グルーポンと政党・住民投票

年末年始でえらく話題になっていたグルーポン。少し前から名前は聞いていたものの,ビジネスに疎いのでそのしくみがよく分かってませんでしたが,要するに顧客をたくさん集めたうえで,グルーポンという企業が買い手の代理人として売り手と交渉する第三者*1として介在し,売り手に対する値下げを迫ることで買い手の利益を上げようというモデルなのかな,と。もちろん理念的には,売り手にも(従来以上の)需要を保証することで,売り手の利益にも叶うということなんでしょうが。印象以上のものではありませんが,そうすると,効率的な競争をしているところでそういうことをしようとしても,そもそもあまり値下げの余地が無い。今回たくさん叩かれているように,もともと新規参入が多くて競争が激しい外食産業なんかでは難しいっていうことなのかなぁ,と。
他方で,新規参入が少ないために競争がなくて,非効率が問題になってるところでこういうのをやれば,やっぱり意味があるんじゃないかと思います。別に特定の産業や商品を思いつくわけではないですが,(多分独占企業だと無理なので)例えば業界が寡占的なところで,他の会社のシェアを奪うようなきっかけになる,と思えばグルーポンの話に乗ってくる企業もあるのかもしれません。
まあ経済の話はよく分からないのですが,つい,しばしば非効率だと言われる政治の世界でも同じようなモデルはありうるのかなぁ,と考えてました。これだけ人を集めることができたら,例えば農業保護をやめて税金を都市住民に還元するような政策を行います!とかやってれば,実際の選挙での投票先なんかも指定して,SNTVが抱える票割りの問題もクリアーして…と妄想していたのですが,これってよく考えたら政党みたいなもんだなぁ,と。ざっくりいえば,分配の仕方の変更による利益の付け替えのあり方を提示して,支持が集まればそれを実行できる,というわけですからまあ政党だろうと。
ただそうは言っても,政党も難しいところがあって,消費者というか有権者から見ると,政党が提示するある提案には賛成でも,別の提案には反対,というようなことがありうるわけで。有権者には,一番重視する提案内容で判断しろ,とかいろんなコトも言えるわけですがそういう「争点の束」問題はなかなか解決できない。じゃあそうすると,個別のイシューごとに関係する消費者集めて住民投票みたいな感じで判断させろ,っていうのが出てきます。最近の名古屋市阿久根市でも市長・議会のリコールをやってましたが,同じような制度のもとで住民発議をかけたりすることは現行制度でも可能なわけで,個別のイシューでグルーポン的に署名を集めるやり方ってのも今後出てくるんだろうなぁ,と妄想するところです。しかし住民投票っていっても,それをやってると今度は政策間の整合性を取ることができない,別の言い方をすると政策を「総合」することができないという危険性は強いわけで,そのために政党は重要であり続けるのではないかとも思われます。
現在の日本政治は,様々な制度的な制約の中で,非効率的が続いているという感じが強いと思われるので,その非効率性を打破するために,これからグルーポンみたいな感じの参入が政治の世界でも現実化してくるかもしれません。そのとき,政党のようなかたちを取るのか,住民投票のようなかたちを取るのか,というのでは結構大きな違いがあるように思われます。*2。今のところ,政党にも住民投票にも長所と短所があるように見えますが,両者の間でどういうバランスを取ったらよいのか,というのは結構難しい考えどころになるような気がします。まあ今のところは新年の妄想の域をでてないのかもしれませんが…。

*1:厳密に第三者性があるわけではないですが

*2:良くもも悪くも署名集めって結構向いてる気がしますが…。