出版ラッシュ
6月から7月にかけてはよくわからないけども出版ラッシュとも言うべきくらいに政治学関係の本が出てました。まあ単純に普段が少ないから多いのが目立ったということなのかもしれませんが。その中で結構たくさん本を頂いていたのですが、読むのに時間がかかって紹介が遅くなりました。しかし非常にいい本揃いではないかと思います。
まず同志社大学の白崎護先生から頂いた『メディアとネットワークから見た日本人の投票意識』です。私は投票行動における「社会学モデル」というものを、だいたい本書で批判されているような「図式的な「社会学的属性決定主義としての社会学モデル」」−要するに人々の民族や階層といった属性が投票行動を決めるということ−のような観念で社会学モデルについて理解してました。しかし、本書によれば「社会学モデル」が単純に外形的な属性のみに注目するというわけではなく、集団の中での対人接触・情報流通の経路への関心を広げていくかたちで、実体としての集団よりも集団内でのやり取りの粗密
を考慮するネットワーク研究につながっていくということでした。対人接触や情報流通によって投票行動が変わる過程を分析するというのは、まさに「選挙工学」のような感じになるのかもしれません。最近はSNSなどによって情報流通過程も変化しているわけで、そういった分析もこれから「社会学モデル」の枠組みで行われることになるのかと思いました。
メディアとネットワークから見た日本人の投票意識: 社会学モデルの復権 (MINERVA人文・社会科学叢書)
- 作者: 白崎護
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2013/06/30
- メディア: 単行本
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内容は、自殺という非常に扱いにくいデータを、国際比較・都道府県比較を用いて分析していくものです。大規模な災害が自殺に与える影響や、左派政権/社会政策といった政治的な要因が自殺に与える影響などが分析されていて、自殺が「レア・イベント」であるために分析結果を確定することは困難なところがあるのですが、その限界を示しつつ、大規模災害後に自殺対策が必要となることなどをデータに基づいて主張していて、このような主張は公共政策研究として今後増えていくことになるでしょう。特に興味深いのが、鉄道駅での青色灯設置が自殺抑制に効果を持つということを検証している6章で、こういった政府・企業のデータをきちんと収集して分析していくことは、政治学や公共政策の研究者にとって求められることになるんだと改めて思います。
- 作者: 澤田康幸,上田路子,松林哲也
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2013/06/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 青木栄一
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2013/06/30
- メディア: 単行本
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細かい部分では、特に3章で触れられている交流人事に注目した官僚制の議論で、内務省系と経済テクノクラートに分かれつつあるというご説明は非常に興味深かったです。私自身も財務省人事の観察から、国内で総合調整を担当する部署(内閣官房・内閣府など含む)を中心にキャリアを積む官僚と、主に国際金融に関連する舞台でキャリアを積む官僚がいるようにおぼろげに感じるところがあって、従来の国士型−調整型−吏員型とは違う分類ができるのではないか、とおぼろげに思っていたことに説明が与えられたように感じました。
- 作者: 牧原出
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2013/06/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ちょっと注文があるとすれば、この本で取り上げられている「幹部公務員」ってのが結局何なのかなあ、というところでしょうか。関係する政治家や官僚がいろんなことをいう中で、それぞれ異なる「幹部公務員」のイメージを持っているわけです。読者としては読む時の準拠点となるような「幹部公務員」のモデルについて知りたいと思いながら読んでいたのですが、まあそれはこれからの研究者側が提示するべきものなのかもしれません。
- 作者: 塙和也
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2013/07/17
- メディア: 単行本
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本としては、われわれが様々なかたちで現れる政治の両義性というもの−ポピュリズムはある典型という議論になるのだと思いますが−と付き合っていくしかないというメッセージなのだと思います。「政治の両義性」と書いてもなかなかわかりにくいですが、普遍と特殊とか、主体化とそれに対する抵抗とか、ざっくりといえば内包する矛盾のようなものを抱えながらそのときどきに政治を考え、論争し、妥当かどうかを判断するということになるのかな。こんな簡単に書いちゃうとまあそらそうだ、という感じもあるのかもしれませんが、鵜飼さんの本では「人民主権」という概念について色んな角度から丁寧に議論を積み上げているのが特徴で、論理は非常に説得的なものだと思います。ただまあ「じゃあわれわれはどうしたらいいんだろう?」と思うところもあって、本書の議論からは当然そんなの一概に言えないよ、ってことになるはずだとは思うのですが、その種の啓蒙的な議論を聞いてみたい気もします。個人的にはこういった人民主権の議論の上では、リーダーシップというものをどういう風に考えるんことになるんだろうというのがちょっと気になりました。
- 作者: 鵜飼健史
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2013/07/17
- メディア: 単行本
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本書は大きな話から豆知識的なところまで幅広く取り上げられているだけではなく、岡本全勝先生も書かれていたように、「政令指定都市」という制度のあり方とこれからについて実ははじめてきちんと検討した著書なのだと思いました。色々と読みどころはあるかと思いますが、個人的には様々な「プレイヤー」を扱った4章が面白かったです。大阪市長と広島市長との比較や地方議員の時間管理など、まさに北村先生ならでは という感じで、個人的に今後の研究のヒントになるところも多かったです。また、大阪都構想のところについては、私のものとも重なるかなあとも思いなが ら読んだのですが、おそらくご配慮頂いたこともあり、本来ならむしろ僕の本で書いていないといけないようなこともきちんと整理して書かれていて勉強になりました。『大阪』と併読して頂くと間違いなく理解が深まるかと思いますのでぜひこちらもよろしくお願い致します(宣伝)。
- 作者: 北村亘
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/07/24
- メディア: 新書
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- 作者: 砂原庸介
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/11/22
- メディア: 新書
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- 作者: 田中愛治,日野愛郎
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2013/07/31
- メディア: 単行本
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- 作者: 東大社研,玄田有史
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2013/07/25
- メディア: 単行本
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統一地方選挙の政治学: 2011年東日本大震災と地域政党の挑戦
- 作者: 白鳥浩
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2013/07/30
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