第80回会合(2009/4/2)

だいぶ離されてしまったので,追いつくべくサクサクと。次は4月2日に行われた第80回の会合。この日は村井仁長野県知事木下敏之佐賀市長に対して直轄事業負担金に関するヒアリング,それから国交省に対しては直轄事業負担金についてのヒアリングと第一次勧告のフォローアップということで。
まずは3人目の知事になる村井知事。泉田・橋下両知事はかなり目立っていたのでまあ呼ばれるのはわかるのですが,村井知事を呼んだ経緯っていうのは何なんだろうか。通産官僚→国会議員→知事,ということで,(ご本人がどうであれ)どちらかというとメディア的には改革派と目されにくいタイプだとは思いますが。まあヒアリングの内容を聞いていても,どちらかというと現行の直轄事業負担金制度に一定の意義を認める知事の代表ということなのかもしれません。たとえば,問題になっている庁舎の建設費や人件費を払うべきかというテーマについては,「いわゆる本社経費等を事業費として払うべきかどうかというのは決めの問題」というスタンスなので,容認とはいわないでもある程度の理解は示しています。とはいえ,村井知事の主張もやはり「直轄事業は継続,直轄事業負担金は(将来的に)廃止」ということで,基本的にはこれまでの知事と同じ主張。ただこういう割と是是非非のスタンスであるところが猪瀬委員とあんまりかみ合わない議論がなされることになってしまいます。つまり,猪瀬委員は「直轄事業を減らすべき」(→たとえば国道20号などの地方移管もなされるべき)ということを強調しますが,村井知事の側は「それは決めの問題」だし,財源がないとできないものはできない,というかたちの返事が続くのみと。また,直轄事業負担金の明細に関する質問でも,国に対してあまりモノを言ってこなかったという現状を認めつつ,今後どうするかという問題についてはそんなに歯切れが良いわけでもない,という感じ。まあ大筋では3人の知事が言ってることはそんなに変わらないと思うのですが,前回がやる気まんまんで他の県の事業でも大阪が受ける,とまで言う橋下知事ヒアリングの後だったので,委員としても積極的な姿勢を期待していたのでしょうけど,その辺はややすれ違いかなぁ,という感じのヒアリングでした。
次は市町村の立場から木下敏之佐賀市長のヒアリング。国−都道府県の直轄事業負担金と同じような構造の問題が,都道府県−市町村の間でもありますよ,という話。ご自身が行ってきた調査から,都道府県と市町村の関係の中で県費負担事業について市町村の負担を求めないところから,突然求めるところまであるということ。興味深いのは,予算策定以前に打診がある県も存在するもののすべてではなく,市町村の側からすると事業実施自体についての意見は難しい,というまあ国直轄事業負担金とほぼ同じような構造ができている点。しかも,小早川委員の質問で出るのですが,国直轄の場合は法律で都道府県の負担割合が決まっているのに対して,県単独の場合は県の条例・要綱で決まるので事業によって負担割合が違ってくるのではないか,ということ。その他元農水省官僚だった木下氏の経歴に関連する質問なども出ていますが,まあ全体として,都道府県が国に対して訴えていることは,市町村から都道府県に対して訴えていることに重なるのだから,分権という以上都道府県がまず自ら行動で示すべきではないか,という主張になっていて,委員も大筋でその通りであると認める,という感じだったのではないかと思います。

国交省ヒアリング

次は国交省ヒアリング。まずは現下の課題とされている直轄事業負担金について。制度の趣旨は地域に及ぶ便益に見合って地方公共団体にも応分の負担を求めるということで。地元負担がなくなると,事業量が限られる中で,整備が遅れており負担をしてでも事業を実施したい地方公共団体の期待を損なうおそれがあるからなくすわけにはいかない,というのが国交省の主張。あとはこれまでの取り組みでがんばって透明化にも努めているし,地方との協議の場もぼちぼち設定してますよ,という話。なんだかなぁ,と思うのは,国交省ヒアリングで直轄事業の話をするとき,結構いつも「地方の利益になっている」というわけですよね。前回会合の橋下知事ほど極端なことは言わなくても,「地方の利益になっている」なら地方でやることは選択肢として出てくるわけで,やはり直轄事業では「地方の利益」よりちゃんと「国の利益」を主張した方がよいのではないかと。説明の中では,「国がやる事業についても,受益の範囲で地域の負担を求めるのも合理的ではないか,地域の意思が反映されるし,国の事業でも合理的な決定になる」というような話をしているわけですが,正直よくわからない。新潟県知事が言う新幹線の問題などを聞いていても,最近では国の利益と地方の利益がある程度トレードオフになってしまっているところに問題の本質があるようにも思えるわけですが。露木委員からの質問に答えるかたちで出てきたのですが,国交省の整理としては,国と地方を対立的にとらえるのではなく,(1)国が事業主体になるものでも,地域の意見や要望を反映する仕組みが重要,(2)単独事業についてはどうこういわないが,補助金というかたちで国全体の観点からインセンティブを付与することは必要,ということで国と地方で機能を分離することは基本的には考えていない,ということなわけです。ただ当面問題になっていた維持管理費の扱いなどが象徴的ですが,これは交付税で出てるよね,ということにしておけばまあ国も地方も安泰だったわけですが*1,お金がなくなってくる中でどうしても国と地方の間で微妙な取り合いになってしまうことが問題になるわけです。地方税財政改革はそういう中でアドホックな取り合いではなくきちんとルールを決めること,そしてそのルールは国が権力的に一方的に地方を圧迫しないものであること,を念頭においてやっていると理解しているわけですが,その辺の認識についてはかなり国と地方がすれ違っている,ということなのかもしれません。
それから,第一次勧告のフォローアップとして,道路特定財源一般財源化に伴って新設された「地域活力基盤創造交付金」についてのヒアリング。要は地方道路整備臨時交付金を廃止したことで変わるものを作ってほしいという地方の要望があり,この機会にハードだけではなくソフトについても利用可能とした交付金を作りましたよ,と*2。まあ要望はこれから受けるところだが,地方自治体からは高い評価を受けている,というのが国交省の言い分。現役の町長である露木委員からも使い勝手がよくなって助かっているというコメントが出ていました。この交付金については,総額の決定がどうなっているんだというところで猪瀬委員から若干の確認が入ってましたが,まあ使途の多様化という部分についてはそれなりの評価だったのではないかと思います。ただ,あんまり詳しくは議論されてませんでしたが,結局この交付金がどの程度道路に使われるのか,という部分について,国交省の立場としてはやはり道路なしとはしないわけで,その辺の縛り(?)がどの程度なのかという問題はあるかもしれません。

*1:直轄事業の維持整備費は河川費の経常部分で単位費用を作る時の根拠のひとつになっている。

*2:千葉県の森田健作知事はこれを使ってアクアラインの料金引き下げをやったことになってるわけです。そのために単純に考えると道路整備の財源は減るわけですが,これからどうなることやら。