第27回会合(2007/11/8)

今回から「中間的なとりまとめ」のための委員間の討議に。第一回目ということで,事務局が作った叩き台について説明が行われた後,委員が意見を表明するかたちで2時間半くらい。事務局の叩き台についてはぜひこちらをご覧いただきたいところですが,いままでの議論を踏まえて踏み込めるところは踏み込んだ案といえるのではないでしょうか。なんか道新の社説でよくわからない批判が出てましたが,なんだか「不十分だ」だけ言っておけばいいと思ってるお気楽な社説だなぁ,と。まあ社説を書くようなエライ記者さんは実際の会議で何の話がされているかなんて興味ないんでしょうけど。
事務局案の特徴として考えられるものはいくつかあります。まず,「基本姿勢を明確化」する,というときに,単に分権委としてかくあるべきという規範的な話を書くだけではなく,国の反論としてしばしば挙げられる統一性・広域性・専門性という視点に対して,このような懸念がどのように克服されるべきかが論じられています。こういうのはこれまでの分権関係の委員会ではあまりなかったスタイルではないかと思われます。次に,個別分野の中で「重点事項」と「その他の主な事項」を分けているところでしょうか。説明によると「重点事項」は各府省において基本政策・制度を根本的に再検討して欲しいとするものや第一次改革も含めて地方の関心度が高いものであり,委員会として優先的に議論されるべきと考えられるテーマとなっています。この中には生活保護医療保険,幼保一元化,土地利用関係,道路・河川など,これまでのシステムを再構築する必要があるものや,複数の省に跨るような事項が挙げられており,すぐに何とかするものというよりも腰を据えて取り組むべき課題を明示したような性格ではないかと思われます。このような大きな課題を優先すべきか,あるいは「その他の主な事項」に挙げられた,交渉相手がはっきりしている比較的取り組みやすい部分を優先すべきか,というのは今後の勧告をどのように出していくかという戦略に関わるのではないかと。
今回の会合でもっとも時間が割かれたのはやはり税財源の話でしょうか。地方自治体の首長ということで,相変わらず横尾委員・露木委員からは国と地方の税源配分を5:5にすべき,という主張がなされていましたが,他の委員はかならずしも5:5という数字ありきというのは必ずしも積極的ではないというような…もう少し丁寧に言うと,露木委員も含めて,5:5はひとつの目標ではあるけれどもそれに囚われるべきではなく,ひとつの選択肢・方向として考えるべきではないか,という考え方が有力であった感じがします。というのは,税源配分を5:5にして,歳出比が国:地方=4:6で代わらないのであれば,財政調整に使える部分が減ってしまうところがあるという懸念があるから,ということのようです。この点について露木委員はやや踏み込んでいて,「東京の偏在を地方に回すというだけではなくて,地方の間で水平調整をすることを促すような努力が必要」ということで,現在の総務省が財政需要を算定して交付税を配るというだけではなく,地方が配分に関与するようなこれまでと異なるしくみの必要性を主張しています。一方で猪瀬委員は格差是正という話については,これまでの制度で大都市の財政需要についてキチンと考えられてこなかった点に触れ,交付税制度の根本的な見直しが必要とするものの,水平調整の制度については「屋上屋を架す」としてあまり乗り気ではない,という感じでしょうか。これから先税財源の話がどの程度取り上げられるのかはわかりませんが,やはり税源移譲の問題と絡んで財政調整制度の再構築というのは,総務省財務省・東京都・その他の多くの地方団体,が少しずつ異なる主張を掲げるようなひとつの論点になるようです。*1ただここの問題は,これから地方自治体が水平的な連携をとっていけるか(→広域連合)あるいは大都市の問題をどう考えるか(→大都市問題)という行政体制についての考え方とも絡んでくるような気がします。で,さらにいうとこの辺は分権の将来像とも関連してくるわけですが,まずはこれから委員間でどの程度分権の将来像について共有できるか,というのがポイント,というところでしょうかね。

*1:既に東京都は分権委に意見書を出したようですね。