大都市制度

横浜市大阪市名古屋市の三市による「大都市制度構想研究会」が報告書を書いた,という話がニュースに出ています。

「都市州」の創設を=横浜、名古屋、大阪の3市が提言
 横浜、大阪、名古屋の3市による「大都市制度構想研究会」は18日、政令市制度に替わる新たな大都市制度に関する提言をまとめた。道州制を導入した上で、3市などの大都市は単一の州として独立させ、「都市州」とすることを求めた。
 提言では、都市州制度と併せ、税収の多い州から少ない州への財政調整制度の構築も盛り込んだ。都市州内の行政については、区役所が地域の住民サービス機能を一元的に担うことで本庁機能を限定し、効率化を図ることが必要とした。
 都市州の創設により制度運用の効率化や迅速化が進み、企業活動などが活発化すれば、「2020年時点で日本の国内総生産(GDP)を年7.8兆円押し上げる経済効果が得られる」との試算も示した。
2月18日 時事通信

最近の地方分権の議論では,都道府県への権限移譲や主に小規模自治体の財政力を問題とする格差の関係が多い傾向にあるので,大都市制度の議論はやや埋没している感があります。でも一応地方分権改革推進委員会の「中間的なとりまとめ」(2007年11月)などで大都市制度の整備を謳っているところもあり,分権の議論の中で大きなテーマのひとつであることは間違いないのでしょう。このテーマについて,とりあえず主要な当事者である「大都市」を自認する三市が共同で意見を取りまとめたというのは重要なのではないでしょうか。市町村合併があって政令指定都市の位置づけが変わっていく中で,従来からの「大都市」の危機感の発露といえるかもしれません。まあ大阪市ではウェブサイトがあるのに名古屋市ではない,というのがなんとも。
研究会の報告書はまだ出ていないようですが,神奈川新聞の「「道州制」に「都市州制」導入を/横浜、大阪、名古屋の研究会提言」という記事では,税財源の部分についてなかなか興味深い話があると報じています。

一方、都市州の財源は、市町村税と道州税を一元化した「大都市税」を新設。ただし、大都市部の税収が全国に行き渡る財政調整の仕組みを設けるべきだとした。都市州内部では、住民自治の強化が必要とし、区の制度などは市民と共に主体的に選択・決定できることが原則としている。

これはこのまま読むと,大都市が自ら「水平的な」財政調整をしよう,と提言しているということなのかしらん。自分たちが自分たちのところでとった税を単に使うというのではなくて,それを全国に行き渡らせるというのは,自治体が言っていることとしては極めて珍しいことだし,これでまとまれたのだとしたらスゴイ。報告書と今後の議論に注目する必要がありそうです。