分権委員会第五回

最近は珍しく毎日ブログを書いているのですが,ネタがあるというよりは一日中進まない博論書きが中心なので,たまに脱線を…ということで。
今日は久しぶりの地方分権改革推進委員会。五月末の「基本的な考え方」,さらにはその頃に出される経済財政諮問会議の骨太を睨んだ議論,ということになっているようです。まず事務局の参事官から,四月の議論で各委員から出された所見をもとに「論点整理案」が説明され,そのあとは…まあ要は延々ブレスト(よく言えば)。いや正直聞いてるほうとしては辛かった。一瞬議事録に変えようかなぁ,とも思うくらいに。しかしやっぱり一般的に会議って言うのはあんなんなんですかねぇ。昔某市でやってた「市民参加」の会議も似たようなところがありましたけど,話してるそばから論点がどんどんずれていって,「積み上げ」の重要な要素であるところの決定が少なくとも会議の中ではなされているようには見えない。まあ僕が未熟だから,実は決まってるところを単に見落としてるだけ,という可能性は高いですが,公開の会議なわけだし,みんなで何かを決めるところを演出してもいいんじゃないかなぁ,と思ったりするわけですが(いやもちろん公開だからこそ決められない,ってところはあるでしょうが)。本論に入る前に引っ張るわけですが,やっぱり会議の中で決まらない,ということが話がわかりにくくなる原因なんじゃないかと思います。青い議論かもしれませんが。会議の中で話している中でなんとなく流れていったところを事務局が拾って,次の会議のときに「まとめ」みたいなかたちでなんとなく決まったように出てくるっていうのは,−そしてその「まとめ」について事務局ばっかり批判するのは−やっぱりちょっとよろしくなくて,決定権があるならそこで議論を詰めて決めちゃうべきじゃないかな,と思ったりするわけですが。
まあ前置きが長いのですが,今日の話はブレストなので…。一応盛り上がったり僕が傍観者的に見て大事らしいなぁ,と思った議論は以下の通り。とりあえず挙げたのは,特に反対もなく割りと賛意を示す人が多かったもの。

  • 事務局案(論点整理案)では,役割分担の議論,権限委譲の推進,規律密度の緩和などの議論の進展に応じて税財源の配分や行政体制の見直し,と整理されているが(5ページ),これらはこの順序ということではなく同時並行的にやるべき
  • システムを変えるには大きな覚悟が居ることを明記すべき
  • 自治体間の連帯(現在の話で言うと広域連合など)を強調すべき,しかし単に連帯すればいいというものではなく,屋上屋を重ねないようにすべき
  • 税源移譲を進めるべき(後述)
  • 出先機関の人員削減と地方公務員の削減,その過程で人材を国から地方に移す必要がある
  • 立法権の委譲と地方議会の条例制定権の拡大
  • 縛りの厳しい(法定)自治事務に対する自治体の裁量拡大

という感じでしょうか。基本的にはあんまり役割分担の議論で個別の事業をみたりして動きが取れなくなるのは困るので,そこはなるべく地方が責任を持てるような形で大雑把なわけ方をして,他の議論をきちんとしよう,というスタンスではないかと思います。
税源移譲については,やっぱりこれはいろいろ難しいところがあるんだなぁ,と思わせる議論ではあったのではないかと。まず研究上の興味に近いところからいうと,井伊委員が税財源を委譲したときに地方が(必要な)再分配政策をやらずに他に回す可能性があるんじゃないか,という,Race to the bottomの話を持ってきたのですが,それに対して露木委員が,むしろきちんとした財源が配分されていないから必要な政策が実施できず,また,国庫補助で縛られているために「手を差し伸べたい」というところに資源を配分できない,というかたちで反論するところが見られました。再分配政策の財源をどうするか,というところはかなり大きな問題なのでもうちょっと議論が続くかと思ったものの,残念ながらこのやり取りで話は終わり,他に流れることに…。しかしまあずっと問題になるのは間違いないと思うのですが…Race to the bottomの議論をするのが井伊先生だけ,という可能性は否定できず,あっさりと基礎自治体が(財源も含めて)福祉などの再分配政策に責任を持つ,という方向に流れそうな悪寒。
もうひとつは交渉ごととしての興味です。委員はみなさん税源移譲にはどちらかというと賛成の口ぶりですが,一番最後のほうで,例の5:5を「基本的な考え方」で明記するかどうかでちょっと議論になりました。自治体代表の委員は強く5:5を主張していたのに対して,丹羽委員長と小早川委員は現状でそこを争点にすべきでない,という態度だったように見えます。*1しかしこの5:5を言い出してしまったことで,分権の議論は将来的にかなり制約されることになるような気が…。というのは,再分配の財源を中央が持って,実際の執行を地方がやる,という制度を極めて作りにくくしているように思えてならないのですが。
まあ今回はこんな感じ(ブレストなのでむちゃまとめにくい)だったのですが,ちょっと個人的に気になることとしては,特に猪瀬委員を中心に「地方公務員を削減しろ」という話がよく出てきて,それはそれでわかるのですが,地方公務員の数を自分で決めるってのが分権なんじゃないんですかねぇ…。自己責任,というのであれば,「ムダに」地方公務員の数が多くてその分必要な行政サービスができていないことに対する政治的な責任を首長とか地方議会が取る,っていうのが筋のような気がして仕方ないのですが。公務員について中央が一定の財源保障をするとしても,地方の裁量を増やすという趣旨ならば,人件費分の一定の財源を渡してそこで人数も含めて自由にやりくりして,足りないならちゃんと説明して増税するべきだ,という話であって,標準の人員を超えることはまかりならん,という話ではないと思うのですが…どうなんでしょ。

*1:なんか最後に日経の記者が各委員にムダに踏み絵をさせようとしてたので,明日の朝刊はこの辺になるんでしょうかねぇ。