『現代日本の政党政治』ほか

大阪大学の濱本真輔先生に,『現代日本政党政治』を頂きました。どうもありがとうございます。大学院の時代から10年以上精力的に取り組まれてきた研究をまとめられたもので,まさに待望の一冊という感じです。とても密度の濃い文章で,集中して読むことができました。いわゆる中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へと変わった選挙制度だけが政党(組織)を変えるわけではなく,関連する制度とおそらく相互に影響を与えながら議員たちの行動が変わっていく,というのはまさにその通りだと思います。私の議論は,選挙制度と相まって,地方分権や地方政治が政党とその組織の在り方に影響を与えるというものでしたが,本書で扱っている選挙過程・立法過程での制度や慣習が重要というのは,直観的にもより分かりやすく受け入れられやすい主張だと思いました。 

本書で一貫して論じられているのは,分権的な志向――つまり自分の選挙を第一に考えて行動するということ――を持つ可能性がある議員たちが,政党という組織の中でどのように一体性を確保するのか,ということです。混合制のひとつである小選挙区比例代表並立制のもとで,政党・小選挙区選出議員・比例選出議員が同床異夢ではありながら制度の維持を志向して定着していくこと(3章),政党中心の選挙への変化(4章)とそれを受けた議員行動の変化(5・6章),執行部を中心とした政党の自己改革の試みとその効果(7-9章)について,自民党を中心に非常に手堅く議論が重ねられています。濱本さんが,政党組織の研究と並行して行っている利益団体研究の知見がふんだんに盛り込まれているところは非常に興味深いですし,また新聞記事データベースなどを利用した,独自データの収集についても非常に見習うべきところのある仕事と言えます。

結局のところ,影響は非常に大きいとしても選挙制度改革がすべてを決めるわけではない中で,政党の自己改革が重要な意味を持つことになります。しかし,その自己改革が起こるためには,例えば政権党にとっては政権交代への危機感のようなものが必要でしょうし,野党であれば政権交代を求める一体感が重要でしょう。現在の状況は,前者はともかく後者に大きなボトルネックがあるように見えます。私などは,そういう状況を動かすにはやはり制度改革というのは重要な手法だと思いますが,まあそれは当然ながらある程度の合意がないと難しいわけで,本書の含意はそういう困難を逆照射しているところがあるようにも思います。 

現代日本の政党政治 -- 選挙制度改革は何をもたらしたのか

現代日本の政党政治 -- 選挙制度改革は何をもたらしたのか

 

 さらに,濱本先生には,上神貴佳先生・遠藤晶久先生・鹿毛利枝子先生・藤村直史先生と一緒に『日本政治の第一歩』を頂きました。12のトピックについて,それぞれの分野で第一線でご活躍されている先生方が集まって作られた教科書です。執筆者の一覧を見えると,比較政治を専門とされている方が多くて,その方々が特に日本政治ということで執筆されているのは興味深く思います。比較政治の視点から「応用問題」として日本政治を位置づけて理解を深めるものになるのではないでしょうか。 

日本政治の第一歩 (有斐閣ストゥディア)

日本政治の第一歩 (有斐閣ストゥディア)

 

 北海道大学の村上裕一先生からは,『地方創生を超えて』を頂きました。ありがとうございます。北海道の先生方によるプロジェクトで,村上さんは「自治体担当者は地方創生をどう受け止めたか」というテーマで,北海道と(おそらく似たような状況の)四国2県の調査を行って分析されています。これまで長らく「地域開発」が行われてきた北海道での「地方創生」が進められるわけですから,というのは(あるとすれば)両者の違いを考えるのも面白いかもしれません。

地方創生を超えて――これからの地域政策

地方創生を超えて――これからの地域政策

 

 慶応大学の細谷雄一先生からは,『戦後史の解放』シリーズ2巻を頂きました。ありがとうございます。先日の池内先生と同様に連作になっているものですね(1巻はこちら)。お忙しい中で前後編のものというのは本当にすごい執筆スピード…。しかし「まだ」講和条約ですからまだまだ続いていくのだと思います。「戦後史」がどこまでなのかもなかなか興味深いところですね。沖縄返還なのか冷戦終結なのかはたまた… 

 立命館大学の加藤雅俊先生からは,ボブ・ジェソップ『国家』の翻訳を頂きました。ありがとうございます。住宅の勉強をしているので,最近はたまに都市論の論文を読んだりすることが増えたのですが,ジェソップ氏の研究は,(批判理論的な)都市の政治経済学のような文脈でもしばしば参照されていて,何か読んでみないとなあと思っていたところでした。今回,近著の翻訳をいただいたのをきっかけに,勉強してみたいと思います。

国家:過去、現在、未来

国家:過去、現在、未来