最近頂いた本

異動を挟んでこの間いくつか書籍を頂いていました。まず、国立情報学研究所の小林哲郎先生から『ネット選挙が変える政治と社会』を。どうもありがとうございます。本全体としては、アメリカと韓国の事例を中心に、ネット選挙っていうものがどういうものかについての記述的な分析が行われています。色々議論されがちなネット選挙の現在が分かる、っていうことでゼミでも一部を読んでみたいと思っています。小林先生のところは、Yahoo!との共同研究で得られたデータを用いて、個人がメディアの党派性をどのように認知し、接触しているかを分析しているものです。マスメディアとは違って、ニッチな受け手をもっていそうなネットニュースは党派性が強いと考えられがちですが、日本のネットニュース利用についてはそういう傾向が見出されにくい、と。まあ日本の場合Yahoo!ニュースが圧倒的なシェアをもつという特徴があって、それで党派的な手がかりを見出すことが難しくなってるということも考えられるそうですが。個人的には、メディアとの接触と政党システムの構造的な類似性を巡る議論が興味深いところでした。

ネット選挙が変える政治と社会―日米韓に見る新たな「公共圏」の姿

ネット選挙が変える政治と社会―日米韓に見る新たな「公共圏」の姿

愛知県立大学の與那覇潤先生からは『環日本海国際政治経済論』を頂いておりました。直前にご紹介した『日本の起源』に続き…ということで本当にすごい仕事量ですね。本書では浅羽祐樹先生も編者に加わっていて、浅羽さんもまたすごいなあ、と。與那覇さんの論考は、持論の「中国化」をめぐるものですが、今回はかなり政治学に近い興味深い議論で、『日本の起源』で「バッファー」という表現で議論されていたのに近いことが、「拒否権プレイヤー」という政治学で使われている概念を用いながら説明されています。「拒否権プレイヤー」の中身はもう少し分けられるかなあという気はしますが、日本の政治過程における多元主義とその変化を考える上で興味深いものではないかと。これが「日本型多元主義」の主唱者のおひとりである猪口先生の編著に入っているのはなかなか趣深いところではないかと。
環日本海国際政治経済論

環日本海国際政治経済論

宗前清貞先生、松本俊太先生、近藤正基先生、辻由希先生からは大嶽秀夫先生の古稀記念論文集である『現代日本政治の争点』を頂きました。大嶽先生が以前出された『日本政治の争点』を承けたタイトルだそうです。著者がそれぞれにご専門のところで論文を書かれているのですが、それをまとめてみるとやはり大嶽先生の問題関心の幅広さがよくわかりますね。『官僚制支配の日常構造』という、日本におけるストリートレベル官僚制の議論では必ず参照される、ほぼ唯一と言ってもいいようなモノグラフを書かれた畠山先生も大嶽先生のところで勉強されていたということは知りませんでした。
現代日本政治の争点

現代日本政治の争点

さいごに、著者のみなさまから『選挙と民主主義』を頂きました。選挙の分析というと投票行動の分析が多いわけですが、本書では投票参加についても書かれていますが、それだけではなく選挙の管理や運営に関する分析が行われているようです。電子投票在外選挙制度、被災地の選挙、といったテーマは選挙管理関係で非常に重要なところだと思いますが、なかなか一冊にまとまったものはなかったんじゃないかなあ、と。また本書では一票の較差についての問題も議論されていますが、やはりその辺も含めた選挙管理の問題がいまキテる、ってことなのかも。
選挙と民主主義

選挙と民主主義