第81回会合(2009/4/15)

少しずつ近づいてきましたが,次は4月中旬に行われた81回会合。今回は文科省農水省国交省ヒアリングが中心となっています。今回は途中まで丹羽委員長が席を外していたので西尾代理による議事進行。会議冒頭では,猪瀬委員による提出資料の説明があり,79回会合で橋下知事に対して告げていたとおり,国道と同規模の都道において維持管理コストにどの程度違いがあるかの説明をしています。その資料によると,都道(目黒通り)は20号・246号と比べて7割の維持管理コストである,と。これは要するに同程度の道路なのに整備回数が違ったりするということのようですが,だから目黒通りと同じ水準でいいのだ,というべきなのかはよくわかりません。国交省ならあるいは目黒通りの水準を上げるべきだ,というのかもしれませんが。

文科省ヒアリング

基本的なテーマは小中学校等教職員定数,特にその教員の給与負担について。現行制度では,いわゆる標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)によって教員の定数が定められた上で,この標準法に基づいて経費負担を決める義務教育国庫負担金とが両輪となって財源保障が行われてきたとされています。さらに三位一体の改革の時の議論を踏まえて,16年度以降は給与費の総額を保障する形式にして,職種ごとの上限設定をなくしたかたちとなり,定員の中での教員の配置については地方自治体が担うことで,標準というのも縛りが緩やかな制度になっているという説明がなされます。分権委は一次勧告の中で,教員人事権の市町村移譲を求めているわけですが,その際にはこのような制度があるために,都道府県と市町村の財源配分を考える必要があって難しい,というのが文科省の立場。小早川委員からの質問では,この標準法では,市町村が配置する教職員の標準を定めているのか,それとも県費負担教職員の標準が定められているのか,という質問がされます。標準法を文言通り読む限りでは,県費負担制度とのリンケージはないのではないか(つまり標準法は県費負担制度とは独立して市町村が配置する教職員の標準を定めている),ということですが,これに対する文科省の回答は,市町村立学校職員給与負担法と併せて読めばそのリンケージが見える,ということで,標準法では県費負担教職員数の標準を定めたにすぎず、それ以外について標準は定められていないということ。正直このやりとりはよくわからないのですが,あくまでも標準法で定められているのは県費負担教職員数なので,市町村が独自財源で採用する教職員については標準が定められているわけではない,つまり市町村の方で自由に採用してもよいということなのではないかと思われます。その後の露木委員・横尾委員と文科省とのやり取りを見ても,文科省としては,(別に文科省が定めているわけではないのに)都道府県の側がいわば「勝手に」市町村単位で標準法に合わせて教職員を設定しているというような説明になっています*1。なのでやや委員との間ではすれ違いのような印象もありますが,まず実質的な問題として西尾代理が最後に指摘したように,「(教員だけではなく)事務職員の定数まで標準を決めている法律はこれくらいだ」というのはあるのかもしれません。文科省としては他の法律は知らないし自分たちとしてはそうあるべきだ,というまあ取りつく島もない返事ですが。

農水省ヒアリング

農業振興地域整備計画を定める際の都道府県知事への協議同意についてということで,分権委の二次勧告で,通常国会提出予定の法案において総量確保のしくみを構築した上で国と地方の役割を見直すと言う文言が入っていたことから,まずは「総量確保のしくみ」を構築したいという説明が。具体的な制度としては,国の基本方針に農地確保の全国レベルの面積の目標をキチンと書き込んだうえで(これまでは書かれていなかった),県で確保すべき面積の目標の設定の基準について,都道府県知事の意見を聞きつつ国の方で設定し,さらにそれぞれの県においても基本方針の中に面積の目標を設定し,国は実際に農地が確保できたかどうかについて達成状況の資料の提出の求めを行い,状況を公表する(著しく不十分な場合国として自治事務に対する是正要求をする)という制度を考えているとの説明がありました。補足の説明として,現行農振法では国の基本指針改正に伴って都道府県の基本方針を改正しなくてはいけないもののしていないところが少なくないほか,市町村農振整備計画は,10年単位の長期の計画であり,5年ごとに基礎調査に基づいて全体計画を見直さなくてはいけないとされているものの,経済事情の変動による(転用目的のための農振農用地除外)が頻繁に行われている,本来予定している見直しの7.5倍程度となっていることを問題視している旨の説明が。
委員で発言したのは主に小早川委員でしたが,農地の確保が重要という議論が最近強くなっている中で,基本的なスタンスについては一定の理解が示されている感じ。ただ一律になんでも同意を必要とするというのは違うのではないか,というコメントですが,農水省の側としては要は国と都道府県,都道府県と市町村が相談しながらやっていくことを担保するためには同意が必要だと。農水省はかなり「農地確保」に意気込んでいる感じが見受けられて,現実にどんどん進んでしまう適用除外に歯止めをかけるためにとにかく同意が必要だという感じなのですが,委員の側の質問も具体的にどの部分の同意がいらないかを明示しているわけではないので,ちょっとかみ合わない感じも。…あんま分権とは関係ないですが,これを本格的にやることになったらいわゆる農振の白地地域はどうするのだろうか,と。線引きしないといけない,というのは昔から言われているわけですが,ここで線引きをできるんだろうか。もしできるんだったらもう都市計画もまとめてしちゃえばいいのに(そして分権委の勧告にもあった「土地利用委員会」みたいなものを考えればいいのに),と思ってしまいますが。

国交省ヒアリング

今回は道路構造令について。何か今回の文科省の説明と若干似たところがあるような気がするのですが,道路構造令による縛りが多いというのは誤解で,その原因としては本来県道や市町村道には拘束力がないことになっているはずの道路局長から出している個別の技術基準なのではないかという説明。従う必要はないはずだが,自治体やコンサルタントはここまで含めて「構造令」と見ているのではないか,というコメントがされています。で,逆に構造令は最低守らないといけない線形・幅員だけを決めている,と。委員からは線形・幅員についても条例で対応することが可能ではないか,という指摘も出ましたが,国交省は土地収用や裁判の問題もあるから無理,と(これは以前も同じやり取りがあったのではないかと)。あとは委員の側も多少構造令と技術基準を一緒にしたような質問をしているところもありましたが,今回はヒアリングとしてはかなり早めに切り上げられるかたちに。時間の都合もあったのか,本来予定されていた総務省に対する行政委員会についてのヒアリングは延期されたようです。

それから丹羽委員長が戻って,次回の委員会で直轄事業負担金についての意見書を出すんだ,という話をします。露木委員の発言によると,丹羽委員長は鳩山大臣と打ち合わせをしていたとのこと。で,勧告を出すべきだという委員もいる中で,委員会としては委員の考えを意見書として取りまとめるということになります。なぜ勧告ではないのか,というのは記者質問でも出ましたが,それは24日に説明する,と。最後は井伊委員による提出資料の説明があり,地方税財源の問題について総務省資料に対する疑問点と関連資料の要求が行われます。疑問点というのは新型交付税について,ビジョン懇の報告と総務省の説明が違うのではないか,というところで,資料要求もいわゆる新型交付税関係が中心になっていました。

*1:文科省の意図よりも都道府県の方で積極的に?中央を向いてしまうというのは青木さんの議論でもあったかと思いますが。

教育行政の政府間関係

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