非営利法人としての政党
某仕事で非営利法人制度について色々と調べたのだが、原稿の締め切りに遅れてしまってご迷惑をおかけしたものの、個人としてはなかなかよい機会だった。ただ調べたことを全部かけるような分量では当然無く、あれもこれも書きたいなあ、と思いつつ残念なところは残ったけど。その中で、最近研究している「政党」との関連を考えたのだが、いつかもうちょっと深められたらと思い、備忘のためにメモ。
日本の制度では、NPO法制定のときから、非営利法人の政治活動を規制するという問題意識が自民党に強く、たとえば原則自由だが法人の機関決定として特定の政党を支援するのはダメ、という社民党やさきがけとは随分揉めたらしい。普通に考えたら、「非営利法人」なんだから政治活動=非営利活動することに問題があるわけではないはずだが、日本の非営利法人制度の場合、法人格を付与するときに「公益性」を認定して一定の税優遇措置をつけていたので、特定の公益性を帯びた非営利活動を行うNPO法人であっても特定の政治勢力に肩入れするのは問題だ、ということで、政治活動にも制限がかかっている(とはいえ結局「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと。」という表現で落ち着いた)。
2006年に制定されて、現在の非営利法人一般を定めている一般法人法では、特定非営利活動促進法であったような政治に関する規定はない。税の優遇措置は公益法人ほどではないものの、完全に非営利(=剰余金の分配を行わず、残余財産は国庫か類似法人に寄付)であれば原則非課税なので、税制面ではふつうのNPO法人と同じとなっている*1。
さて政党については、今のところいわゆる政党助成法で法人格の付与が行われている。しかし、大阪維新の会のような政党要件を満たさない地方政党は、任意団体=人格なき社団であって、法人格を持っていない。事務所を借りたりするのもたぶん法人名義では行われていないはずで、いろいろと問題もあると思われる。そこで、地方政党というか新しい政党としては一般法人の法人格をとっていくということはあり得るのではないかと。政党が一般法人になって残余財産を分配できないようにすれば、解散時には財産が基本的に国庫か承継政党に寄付されるわけで、以前に自由党の解党に伴う財産の問題で揉めたようなこともなくなるんじゃないか。ただまあ社団だろうから社員をどうするかという問題はありうるけど、最悪議員総会を社員総会にすればいいんじゃないかと思うし。
もっといえば、現在政党助成法で法人格を付与されているのも止めてしまって、基本的に一般法人からスタートさせた上で、時の試練を経たまともな政党は一般法人から二階に登って公益法人にしてしまえば、税の優遇措置も大きくなるし、特定公益増進法人として寄付を受けた場合に寄付金控除を出すこともできる。何より情報公開等の要件が厳しいから、政治とカネの問題も透明性が増していくのではないか。ちょっと興味深いことに、公益法人法での活動の規定でも「政治」という言葉は入っていなくて*2、「公益目的事業」を行うというゆるい規定になっており、政治活動っていうのは「公益」の最たるものだと思われる。細かいことを言えば、公益認定基準に政治がらみの話は書いてないし、公益目的23事業の中には「18.国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業」ってものちゃんと入ってる。
組織運営の仕方が窮屈になる、っていうことで反対されそうな気もするけど、そもそも普通の法人では理事とか評議員とかによって構成されているガバナンスもなく、会計基準だって何使ってるのかよくわからない、という状態の方がおかしいわけで。他の法人組織と同じような組織である、とイメージできることは、政党にとってもとても望ましいことだと思うんだけどなあ。