最近のいただきもの

もはや最近、とはいえない状況になってきましたが…。頂いた本を一応拝読して、色々書きたいなあと思いながらたまってしまうという悪循環にハマってしまいました。1月からのものですが、とりあえずご紹介を中心に。
御厨貴先生から『知の格闘』を頂いておりました。先生の東大先端研での最終講義をまとめたもので、内容はいろいろ考えさせられるところがあるのですが…とにかく業界関係者としては抱腹絶倒というやつでして、未読の方は電車の中で読むことは勧めない、というものです。僕は頂いてから研究室でゲラゲラ笑いながら読んでしまいました。また、同じく御厨先生から文庫化された『権力の館を歩く』も頂きました。『馬場恒吾の面目』に続く文庫化であり、本当に広い読者がおられるのだなあと羨ましい限りです。

龍谷大学の上田知亮先生からは、『植民地インドのナショナリズムとイギリス帝国観−ガーンディー以前の自治構想』を頂きました。私はインドの政治史どころか現代史についても全くの素人で(「世界最大の民主選挙」が行われるという関心はありますが)、ただただ勉強させていただいただけ、という感じになりましたが、その内容はインドナショナリズム・イギリス帝国の影響というだけではなく、連邦制というものを考えるのに非常に興味深い事例だなあという印象を受けました。深い社会的亀裂と一体性を同時に表現する制度としての連邦制というものをどのように考えるかに当たって、ヒンドゥー多数派と少数派のムスリムの関係について様々な形で議論をしてきたインドの経験というのは、他国にとっても参考になるものであるように思います。東洋経済の連載でご一緒した首都大学東京の水越康介先生からは『「本質直観」のすすめ』を頂きました。内容を拝読すると、連載とは違う内容もたくさん含むかたちでまとめられているので驚きです。連載終了から数ヶ月しか経ってないのに!経営学政治学の共通点・相違点について考えさせられる内容であったと思います。松本俊太先生、飯田健先生からは、『オバマ後のアメリカ政治』を頂きました。私はアメリカ政治についてもやはり完全に素人ですが、本書を読むと、アメリカという外国の分析であってもサーベイをして実証分析、という流れがあるのを知り驚きました(日本語出版なのに→これからきっと英語でもということなのでしょうが)。私自身、サーベイの設計などをしたことはなく、それが簡単でないということだけは理解しているつもりですが、そういう勉強もしなくてはいけないのかもなあと改めて思いました。網谷龍介先生、伊藤武先生、野田昌吾先生、日野愛郎先生からは『ヨーロッパのデモクラシー』を頂きました。既に出版された定評ある教科書の第二版ですが、情報が更新されているだけではなく、新規にクロアチアが入ったり、コラムが加えられたりしています。このくらい一覧性のあるかたちでヨーロッパの政治制度を知ることができる教科書はなかなかないので本当に便利です。
ヨーロッパのデモクラシー

ヨーロッパのデモクラシー

特にイギリスについて、ということでは同僚の北村亘先生から『現代イギリス政治[第2版]』を頂きました。選挙・政党だけではなく、歴史や政策(経済政策・教育政策・外交政策)など幅広くイギリスについて扱った教科書です。非常に多くの情報を提供しているので、イギリス政治研究を行うにあたってはまず読まれる本ということになると思います。
現代イギリス政治

現代イギリス政治

やや専門が違うのですが、同じく同僚の谷口勢津夫先生から『租税回避論』を、前任校の同僚であった宇羽野明子先生からは『政治的寛容』を頂きました。谷口先生は高等司法研究科の研究科長を務められながら一冊の本をまとめられるのはとても大変であったかと思います。いずれの本も、専門は違うとはいえ政治学で非常に重要なトピックを扱われているので、ぜひ勉強させていただきたいと思います。
租税回避論―税法の解釈適用と租税回避の試み

租税回避論―税法の解釈適用と租税回避の試み

政治的寛容 (大阪市立大学法学叢書)

政治的寛容 (大阪市立大学法学叢書)

それから、立命館大学の松岡京美先生からは『行政の行動』を頂きました。博士論文なのかな、と思ったのですが、学位取得後に書かれたものをまとめられたということで、大変なことだったと思います。分析の対象となっているのは、震災復興事業と大分県を中心とした一村一品運動で、ちょっと両者の距離は遠いのかな、と思いましたが、問題意識は基本的に行政の組織形成にあって、大きく二つの事例(?)から、日本の行政がどのように組織形成を行うのかが分析されています。
特に一村一品運動の分析では海外の一村一品運動(タイ・韓国)と比較が行われつつ、組織が先に存在して色々な目的を包含していく日本の行政組織と、目的に合わせて組織を作っていくようなタイなどの行政組織との比較がうまく描かれているように思います。一村一品運動は、実は海外にも波及しているにも関わらず、その分析があまり行われていなかったので、その点においても重要な研究ということになるのではないでしょうか。