日本の行政学/地域衰退
授業が落ち着きだいたい採点も終わったと思ったら,それまで先送りにしてた仕事に圧倒される,というのは毎年の二月の光景ですが,今年度はオンライン授業であったことと来年度以降の某業務のためにいつもよりひどい感じに…。来年は大丈夫なんだろうか(というと鬼が笑うのでしょうが)。
少し前に編者の先生方に頂いたのですが,『オーラルヒストリー 日本の行政学』を面白く読みました。お一方ずつすき間時間に読めるので…。Go online!で行政学や地方自治の授業を考え直す羽目になったこともあり,微妙に身につまされながら読んだところもありますが。自分の関心に近いところもあり,個人的には特に最後の三先生(水口先生・橋本先生・森田先生)のものを面白く読みました。欧米の研究で議論されている理論や実証の方法というのは意識しながらもやっぱり日本の文脈というのはあって,何というかうまく英語圏の研究に乗らないなあと思うところは昔からあんまり変わんないんだなあ,というか。たぶん実務的な話とかかわってくるときにそういう齟齬みたいなものが大きくなってくるような気がします。うまく埋められるといいのだけど,そのためには英語でそういう文脈を意識的に作らないといけないんでしょうね,と思ったり。
オーラルヒストリーの最後で語られている森田先生は,特に財政的分権について議論された地方分権推進会議に委員としてかかわって,いろいろご苦労された話も書かれています。この会議でまとまらなかった財政的分権は,最終的に三位一体改革として実現し,主に国庫負担金からの税源移譲が実現するわけですが,その後自治体間の財政格差が広がっていくということがしばしば指摘されています*1。宮﨑雅人先生に頂いた『地域衰退』は,そういった格差の拡大の果てに,言わばもう回復が難しいくらいに衰退してしまう「地域」について議論したものです。主に農村部を中心に議論されていますが,製造業・建設業のような地域における基幹的な産業を失ってしまうことで衰退に歯止めがかからず,それを合併のような「規模の経済」による解決で食い止めることは難しい,と。観光や福祉・介護などを含めたサービス業が一挙に基幹産業となって地域を支えるが難しい,というのは少し文脈が違いますが,以前に読んだダニ・ロドリックの国際貿易における議論-開発途上国における一足飛びのサービス業化のためにいわゆる南北格差の解消がより困難になる-を思い起こすところがありました。