シンポジウム

地方分権改革のヲチャーの端くれとしては行ったほうがいいのかなぁ,と思いつつ,前になんとなく申し込んでいた日経/R&Iのシンポジウムを聴講。前半は竹中平蔵慶應大学教授と宮脇淳北海道大学教授による最近の地方分権改革の流れみたいなお話で,後半は地方債に関連するアクター(地方自治体,投資家(バイサイド),証券会社(セルサイド),シンクタンクの研究者)によるパネルディスカッションで,前半の部は演者の集客力もあるのだろうけど,えらくたくさん人が入っててびっくり。
前半のお話は,小泉内閣,特に竹中教授が総務大臣をしているときの地方分権改革の考え方が中心。まあそうなんだろうなぁ,と思いつつちょっと興味深かったのは,出発点として受け皿論みたいな話から入ってたところ。基礎自治体を大きくしていくとやっぱり都道府県はちょっと小さいよね,ということで27次地制調の道州制とリンクしつつ,道州くらいの単位の自治体が自前でインフラ整備をしつつ国際競争をしていくように,という問題意識があるという話をされていた。グローバル化の中で小国の政府が効率的に運営される,っていうAlesinaの話なんかを引いていたりして議論としては一貫しているなぁ,という印象。ただ特に竹中元大臣はかなり各レベルの政府の財政責任の明確化,という議論を強調していて,その辺はどうなのかなぁ,という気も。まあ道州単位で完全に切ってしまえばそれなりに可能な気もするけど,道州の内部で各基礎自治体まで財政責任を明確化できるのか(する必要があるのか?)という問題はあるのではないか,と思ったり。連邦制の国では一番下の層の自治体は州の被造物だったりすることが多いわけですが,基礎自治体の強化から入っていくとそういうわけにもいかないだろうし。一方の宮脇教授が強調していたのは,問題となっている税財源の改革は地方債も含めて一体的に議論すべし,というところでしょうか。当面改革の対象となるのは国庫補助負担金であるとはしつつも,現存の負担金の中で社会保障費が太宗を占めていることに触れた上で,社会保障関連の事務をどの程度地方で行うことができるかということを考えつつ,その後の税源の移譲やそれによる偏在みたいなモノを一緒に考える必要があるだろう,ということ。あとは日本に大都市制度が存在しないことの問題点を,道州制の道都との関係で指摘していたのが興味深かった。

The Size of Nations (MIT Press)

The Size of Nations (MIT Press)

後半は実務を知らない僕はお勉強,というだけで。各論者が強調していたのは,これから外資も入ってくるし(少なくとも公募の)地方債はもはや財政政策のための財源調達手段としてみるべきではなく,市場での需給関係を踏まえて戦略的に行動していくことが重要だ,ということ。公募市場では常に発行体の意図通りに資金を調達できるわけではなく,発行体と市場との対話(要するにIR)の重要性はどんどん増すだろう,ついては「わかりにくい」制度なわけだから,他の発行体と比較できるように公会計制度を導入するなり格付けをとるなりしてね,という感じのお話。で,これができないようなところは「縁故(債)の世界」に戻って下さいね,という話になるのですが,逆にそれで縁故債の世界に対して「臭いものに蓋」的なことになってしまうとそれはそれで問題なわけで,そこの規律付けをしなくてはいけない限り,ある程度中央政府の役割は残らざるを得ないのではないか,と思ったり。でも市場公募で地方債を発行できるところと,それができなくて総務省の管理のもとで縁故債の世界だけで地方債を発行するところって,なんとなく不交付団体と交付団体,みたいな感じがあるなぁ,という印象を受けたりしたのですが,どうなんすかね。