介護ボランティア

厚生労働省の新制度。ボランティアがポイントになって,そのポイントを使って介護保険料を納めたり,介護サービス利用料を払うことができるというものだそうです。ある意味予想通りですが,一部では「そんなのボランティアじゃない」批判も出てるとのこと。まあ確かに見る限り基本的には労働ですわねぇ。「ボランティア」した分が介護保険料とかそういう「お金」に回るわけですから。

介護保険料、ポイントで納付=高齢者の健康増進で新制度−厚労省
厚生労働省は9日、介護保険とボランティア活動を組み合わせた新たな仕組みを導入し、全国的に推進していくことを決めた。高齢者のボランティア活動実績を「ポイント」として点数化し、そのポイントで介護保険料を納めたり、介護サービス利用料を支払ったりできるようにする。同日、各都道府県を通じて市町村に通知した。
(中略)
新たな仕組みは、原則65歳以上の高齢者が対象。市町村が定めた管理機関にボランティア登録した上で、高齢者の話し相手や家事の手伝いなどの活動に従事し、管理機関がその活動実績に応じてポイントを与える。
ボランティア活動で得たポイントは、管理機関が「換金」。ボランティア参加者に代わって、介護保険料として市町村に支払う。同省は、地元の商店街と連携してショッピングなどにも利用できるようにし、地域活性化にもつなげたい考えだ。
(後略)
5月9日時事通信

ちょっと面白いのは,実はこの制度,最近たまにあるらしい「特区申請のパクリ」らしい,ということ。

◎「介護支援ボランティア特区」提案へ=東京都千代田区稲城市
東京都千代田区稲城市は、介護ボランティア活動を行った高齢者の介護保険料を割り引く「介護支援ボランティア控除特区」の創設を内閣府に提案する方針を固めた。特区で保険料控除制度を実施することで同制度の効果を実証したい考えだ。
千代田区稲城市は、現行制度下では自治体が独自に介護保険料を控除することは認められていないため、この保険料控除が各地で実施できるよう制度の改正を求め、厚生労働省政令改正を検討していた。しかし、複数の自治体や学識経験者などから「介護保険の現金給付につながる」「本来のボランティア精神に反する」などの反対意見が相次ぎ、改正見送りが決まった。
両自治体の構想は、65歳以上の高齢者が、指定する介護保険施設や介護予防事業などで一定期間・回数以上ボランティアとして働いた場合、翌年度の介護保険料を年5000円程度控除するというもの。高齢者が介護支援活動を行うことを奨励、短期間でボランティアを集めることで、地域内で高齢者同士が支え合う体制をつくり、介護給付抑制も狙う。
(後略)
2005年12月8日時事通信

まあそんなわけで当初は払うべき介護保険料(の足し)にするんじゃなくて,介護保険料の額自体について控除しよう,ついては介護保険料の控除を自治体に認めてくれ,という特区提案だったわけです。なんか反対意見はためにする意見のような気がしてならないわけですが,保険料控除はダメだけど保険料の足しにするのはいい,というよくわからない結論とともに結局のところ厚労省が吸い上げて全国的な制度にしてしまった,というまるで機関委任事務時代みたいなお話になってます。そのうえに,この補助金廃止のご時勢のなかで,財源として「地域支援事業交付金」を活用することができる,っていうことで,ちょっとドウナノコレ?と思ってしまうわけですが。
とはいえなかなか悩ましい問題が多い。高齢者のボランティアにインセンティブをつける,っていうどうしても「ボランティアなのか?」という疑問を引き起こしてしまう制度を作ったのが,比較的裕福とされる東京の都市。*1まあ実際問題ほとんど高齢者に労働させて賃金を払ってるようなもんなわけで(たぶん賃金の低い−生産性と見合ってるかどうかはしらない),やっぱりそんなことができるのは最近財政が潤ってる東京くらいなのかなぁ,とは思いますが。ただ一方で,そこに補助金交付金か…)突っ込むのはどうなのよ,と。そういう政策することは譲っても,やっぱり一般財源対応にするのが筋で,そのために充てる用のお金を上からおろすっていうのはどうかなぁ,と思うわけですが。…いやまあボランティアを動員して得た便益がかかった費用より上ならいい,って言われたら謝るしかないわけですが(それでも交付金突っ込むのとは違うような気はするが)。

*1:稲城市は交付団体ですが。