グッドウィル

まあだんだん親会社の社名がきつくなる,というヤツですが。地方分権がらみでは,日経に興味深い記事が。

地方分権進めば「問題起きない」−分権改革委で指摘
地方分権をすれば(介護報酬を不正請求していた)コムスンのような問題は起きない」−。政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)が七日,北海道南幌町で開いた懇談会で,参加した首長からこんな指摘が出た。(中略)
コムスン問題を持ち出したのは北良治奈井江町長。介護事業者の指導監督権限は原則として都道府県が持つが,「地域のことを最も把握できる市町村に指導監督権限があれば,必要な人員がいないなんてことは起こらない」と語った。(後略)
6月8日 日本経済新聞

日経が載せてるわけですから,なんとなくそうだろうと思ったんじゃないかと。確かに若干そんな気はしますが,いくつか問題があるのではないかと。まず,あんま関係ない話ですが,介護サービスの財源的な責任をどこが持つのか,というところがひとつ。つまり,市町村が(中央政府とは関係なく)介護サービスを自ら(固有)の税財源で実施するのであれば,それはそれでRace to the bottomが起きる懸念が考えられるわけで(もちろんこれは実証的な検討が必要なのではないかと…できたら来年はそういう仕事をやりたいなぁ)。次に,仮に中央政府が指揮監督権を包括的に市町村に委任して,市町村が十分な権能を持てた場合でも,今度は別の問題が起きるような気がします。それは,厳しく規制をする(という評判の)市町村には事業者が入ってこないんじゃないか,と。つまり,マイナーな違いならともかく,市町村間で規制にかなり大きな違いがある場合,事業者としては厳しく規制するところは避けて,規制が緩く摘発リスクが少ないところを選ぶことで,結果として厳しい規制をする(しっかりした?)市町村では民間事業者による十分なサービスが行われない,ということになるかもしれません。もちろんここでは別に事業者が常に悪いことを「狙って」やるということを言いたいわけではなくて,単に自分が十分に規制を守っていると思っていても不十分だとして摘発される「リスク」が大きくなるということです。さらに,市町村によって,(事業者が)守ってると思ってる規制では不十分だということを個々に指摘されることになると,事業者が広域展開するのが難しくなる,ということも考えられます。まあ要するに,この分野(規制)における市町村間の競争が,望ましい結果を確実に生み出す,という主張について疑問無しとしない,ということなのですが。
ただ,規制を厳しくしよう,と考えている市町村に対して,民間事業者が公的資金から受けるのと同程度の資金を与えて,市町村が直営サービスをすることは考えられるし,公的部門と民間部門が競争することはひとつの方法かな,と思います。まあ今はそれをやっていて,公的部門が非効率だ,ということで批判されまくっているわけですが…。ただし,やはり考えなくてはいけないのは,公的部門が非効率であったとしても,例えば選挙などによるvoiceを用いてある程度現状に働きかけることができるのに対して,民間部門のサービス水準に不満があってもexitするしか選択肢はない,ということでしょう。イギリスの福祉サービス民営化の経験からは,民営化することによって人々がサービス事業者に対して直接に説明責任を問うことができず(彼らは金主=政府に対する説明責任によって次の契約を結んでもらえないかもしれないけれども),顧客としてexitするしか選択肢がない,ということがある程度わかっているわけで,十分にサービスを提供するためには,監視費用を増やすなど何らかのかたちで負担が増えることはある程度受け入れなくてはいけないのかもしれません。

The Appointed State: Quasi-Governmental Organizations and Democracy (Public Policy and Management)

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British Local Government into the 21st Century (Government beyond the Centre)

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