学級委員長モデル

上記の『戦後日本政党政治史論』を読みながら,地方政党を中心に勉強しようという来年度のゼミについて考えてた。政党って言ってもなかなか取っ掛かりがないし…と思いつつ,2010年にNHKで放送されていた,「ようこそ先輩」で御厨貴先生が「政党ってなんだろう」という回を担当されていたことを思い出した。これは実に秀逸なプログラムで,当時見ながらとても感心して,再放送を録画したりしてたのだが,そのときはDVDレコーダーもなく,なかなか授業でも使えないなあ,と(もしDVDをお持ちの方がいらしたらぜひ教えて下さい!!)。
そのプログラムは,小学校でクラスに政党を作る,というところからスタートするのだが,生徒一人ひとりがクラスの問題や改善すべきポイントを考えたうえで,同じ問題意識や理念を持つ生徒同士がちょっとずつグループを組み,他のグループと合従連衡していく,というようなもの。生徒は結局「国会」と似たようなことをしていくわけだが,そういうことを知らない小学校の生徒が大人と同じようなことをしていくのも興味深いし,逆に「ゲームのルール」(ひとり2票が与えられる)のもとで冷静に行動していくのも面白い。
そんなことを思い出しながらふと考えていたのは,日本の選挙の原体験って学級委員長じゃないかなあ,ということ。今はどうなってるのかしらないけど,だいたい小学校ではそこそこ成績優秀な「学級委員長タイプ」という子どもがいて,他の生徒からは何となくお前がやれよという空気が作られ,また成績がよくて言うことも聞くので担任の先生とのコミュニケーションも取りやすいから行事なんかはそれなりに回る,というような感じ。でも,クラスの「中心」とはちょっと違うところがあって,別にクラスを「代表」してる感覚はない,というか。
選挙で政治家選ぶときもそんな感じなんじゃないかな,と思うと「政党」との距離はかなり遠い。そういう学級委員長は「権力」持ってるわけじゃないし,要するに担任含めてめんどくさいことをうまいこと処理することが期待されるわけだから,あんまりリアルな政治闘争されても困るよ,って。自分にリアルな影響が及ぶことは期待してないし,そもそも想定もしていないわけで。
いやもちろんそら地方の地主さんとか名望家層を選んでいくような選挙はもっとリアルにポリティクスなわけでしょうが,都市の選挙っていうのはそういう何て言うか郊外の小学校に似たところがあるのかもしれない。単純に選挙制度の問題だけじゃなくて,そういう生活体験に根ざしたものであるとすると,そう簡単には変わらないだろうなあ。