ダム撤去→存続
熊本でダムというと川辺川ダムがすぐに連想されるわけですが,今回は違うダム。治水・利水ではなく発電用のダムということですが,熊本県企業局のウェブサイトを見ると,貯水量が1000万トンくらいということなので,県営で作っているダムとしては結構大きいほうなのではないかと。
◎ダム撤去やめ存続へ=財政難理由に−熊本知事
全国で初めて撤去が決まっていた球磨川流域の発電用の熊本県営荒瀬ダム(八代市)について、蒲島郁夫知事は27日、厳しい財政状況を背景に撤去費用を工面できないとして、前知事が打ち出した撤去方針を翻し、存続する意向を明らかにした。12月定例議会の議案説明で、自民党県議団に話した。
荒瀬ダムをめぐっては、潮谷義子前知事が2002年、地元の要望などを受けて撤去を決めた。ところが、今年4月就任した蒲島知事は、財政難などを理由に撤去方針の凍結を表明。12月までに結論を出すとしていた。
知事が県庁内に設置した検討チームの試算によると、ダム撤去費用は総額約92億円。一方、存続する場合でも改修費用などで約87億円掛かるが、大半は売電収入で賄えるという。蒲島知事は「撤去する場合、一般会計からの支出が必要となり、実質的に困難」と存続を決めた理由を説明した。
11月27日時事通信
以前にダム事業の廃止についての論文を書いたことがあるのですが(もうすぐ出ます→宣伝),今回の問題は進行中のダム事業を廃止するというのではなくて,既に存在するダムを撤去するというお話。このように既存のインフラが旧くなってしまったものをどう処理するかというのは,そろそろ行政学でも研究があってよいところなのではないかと思ってます。で,やろうと思ってはいるものの,データも少ないしなかなか手が回らないところ。とりあえずは現在日経新聞で連載中の「ゼミナール 少子時代のインフラ」(野村総合研究所)をボチボチと読んでいるものの,連載の性格上どうしても内容が細切れで忘れてしまうので,ぜひそのうち単行本化して欲しいところです。
さて,熊本県の話に戻ると,事業を止めるのと比べて,既に存在している建造物を撤去するというのは格段にコストがかかる話で,首長が財政再建を目指すのであればなかなか踏み出したくない,というか,明示的に撤去によってメリットを受ける人が想定しにくい話のような気がします。ひょっとしたら「新たな公共事業」なのかもしれませんが…。その辺も含めて議員の反応を見てみるのはなかなか興味深いところ。秋田の話(出先機関再編,子育て新税)といい,地方政治をキチンと実証分析するのがますます必要になっているような感じでしょうか。