The Democratic Party of Japan in Power: Challenges and Failures

お送りした拙著のご感想についてのお手紙とともに船橋洋一先生に頂きました。もともと中公新書で出版された『民主党政権 失敗の検証』を翻訳し,Routledgeの日本研究シリーズの一冊として出版されたものです。実はまさにこの中公新書を引用しつつ書いた論文を英語に再構成しているところだったので,偶然ですが個人的には非常に素晴らしいタイミングとなり感謝しております。最近の日本政治や行政について,日本での議論の文脈に乗りながら英語で書かれたものというのは残念ながらやはりそれほど多くはなくてこういう発信は本当に貴重だと思います。日本の文脈で書いたものをそのまま英語に直すことはできないわけで,特に困るのは定訳の見つからない組織・機関や講学的な概念の扱いが難しいところです。結果として,たとえば政策過程について英語で書かれたものはなんだか単純化が過ぎるように思うことは少なくないですし,とはいえ日本語をそのまま直訳しても文脈がないので意味が分からない(あるいは直訳できない)となるように感じます。結局,英語でも日本語でもある程度固有の文脈に沿った発信が溜まっていかないと,その次の蓄積が難しくなるわけで。本書の場合は,比較的日本の文脈をそのまま英語にしているところがあって,これは書籍だからこそできるところでもあるように思います。こういった英語の発信を蓄積していくと,それを前提に次の議論が行いやすくなり,英語と日本語で行われる議論のギャップが狭まるのではないか,と期待を感じます。もちろん,研究者個人個人がどういう方法であれ積極的に発信することが前提ですが。
なお日本再建イニシアティブはこの7月に「アジア・パシフィック・イニシアティブ」として第2ステージに進まれたということです。海外メディアへの情報発信を重視しているシンクタンクとしての発展をお祈りしております。

The Democratic Party of Japan in Power: Challenges and Failures (Nissan Institute/Routledge Japanese Studies)

The Democratic Party of Japan in Power: Challenges and Failures (Nissan Institute/Routledge Japanese Studies)

民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)

民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)

それから,帝京大学の渡邉公太先生に『昭和史講義3』を頂いているようです。どうもありがとうございます。この『昭和史講義』も1巻が英訳されているものですね。『3』は戦前のリーダーに注目して編まれたアンソロジーになっているようです。