地域主権改革大綱

先送りする,という話も出ていたものの,結局地域主権戦略会議では,「地域主権改革大綱」を取りまとめたとのこと。経緯については,松井望先生の一連の観察を見て頂きたいところですが,マスコミ等で話題になったのは,例の「一括交付金」の話。例えば時事通信の記事は以下の通り。

地域主権戦略大綱を決定=一括交付金の11年度創設が柱−政府
政府は22日の閣議で、今後2〜3年の地域主権改革の方向性を示す地域主権戦略大綱を決定した。各府省縦割りの国庫補助負担金に代わり、地方自治体が自由に使途を決められる一括交付金を2011年度から段階的に創設することを盛り込んでいる。
一括交付金については、対象となる補助金の範囲を最大限広く設定することを明記。11年度からは施設整備など投資関連の補助金を、12年度からはサービス給付など経常的な補助金を対象とする。具体的な制度設計などは秋からの予算編成過程で議論する。(後略)

以前のエントリでも,交付税との関係がよくわからない,ということを書いていましたが,相変わらずその点はよくわからない。とはいえ,地域主権改革大綱(案)(決定本文に変更があるかは不明,議事録も今のところ出てない)によれば,一括交付金の扱いは全体像を別としても「義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大」「基礎自治体への権限委譲」「国の出先機関の原則廃止」に続く4番目ということで,扱い的にはそんなに全面に出てない気がする。
内容については,それほど具体的なことが書いてないのでなんとも言いづらいが,「一括交付金の制度設計」のところを読むと,現行の新型交付税(の考え方)のように,住民一人当たりの収入を均等にしていくものというよりも,社会保障関係などについてブロック補助金として扱うもののように見える。「一括交付金の制度設計」の中には,「国は、一括交付金化の実施状況を点検し、PDCAサイクルを通じて制度の評価・改善を図る。その際、会計検査院の検査も活用する。」という文言もあることを考え合わせると,この一括交付金は「地方自治体が地域のために行う仕事」のために用いられるというよりも,「(社会保障のように)全国的な観点から行う仕事」(地方だけに任せるとうまく供給されない?)を行うために交付されるものであるように読める。だとすると,モデルとして意識しているのはやはりカナダの制度であって,現行の地方交付税とは両立可能だという判断になるのだろう。
念のために言うと,別にだから問題だとかいってるわけではないです。おそらく考え方としては,全国的な観点から行う仕事について,ブロック補助金によって財源を一定程度確保しつつ,地方の裁量を増やすという考え方自体は十分にあり得ると思うし,裁量を増した地方の実施状況を,会計検査院のような組織の活用を含めて,中央政府の方が評価していくという考え方は,これまでよりも踏み込んだものとして評価できると思われる。ただ,まあそれでも僕は地方交付税との関係は問題になると思うが。具体的にはブロック補助金を出すとして,それ自体で仕事を賄うことを考えているのか,交付税で裏負担を行うことを考えているのかわからないというのが問題だと思われる。前者であれば交付税の大幅な改革(配分方法を根本的に変える必要があるのではないか)だと思うがそういう言及はないし,後者だと結局現在とほとんど変わらないでしょ,という話になるのではないか。その辺よくわからないままだが,「大綱(案)」では,

平成23年度から一括交付金を導入する。国と地方の役割分担や地方の事業実施体制の在り方等を踏まえ、一括交付金の制度設計について、地域主権戦略会議を中心に関係府省と共に検討し、予算編成過程を通じて一括交付金化の内容を決定する。

という威勢のいいことが書いてある。まあこれはようするに「選挙終わったらやりますよ」ということなのだろうが,実のところその次のページ「地方税財源の充実確保」のところで,「今後の課題と進め方」の中に,

ひも付き補助金の一括交付金化を進めるとともに、地方公共団体の厳しい財政状況や地方の疲弊が深刻化していることにかんがみ、地方交付税については、本来の役割である財源調整機能と財源保障機能が適切に発揮されるよう、地方税等と併せ地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額の適切な確保を図る。

ってサラって書いてるのがきになるところ。まあハッキリ言ってよく分からない表現だが,「地方交付税については…」以下を見る限りでは,やはり現行の交付税制度を大幅に変えることはないということだろう。だとすれば,やや冷たい言い方だが,国の省庁の補助金支出についてある程度不満を分散することさえできれば,「一括交付金」化はそれほど難しいことではないと思われる。ただ下手すると,社会資本整備総合交付金(仮)みたいなものになって,実質的には変わってないとマスコミからお叱り?を受けることになるかもしれない。せめて地方の裁量を増やしつつ,中央政府が地方の実施状況を評価する,というところは(お互いに我慢して)残して欲しいところ。