第31回会合(2007/12/5)
年末最後の会合ということだそうで。次回は年明け,1月23日ということです。まあ個人的にはこの観察記録が4月からよく続いたなぁ,という感じですが。次の目標は一年ということで。…2月からは月に2・3回のペースということなので,まあ続けることもそれなりに可能なペースと言えなくもないですが。
閑話休題。今回はふたつの経済団体(同友会と商工会議所)の代表を呼んで意見交換。ですが,その前,冒頭に猪瀬委員から,突っ込んだ議論が議事録だけでしかか書かれていない,という現状があるので(まあ細かいブログは別としてw),映像メディア,テレビカメラを入れて,プロセスを明らかにしなくてはいけない!ということが主張されます。いつかテレビカメラを入れることが議題に上るということだそうですが,しかしテレビ屋さんは来るんですかね…。なんだか誰かがつるし上げにでもあってるときじゃないと来ないと思うのですが。この手の話はマスコミさんが悪乗りして記事にしそうなもんだなぁ,と思ったものの,今日までのところ特に記事にしている新聞社はない模様。やっぱり新聞屋さんとしてはテレビ屋さんを持ち上げるような記事を書くのは微妙なのだろうか。
意見交換にやってきた代表のうち,経済同友会のほうはかなり「筋金入りの」分権論,というかドラスティックな分権志向でお話されている感じ。どこまで本気なのかはよくわかりませんが…特に税財源の次のような話というのは,国(総務省)の関与を完全に外して,いわゆる「地方自治体の連携による新しいしくみ」で財政調整を行うということになろうかと思います。ゴールとして,ひとつの考え方だとは思いますが,現状でこの話をするのはあまりにも高すぎるかな,という印象を持ったりするのですが。ただ,同友会の分権に関する提案というのは,法人税の実効税率を相当下げたうえで,消費税の比率を上げて,社会保障関係の財源にするとともに地方の基幹税のひとつにする,というかなり包括的な税財政改革のパッケージの一環として位置づけられているようなので,それなりに整合性のある提案なのではないかと思われます。
地域の財源は,国と地方の役割分担を見直して,それに見合う税財政構造にすることが必要ですが,地域が自らの責任で効率的に運営するということを考えるのならば,税財源に占める地方税の割合を高めるということが不可欠でございます。税を考える際には受益と負担の明確化を留意して,地域間の極端な税収格差を生まない,偏在のない安定した税収を確保できるものにすることが大切でございます。具体的には個人住民税・地方消費税・固定資産税を地方の基幹税とした制度を構築して,課税自主権の強化,独自課税を可能として自主性・独自性を発揮できるようなしくみとすべきです。
国と地方の役割分担を抜本的に見直して,それに見合った税財源にすることが基本ですが,まずは国と地方の歳出比率が4:6に対して,財源配分が6:4であるものを,歳出比率と同様に4:6となるように努力していくべきであります。分権委員会では5:5が現実的としており,我々の意見はかなり高めのボールかと存じますが,そうした目標で進めて欲しいという思いでございます。税源移譲をしましても,全て地方税で賄うということができるというものではございませんし,地域間の財政力格差を縮小させるということは重要でございますから,財政調整制度が必要でございます。ただし,現在の地方交付税は多くの問題を孕んでおりますので,簡素で透明性の高いしくみとして,また収支補填でなく,税収格差を緩和するしくみとすることが重要であります。また新しいしくみを考える際には,地域間の水平調整制度,これも検討に値すると思います。
ただ,露木委員も聞いていましたが,経済団体(経営者団体)としての同友会がどういうつもりで分権の提案をしたりするのかはよくわからないところではあります。まあこの猪瀬委員の発言もそういう話なのかもしれませんが…。
道路公団改革のときに同友会っていうのはいったいなんなのかと,道路公団改革に零点ってつけたんですよ。意味がわかってないでつけてる。だからぼくは抗議にいったんだよ。小島さん*1にあって説明したら小島さんはわかった,しかし他の人はわからない。いったい同友会っていう組織はなんなんですかと。余計な応援団はいない方がいいですよ,ってぼくは言ったんですよ。はっきりね。そこはまあ専務理事が代われば…小島さんのような人が専務理事になれば,少しは状況変わるんでしょうけど,前の専務理事は何回言っても頭悪くてわからない人だったの(ママ)。そういうことは迷惑なのよ,はっきりいって。やるんなら本気でね,身体張って一緒にやるならいいけど,いい加減にね,少し参加気分だけ味わってね,ちょっと知ったような気になって,何かメディアに「同友会の意見はこうですよ」って安易にやってもらったらね,ぼくはあんとき凄く腹立ちましたからね。そういうことで,零点で今度言いに行ったら40点くらいになったのかな(笑),そういうことを…いわゆる企業の??みたいな話じゃないからね…。かなりこれ実は,この問題というのは商工会議所と同友会とわかれるのではないかと,話がね。ここのところが同友会の見せ場だと思う。その見せ場のときに,どういう行動とか意見を,細部にわたって正確に言うか,そういうことを問われているということなんだよね。前のようなことがあっては本当に迷惑でしたから…よろしくお願いしますね。
さて,同友会の次は商工会議所の代表です。こちらの主張は,総論的には同友会と同様に協力に分権を進めるべきだ,という話なのですが,各論の方では,都市計画,観光,農地転用,中小企業育成,商工団体の監督権限などは国が関与すべき,ということを言ってます。国の規制が一律に行われずに規制がバラバラなのが問題,といってるのですが,まあ分権を進めていくと他の分野についてもそうならざるを得ないのですが大丈夫なのでしょうか…。と思っていたら,委員からこの点についてかなり厳しい指摘が飛んできます。「クリアでない」とか「国の関与を求めるのは情けない」とか「どっちを向いているのかわからない」とかそういう感じですが。露木委員の指摘ですが,「具体的に苦しんでいる事例があって,(商工会議所が前段で主張するような)きれいごとの改革が進んでいるから困った,ということをきちんと主張する必要があるのではないか」というのはその通りではないかという感じはします。が,こういうのは,この「分権」という空気に抗うことが難しいということを端的に示しているということではないでしょうか。「「分権」は進めないといけない」,でも実際にやって欲しいことをあげていくとむしろ現状維持や集権に近い,という話はこれまでも結構出てきたように思われます。このあたりは,義務付け・枠付けなどを緩和して実質的に「裁量」を増やすということと,(税財源との見合いも含めて)権限を地方自治体に移譲するということをもう少し切り離して考えた方がよいのではないかと思ったりもするのですが。「裁量」を増やすということは,おそらく中央政府がきちんと「監視」することとセットになるのではないかと思いますが,それを集権的だ,とか前時代的だとして一顧だにせず切り捨てるのは,ちょっと勿体無いような気がするのですが。
経済団体との意見交換終了後は,今後の議事の進め方について事務局から。まあスピード感を持って進めていきましょう,というお話(しかし「スピード」という言葉がよく出てくる…)。この中で,注目すべき議論と感じられたのはふたつです。まず,井伊委員から,「規制改革委員会でも同じような議論をしている」という指摘があります。宮脇事務局長が受けたように,規制改革委員会以外にも,行政減量化委員会とか結構重複した内容を扱う会議って多いんですよね。この手の委員会・審議会との関係をどのように統合するかというのはひとつの問題ではないかと思われます。実は第一次分権改革のときにも同じように行政改革委員会と地方分権推進委員会があったのですが,このときにはこの二つの委員会の委員長が橋本総理(当時)直属の行政改革会議に出席して,行政改革会議からの要望を受けるなど連携を図る,ということがなされていたそうです(実際にうまく機能していたかどうかは微妙ですが)。今回は委員長が民間議員として出席している(そして規制改革のほうの重要人物である八代先生が同じく民間議員として出席している)諮問会議が当時の行政改革会議の役割を果たすことになろうかと思われるわけで,最近ちょっと鈍っているといわれたりする諮問会議が,これからかなり重要な立場に置かれるのではないか,ということが予想されます(自明かもしれませんがorz)。
もうひとつは,西尾先生から,「義務付け・枠付けの調査の対象について,地方公共団体が固有の資格において行う事業に限定しているのか,それとも民間事業者も行いうるようなもの(例えば社会福祉とか学校・医療など)も入っているのか?」という質問が出ます。小早川先生と事務局によると,現在各省庁に出す調査票は「地方公共団体が固有の資格において行う事業」を念頭においているようですが,西尾先生によると,民間のほうを考えないと,幼保一元化などの問題は扱いにくくなるという指摘がされます。それは保育園の方は地方自治体への義務付け・枠付けというかたちでなされているのに対して,幼稚園の方は地方自治体・民間を問わないかたちで義務付け・枠付けがなされているから,ということのようです。ちょっと僕自身がこのあたりは詳しくないのでなんともいえないところではありますが…。いずれにせよ,西尾先生は「義務付け・枠付けはそもそも定義がない状態から出発しないと池以内から時間がかかる」ということを強調されていて,こちらの方は長い目で継続的にやりながら,地方支分部局の再編や都道府県から市町村への権限移譲といった,比較的データが揃ってる課題から進めていった方がよいのではないか,ということを主張していました。妥当な主張ではないかと思うのですが,事務局の方でもある程度検討しているようなので,次回の委員会でこのコメントを受けてどのような案が出てくるかが見どころ,というところではないでしょうか。