交換冒頭横尾委員の質問から,「自動車登録」の話が中心になり,率直に言って僕には意味不明でした。小早川委員がこの点を質問していて,「自動車登録」の話では国交省の主張も理解できるが,「自動車交通」の話は違うのではないか,と。まさにそこが本筋だと思ったのですが,答弁は「車は県域を越える」という以上のことはなく,そこから他の委員のコメントも入ってだんだんよくわからない方向へ…。だから残念ながらメインの「自動車交通」の話はとても詰まっているとは言いがたいものでした。国交省側がメインにしていた「自動車登録」については…よくわかりませんが,都道府県ごとに登録基準を変えることがそんなに好ましいとは思えませんが,それよりも規制緩和が先に必要な気が。分権したら各自治体が規制緩和する,という論理なのかもしれませんが(でも事故が増えたら今度はどこが叩かれるんだろう…)。
で,ようやく最後の観光分野に。この次の日(10月1日)から観光庁ができるわけで,注目の分野なわけですが,まあはじめたばかりで何とも言いがたいのかそれほど時間は割かれず。目立った論点としては,観光庁の説明で「国際向け・国内向け」を分離せず,各地域の取り組みを支援する,という話だったのに対し,西尾代理がむしろそこを分離すべきで,観光庁は「国際向け」の重要な仕事に特化して欲しいという主張を。国交省は地域の受け入れ態勢が不十分だから支援しないといけない,というのですが,委員からは受け入れようとするところは国交省などに言われなくてもキチンと態勢を整えるのだ,と。あとは猪瀬委員から観光庁出先機関はどうするのか,という質問があり,国交省からの回答は運輸局の中に「企画観光部」ができていますとのこと。あとは露木委員から公益法人はどのくらいぶら下がってるのかという質問があったものの,明確な回答は得られませんでした。前回は「日本観光協会」という公益法人があることが議論になっていたのですが,今回はそのあたりの話は出ず。まあ議論を詰めるなら底のところかと思うのですが,始まったばかりの組織をいきなり再編するのも難しいのかも。
終わってからは猪瀬委員の国交省への質問を読み上げるという不思議なコーナーがあったものの,記者質問はなぜかなし。まあきっとでなかったのでしょうけど,毎回出してるものは一応出しておいた方がいいような気が。というのは,町田徹氏の興味深いコラムで,公務員制度改革の顧問会議の配信動画で,委員が紛糾している場面が一部カットされてたという話があるからなんですが。僕が見てる限り,分権委ではたまに変な音ズレがあるものの,基本的に文脈のつながらないような編集はしてないと思うのですが(念のため:繋がるように編集,という意味ではありません),他の会議でそういうことがあると「動画配信」という手法の信頼に関わるので,ある程度固定的なフォーマットはキチンと踏んでおいた方がいいと思うわけですが。

*1:他があまりに頑ななのでそう見える,という話である気もしますが。