第30回会合(2007/11/28)

今回の会合から西尾勝先生が委員として参加。議論としては,一応「中間的な取りまとめ」が終わったのでじゃあ次どうしようかねぇ,とネタの頭出しをしようとする感じになるのか,今回は国庫補助負担金の話と,都道府県から市町村への条例による権限移譲(条例による事務処理の特例)の説明。国庫負担金の話については,まあこれまでにもされてきたように,最近は社会保障関係費が多くて公共事業を削るのも結構限界に来てますよ,というお話。なのであんまり話自体は盛り上がらず,議論になったのはどちらかというと「わき道」の二つの話。それは,廃棄物処理施設の「残存価値」とは何ぞや,という話と,総務省から各省庁への「申し入れ」の二つ。まず前者については,市町村合併が進む中で合併前の市町村がもっていた廃棄物処理施設をもう使わなくなってしまったときに,どのようなケースで補助金の返還が必要か,というのが問題になる,ということで,国の方の基準としては,処理施設解体の費用が施設の「残存価値」よりも大きければ補助金の返還は不要で,逆に「残存価値」の方が大きければ補助金の返還が必要だということになっているそうです。しかし,そもそもダイオキシン対策ができない施設の「残存価値」をどう考えるんだ,とか,「残存価値」は減価償却とどういう関係にあるんだ,とかそういう質問が相次ぎ,最終的には西尾先生から説明者である総務省の調整課長に「宿題」が渡されることに。「宿題」はあと警察の国庫支弁(?)の話でも出されていたのですが,会合の中で話題になったトピックについて論点を整理することを官庁側に求めることで,その内容が会合で議論されていたことを確認し,次に繋げることができるというメリットがあるのではないかとも思うのですが,これは西尾先生のスタイルなのかもしれません。まああんまりやりすぎると官僚側としては正直しんどいでしょうが。
もうひとつ,ちょっとだけ話題になったのが,予算編成時に総務省から各府省に対して行う「申し入れ」のお話。僕もあまり知らなくて,資料をぱっと見たときに「これはどのくらい意味があるものなんだろう」と思ってたのですが,案の定丹羽委員長から,「申し入れの成功率は?」という質問が。「申し入れ」自体結構大きな話を言ってるところがあってなかなか難しいのではないかと思われるわけですが,会合の中では猪瀬委員に「こんなの年中行事だ」「意味ないならやめてしまえ」と断じられてしまう状態で,話を出してきた総務省にとっては単なるやぶへびではなかったかと…。ただ一応,地方に対する負担を一方的に押し付けるようなことはやめましょう,という「申し入れ」なわけですから,本来は総務省の調整課だけではなく地方自治体がどのように関わっていくか,というのが将来的な「国と地方の協議の場」のようなものを考えるに当たっても必要になってくると思われたのですが,横尾委員がチラッと聞いただけでどうも余り問題にならず。調整課のみが「申し入れ」を,しかも年中行事的にやるっていうのは本当に「分権」を考えるのであれば,地方側としてもう少し問題にしてもいいのではないかという気もしますが。
都道府県から市町村への権限移譲,いわゆる「条例による事務処理の特例」の話については,普段あまり目にしないようなデータを事務局が都道府県に照会した上で公開していたので,個人的には勉強になりました。まあ事務局の方は法律の条項レベルでデータを取っているのではないかと思うのですが,出してるデータは集計データ,というのがやや残念なところではありますが。まあそれはそれとして,このトピック自体も結構考えさせるトピックです。考え方としては,分権で権限が拡大した都道府県が勝手にやる気のある市町村にさらに分権すればいい,という考え方もできるでしょうし,また,「基礎自治体優先」の観点から市町村で支障のない事務事業は国が法令のレベルで権限移譲を一括して行うべきだ,という考え方もありうるようです。おそらくこれは,市町村合併によって市町村の行政能力を高めようとしていた観点(いわゆる「受け皿論」)から,現在の合併をどのように評価するかということで,主張が異なってくることになるのかもしれません。つまり,合併が進んで受け皿としての市町村の行政能力が十分であると考えれば,一括して権限移譲をするという選択肢を考えればよいでしょうし,逆に合併が不十分であるとするならば,現在のように各都道府県ごとに出来る市町村から順次権限移譲をするという考え方になるのではないでしょうか。あとで引用する西尾先生のコメントなんかを見ると,「中央省庁は絶対に市町村に権限移譲したくない」という認識があるようですが,もしそれが官僚の「性」であるとすると,なぜ都道府県は権限移譲を行うのかというのはひとつのパズルではないかと思われます。ひとつの解釈としては,そういう官僚の「性」は単に中央官僚に特殊な話であるということになろうかと思いますが,もしそうではないとすれば,都道府県官僚も自らの権限を守りたいという志向を持つにもかかわらず,権限移譲をしているのかもしれません。しかし西尾先生が言うように,権限移譲を進めていくところとそうではないところの差がだんだんはっきりしているという現状があるわけで,単に官僚の「性」によって説明するとしても,どのような特徴を持つ都道府県において権限移譲が行われるかというのは政治学的な分析になりそうな気がしますが…このあたりは今度の研究会の話でしょうか。

平成の市町村合併を何のためにやったのか,というとひとつは財政の効率化のためですけども,二の目的は地方分権改革をいっそう進めると,基礎自治体である市町村に出来るだけ仕事を下ろせる体制にしようということで合併を勧めてきたんですね。こうやって3200余りの市町村がいま1800を切り出したわけですけど,最終的には1600くらいになるんでしょうか,ほぼ半数にするということになるわけですけど,そのときは約束通り下ろさなくてはいけないんじゃないか,都道府県から市町村にですね。それをやろうと思うと,各省所管の法律を全て点検して,都道府県の事務と今書いているものを市町村の事務に書き換えさせれば全国いっせいにそうなるわけです。で,市町村に義務付けることになるんですけどね。
そうやらないで,各省庁はぜんぜんその気ありませんから,そういう状況の中でやろうとすると,都道府県が自主的に条例を制定して,自分の仕事になっているものを市町村に譲ると,このやり方で各都道府県やっていただく以外にないから,これでやっているんですね。このやり方でやる限り,47都道府県バラバラになるわけです。都道府県の判断ですから,自主的な判断なんで,やる気のない県から積極的にやる県まで,幅が出来てしまうという状況になるわけです。これまずい,ということなら,全法令いっせいに見直さなくてはならない,ということになるんですよね。で,その決断をするかどうか,というのは非常に大きな問題ですけれども,都道府県の対応の中で,移譲した件数が多いのは静岡県広島県がトップです。この両県突出してるんですね。しかし各県で検討しまして,自分のところがやっている仕事をどうしても将来も都道府県がやらざるを得ないのではないかと,これは場合によっては市町村に下ろせるのではないか,少なくとも能力・やる気のある市町村には下ろせるのではないか,という整理を各県でしました,そういう整理において,一番徹底した考え方をしているのは福島県山形県なんですよ。
これは各県の検討結果の報告書を集めて調べればわかりますが,考え方としては,どうしても県がやらなくてはいけないというのはこれだけね,とその幅が一番狭くなっているのは福島県山形県で,あとは市町村から希望があれば譲ってもいいものだね,という分類してるんですけど,市町村が希望しないから降りない。どうして広島や静岡のようなパターンが出てきて,片方に考え方はそうしているんだけど移譲が進まない福島や山形が生まれるかというと,一番大きな違いは静岡や広島は権限を県のほうが移譲しますといってるだけではなくて,市町村に「受け取りませんか」と勧めているわけですよ。県知事以下。受け取ってもらえませんか,と県のほうが一生懸命市町村に働きかけているんですね。しかし福島や山形,多くの県はそうですが,手を挙げて希望するところが出てきたら渡すという方式なんですよ。そこは余り進まない,という形になっているという問題です。