留保財源

留保財源ていうのは,なかなかその性格がわかりにくい。
時事通信の記事によると,高知県がこんな提言書を総務省との意見交換会に提出するらしい。

(筆者注:高知県の)提言書では、標準税収入の25%相当額を留保財源とする仕組みが、税収格差を財政力格差に直結させているとの認識を示した。県内市町村の標準税収入額は依然減少に歯止めが掛からず、加えて2004年度決算では、例えば留保財源に対する公債費の割合が114.4%(全国平均39.7%)となっている財政の苦しい状況も踏まえ、留保財源の傾斜措置を提唱。住民税などの税目に限り、財政力の強い自治体の留保財源率を10〜20%、弱い自治体で30〜40%にすることも格差緩和に有効と訴えた。長期的な観点からは、地域間の税収の偏りが大きい法人関係税を国税にし、消費税を地方税に組み替える必要性があると言及した。
(10月20日 時事通信

留保財源といっても,基本的には地方財政計画のほうで使途がある程度方向付けられていることを考えると,「留保財源に対する公債費の割合」のような指標にどのような意味があるのか微妙なところですが。留保財源の傾斜措置,ということは,基準財政収入額の計算において,財政力の弱い自治体にハンデを与える(財政力が強い団体で基準財政収入額が増えて,弱い団体で基準財政収入額が小さくなる)ということなので,要するに,交付税の配分にあたってより財政力の弱い自治体に回すべきだ,という議論になる。付け加えると,別に交付税総額には影響がないので,交付団体内での配分を変えろ,という話ということでしょう。
うーん。それならそう書けばいいのに,と思わないでもないですが。「留保財源率を変えろ」と主張するのは,やはり一般的には自主財源を増やせ,という主張のように聞こえるので,若干トリッキーだと思うんだよなぁ。まあそれは長期的な観点から「地域間の税収の偏りが大きい法人関係税を国税にし、消費税を地方税に組み替える必要性がある」という話につなげてるんだ,といわれるとなんとも言えませんが。
過疎特有の話,というのはいままで補正係数で措置していたものを単位費用化しろ,という主張なのかしらん。こういう主張が出始めていることは,交付税においてソフトバジェットよりも,コモンプールの問題が本質的であることを示しているように思えてならない。特に,景気が良くなってきて国税5税で賄える部分が多くなり(反対に特例措置がどんどん減って),国に対して地方財政対策を要求する舌鋒が緩む可能性が見え出すと,地方のほうも厳しいので,今度は中での資源の取り合いが表面化してしまうことになるのではないだろうか。それを考えると,交付税の配分において「地方の代表」がいないのは問題を複雑化させる可能性があると考えられる。ていうか総務省はこれからも「地方の代表」の顔を持ち続けられるんだろうか。