査読論文

まあそれはそれとして。なぜか今の家に転送されてこなかった『公共政策研究』を,弟(前の家の住人)から実家で受け取る。今年の年報は何か色々と面白いところが多かったように思いますが。牧原先生・金井先生の論文は僕自身興味はありつつも,あまりきちんと考えてきていなかったところだったので,読んでいていくつか気づかされたところがあった。当面の仕事が一段落したときに少し考えてみたいな,というところ。しかしやっぱりRamseyer and Rasmusen[2003]は読まないといけないですね。
この二つの論文はそういう意味で勉強になったのですが,この中で一番興味を引かれたのは,福井先生の論文(福井秀樹「競争入札の有効性」)。競争入札において非効率を招く可能性がある事業者の戦略的行動が取られているかどうかを検証しようとした論文で,データや方法論に一定の制約があるものの,一貫したモチベーションのもとで丁寧な実証分析がなされていると思う。残念ながら,僕自身の競争入札制度に対する知識が不足しているので,変数の意味などがきちんと取りきれていないところがあるけれども,少なくとも理解できた範囲では,現実問題に即した説得力のある議論が行われていると思う。この論文にもあるとおり,少なくとも十分に設計された競争入札をかけていればある程度価格を低下させる効果は認められるのだろう。そのときに問題になるのは,id:sunaharay:20061224:p1で少し議論されているような,好ましくない業者を選んでしまう逆選択の問題ではないかと思う。契約後の機会主義を防止する方法とともに,発注側が受注者のもつ隠された情報にどのようにアクセスするのか,っていう議論も結構面白いかも。
こういう論文が年間数本載っていると,政治学の業界もだいぶんいい感じなのではないかなぁ,と思う。もちろん僕の主観ですが,他の論文が(査読付)「研究ノート」になっていて,この論文が唯一の査読付「論文」になっているところを見ると,やっぱり査読する側がよい論文を選び出す能力があるということが示されているのではないかと(隠された情報,ではないけれども)。査読付論文を通じて雑誌の価値が上がる,というプロセスが進行して,かつ自分がそれに少しでも貢献できるといいのですが(というのは今年に限らずいつもの目標)。

公共政策研究〈第6号〉特集 政策の総合調整

公共政策研究〈第6号〉特集 政策の総合調整

Measuring Judicial Independence: The Political Economy of Judging in Japan (Studies in Law and Economics)

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