茨木市長選挙

年明けからずっと注目し続けていた選挙だったが,ある意味で凄まじいものだった。結局最終的に4氏が出たわけだが,32266票で当選した人は自民市議で維新とみんなの党が支援,次点(24692票)は民主党共産党の支援を受けた市議,三位(12166票)は9条ネット市議,そして四位(7260票)はみんなの党で国政選挙に立候補経験のある無所属,ということ。要するに,自民−維新と民主−共産という緩やかな連合で,しかも両方の連合が分裂選挙をしているというもの。仕事柄地方選挙はよく見るわけですが,これくらいのグダグダっぷりはなかなかない。
とは言っても最終的に維新の会が支援した候補者が勝利したので,新聞紙面的には「維新」の風やまず 大阪・茨木市長選で維新副支部長が初当選となるわけですが,この当選した市議については,次のような経歴も指摘されている。

木本氏は自民党市議だったが、昨年4月の大阪府議選茨木市選挙区で維新公認候補を支援したとして、自民党府連から離党勧告を受け、除名となった。しかし、今回の選挙戦では、自民は木本氏の応援に回った。木本氏は、自らが副支部長を務める維新いばらき支部と、みんなの党第9区支部の推薦を受けていた。

単純に選挙結果だけ見ると,仮に維新に反対する側が候補を統一できていれば(二・三位連合),36858票ということで当選者よりも多くの票ということになる。かなり高齢の元自民市議という,大阪維新の会の看板からはかなり遠い候補で,もしここで維新の会が負けたら「地方選挙初敗北」ということになり,全体の流れが変わる可能性もあったのかもしれない。結局そういうことにならなかった大きな要因は,おそらく大阪維新の会を批判する側が,気楽に非−維新であって*1反−維新というか別の求心力を持った組織化をする気がないということに起因するのではないか。
これは2010年の市議補欠選挙統一地方選挙府議選)などと同じ傾向だが,あっちの方は国政の対立が背景にあってそういう組織化がなされなかったと思われるが,今回はもっと地域に密着した(?)ベタな対立だったのだろうと思われる。都市的な地域で大阪維新の会と真逆のことを言っても票が集まらない,というのはおそらく自明だが,あそこのポジションを取られた時にどのように議論するのか,ということが見えてこないと,少なくとも大阪では維新の会がしばらく勝つ,ということかもしれない。
しかし新市長の後援会みたいなところはまあずっと同じ人を応援しているからいいだろけど,例えば統一地方選挙で維新の会とか自民党とかにいれていた人たちがどういう投票行動をとることになるのかはほとんど予想できない。対立軸がバラバラなのできちんと図示することはできないが,試みにいくつかの数字を挙げてみると,得票総数は93732→108961→76384ということで,選挙疲れもあるだろうがかなり減っている。また,維新が支援した候補の得票を見ると,34270→60571→32266ということで,まあ知事選に及ぶべくもないが,統一地方選挙で維新府議が獲得した得票よりも少ない。
なお,統一地方選挙の政党別得票は,維新34270,公明18906,民主16161,自民15956,共産8439,大阪府知事選挙では松井60571,倉田36815,梅田9480となっている。ダブル選挙のときに自民票・民主票がどの程度割れたのかも気になるが,それよりこの三回の選挙を通じて公明党がどういう動きをしたのかは気になる。ここのところはインタビューでもしないとわからないだろうけど。

追記

辻さんに教えていただいたが,NHKで出口調査をしたらしい。その結果は以下のとおり。

NHKは、有権者の投票行動や政治意識などを探るため、きのう、市内12の投票所で投票を終えた有権者1246人を対象に出口調査を行い、75%にあたる935人から回答を得ました。
期日前投票は、調査の対象に入っていません。
ふだん、どの政党を支持しているか尋ねたところ、大阪維新の会と答えた人が最も多く28%、次いで、自民党が16%、民主党が11%、共産党が6%、公明党が4%、みんなの党が2%でした。
支持政党なしと答えたいわゆる無党派層は29%でした。
そして、大阪維新の会の支持層のうち80%あまりが木本氏に投票しました。
自民党の支持層ではおよそ40%が、民主党の支持層では30%あまりが、公明党の支持層ではおよそ60%が木本氏に投票したとしています。
また、いわゆる無党派層のうち30%あまりが木本氏に投票しました。

まあ回答拒否の問題があるので何とも言えないが,このデータだけを使って単純に計算すると,「公明党支持層」っていうのは,32266×0.04÷0.6で,2000人ちょっとしかいないことになる。統一地方選挙の結果から考えると,公明党支持層がまともに答えていないか,ほとんど投票に行っていないかのどちらか,ということになる。また,同様の方法で維新の会,自民党民主党の「支持層」を単純に計算すると,三党ともに10000人ちょっと,ということになる。2年ほどで維新の会が自民・民主両党とほぼ同じくらいの固定票を獲得しているとすれば,それは素直に評価するべきだろう。それもあって,いわゆる「無党派層」は若干少なめとなってるイメージ。他方で,結局のところ維新の会の強みはその支持の固さであって,逆に国政政党が負け続けているのは,求心力が全くないからであるということがよくわかる。

*1:そういえば卒−維新とか言ってる人もいたか