第八回会合

「基本的な考え方」を総理に提出してから初めての会合,ということでここから実質的な審議が始まっていくのかな,という第八回。今回は,地方六団体の代表(全国町村会長は欠席)が会議に参加し,意見交換という形で進められました。
地方側の「基本的な考え方」に対する反応は,まあ概ね良好で,税源配分の5:5という目標値を出さなかったのは残念だがこのまま頑張って欲しい,という趣旨の発言を皆さんがされていたという感じでしょうか。具体的なトピックとしてはそのほかに,

  • 地方交付税は地方にとってのセイフティネットとして重要
  • 国と地方の協議の場(市長会が提案するのは「地方行財政会議」)を常設して欲しい
  • 地方議会に対する批判は多いが定数削減を中心に自ら改革を進めている*1
  • 議会がその機能を発揮するための権能が限られている,例えば実地検査や議決についての制限を解消して欲しい

といったようなことが述べられていたのではないかと。そして,分権委員会のほうからは,諮問会議で二重行政の整理が骨太2007に盛り込まれそうなことから,二重行政の弊害・分権の支障に関する事例を報告して欲しい,という要望がしばしば出されていました。
今日の議論の焦点は,基本的には税財源改革にあったように思われます。地方を代表する各団体のトップは,国と地方の税源配分が1:1をめざすとともに,「地方のセイフティ・ネット」として交付税の維持を主張します。代表的なのは知事会会長ですが,交付税の名前を共有税に変えるもののシステムについては地方に配分される部分を交付税特別会計に直接入れること以外は基本的に現状維持を主張しています(もちろん基準の簡素化や国保や福祉といったかたちで経常経費が膨らみすぎていることへの対応は述べられていますが)。この点について,小早川委員は,「共有税と名前を変えたときに,その運用は(国の機関である総務省ではなく)地方の側で行われるのか?」という質問をしますが,その答えは「現在のところ,自治体間で水平調整を自らでやる,という状況までいってない」というものでした。交付税を現状に近いかたちで残すのであれば,国と地方の税源配分を1:1に近づけたときに,交付税の規模はかなり減ることが予想されるわけで,その規模で自治体間の水平調整が十分に行われるか,ということはやや疑問なしとはできませんが,麻生会長は同時に交付税の財源保障機能を堅持すべき趣旨の発言をしていることを考えると,この部分(1)すなわち税源配分を1:1として,(2)交付税による財源保障システムを維持し,(3)かつ自治体間の財政調整を十分に行う,という3つを同時に行うことができるかどうか,というのはひとつの大きな課題になってくるように思われます。
関連して,井伊委員が「税源移譲後の課税自主権についてどう考えているか?」という興味深い質問をされていました。これは税源移譲後には補助金に頼らず自ら増税しなくてはいけないという前提でなされた質問だと思いますが,残念なことに,「課税自主権」が新税による課税権の行使として捉えられてしまったようで…。ただ,山出市長会長の答えは意識的かどうかはわかりませんが結構興味深い答えになってました。曰く,「課税自主権にはあまり大きな期待を持たない方がいい,租税は国会で決めるべき」というもので,山出会長はその前にも地方消費税のウェイトを増やすことを中心とした租税体系の変更を通じて,偏在の少ない税体系を国が作るべき,という主張をしていることを考えると,基本的には地方が自ら増税をする必要がないように制度設計をするべきだという主張なのかもしれません。まあ平均的な市長の見解,のようにも思いますが,増税とセットでより高いレベルの公共サービスを求める人が全国的にいないのであればそれでいいといえばいいのかな,とは思うのですが,ただそれなら必ずしも税源移譲に拘らずに交付税制度の組み換えの方が主要な論点になるような気がするのですが。
あとは相変わらず猪瀬委員が地方公務員・地方議員はムダだ,という話がところどころに入ってくるわけですが,今回は市長会長の山出金沢市長をはじめとして,「いや頑張って改革してる」という反論が出ていて,まあボチボチ水掛け論かなぁ,という印象が。現業部門の賃金が高い,という批判をする気持ちはわかるし個人的にもそうなんじゃないかとは思いますが,同一労働同一賃金であるべきだという主張ならば,この話は結局民間部門も含めた労働市場の柔軟性の問題に突き当たるような…。
この後の議論は,行政法の権威である小早川委員が中心となって論点出しをして,それについて議論していく,ということになるようです。おそらく単一国家であることを意識した現実的な地方分権に関する案が出されることが予想されるので,地方分権が「空気」の力で無茶な方向に進むことがないだろうという意味では妥当な進め方じゃないかな,と思うわけですが…。観客としてはそろそろ論点を絞った議論を見てみたいところですね。
あ,そういえば多くの皆様にとってはドウデモイイコトだと思うのですが,オンデマンド配信のソフトがReal PlayerからWindows Media Playerに変わり,モノクロ配信だったのに色が着きました。iTunesを導入するまでは音楽はWMPで聞いていたので,どちらかというとWMPの方が親しみがあるものの,オンデマンド配信のWMPは使い勝手が悪いっす。ちょっと聞き取れなかったところを聞きなおそうとして少しだけ巻き戻ししたらえらい時間がかかるし…この点考えるとRPのほうがだいぶん時間の節約になったりするのですが…(まあここに書いても仕方ないですが)。

*1:しかし合併で議員の数が41500人くらいから15000人くらいになったのはちょっと驚き