子育て新税

東京を離れているときの報道だったということもあって,ちょっと見逃していたのですが,個人的にはかなり興味深い話が。

◎子育て新税、5億円圧縮=将来ビジョン最終案を発表−秋田県
秋田県は28日、少子化対策や教育政策を重点的に進めるためのいわゆる子育て新税の創設を盛り込んだ「子育て支援と教育充実を推進する将来ビジョン」の最終案を発表した。現行税率4%の個人県民税所得割に超過課税する方式の新税については、これまで検討してきた0.4%の上乗せを0.3%に修正。年間約25億円を見込んでいた税収は5億円圧縮し、約20億円とした。
県はビジョンを12月議会に提案し、新税の関連条例案を2月議会に提出する見通し。新税は2009年度の導入を目指しており、少子化対策や教育政策に着目した自治体の独自課税は、実現すれば全国初となる。
11月29日 時事通信

しかし実は第一報は2月だったそうです。…我ながらまったくさびたアンテナですがorz

◎25億円の子育て税導入へ=全国初、県民税に上乗せ−秋田県
秋田県は23日、子育て新税導入を柱とする「子育て支援と教育充実を推進する将来ビジョン」の骨子案を発表した。新税は現行税率4%の個人県民税所得割に0.4%上乗せし、年間約25億円の税収を見込む。2009年度の導入を目指す。
少子化対策や教育政策に着目した自治体の独自課税は、実現すれば全国初となる。
2月23日 時事通信

最近の自治体の新税だと,宮城県の「みやぎ発展税」のお話があります。これは前に取り上げたことがあるのですが,法人事業税への超過課税!!ということになっていました。法人事業税の約半分が「地方法人特別税」→「地方法人特別譲与税」になろうとしている状況を考えると,まあ宮城県知事が「毒まんじゅう反対」とたびたびメディアで発言しようとするのもさもありなん,というところなのでしょうが。*1
それはそれとして,今回の秋田県の話は極めて注目に値するのではないかと思います。地方分権によって税源移譲を進めて,地方自治体が自ら受益に見合った負担をするという観点からは,個人住民税(とたぶん固定資産税)は本来最も争点になるべきだと考えられるからです。高度経済成長がある程度軌道に乗ってからは個人住民税の超過課税というのは基本的にアンタッチャブルだったのではないかと思いますが,個人住民税については一応均等割を少しだけあげた経験があります。それはこのブログでもたびたび取り上げる,いわゆる「森林税」なのですが,これは個人にとって年に多くて1000円程度の負担増ということで,まあまああんまり議会から目くじらも立てられず,高知県では積極的に続けていこう,という住民意見も出されたりするわけですが(→こんな感じ),住民税の所得割の超過課税ということになってくると,話は違います。森林税の中で唯一所得割の超過課税を入れている神奈川県では,議会がぜんぜん納得せずに導入が大変だったという経験もあります。なお,森林税の場合は,どこの県でも基金を作って目的税的に運用する,ということになってるのですが,子育て税がこの点についてどういう運用になるかは現状でわかりません。
この所得割の超過課税こそ,今後地方分権をまじめにやっていくべきかどうかを考える試金石になるのではないかと考えられます。今のところ,税導入に対して秋田県の市長会・町村会や,秋田市議会から反発という話がでていますが,県議会の方はどういうリアクションが出ているかは不明です。首長の方で税導入を主導してくれるなら,住民税超過課税だし乗ってもいいと思うところもあるのではないかと思う一方で,所得割だと負担が重い,というように思うところもあるのではないかと予想されます。あとは,導入自体には賛成でも,ちょっと前に森林環境税でもめたように,使い道を巡っての条件闘争が紛糾することで導入自体が遅れる,ということもありうるかもしれません。ちなみに,どのくらいの負担かというと,だいたい次の引用のような感じになっているそうです。これは,受益者(子育て世帯)側の反応も含めて,ぜひ今後も見守っていきたいところです。

(2月段階:0.4%超過課税→25億)
県の試算によると、年収500万円の夫婦と子2人世帯の負担額は年間6000円。年収1000万円では同2万1600円になる。(2月23日 時事通信
(12月段階:0.3%超過課税→20億)
県の試算によると、新税が導入されれば、年収500万円の夫婦と子2人世帯の負担額は年間4500円。年収1000万円では同1万6200円となる。(12月12日 時事通信

*1:もちろん,超過課税分は基準財政収入額に含まれないでしょうが,それにしても課税の方法が法人事業税率に1.05をかけるというやり方なので,成り行きによってはせっかく成立した税条例の課税方法では想定しただけの税収を取れない可能性もあるのではないかと拝察するのですが…。