第32回会合(2008/1/23)

新年一回目の会合ということで今回は二時間です。ずっと三時間続く話を聞いていたので,若干短く感じた僕はある種の病気かもしれません。
まあそれはいいとして,今回は増田大臣のあいさつ(15分くらい),行政改革推進本部事務局次長(独立行政法人整理合理化計画について,40分くらい),内閣府公共サービス改革推進室室長(市場化テストについて,30分くらい),内閣府規制改革推進室室長(保育関係などについて,30分くらい)と妙に盛りだくさんだったので,報告者への質問や委員間の議論も反射的なものになりがちで,あまりひとつの話題について議論する,というのは難しかったようです。
個人的にちょっとどうなんだろうなぁ,と思いながら聞いていたのは,各報告者はみな審議官クラスの官僚の方々なのですが,その人たちに委員が踏み込んだ「個人的な意見」を求めているような発言が多かったようなところ。確かに全て行政改革関係の部局で現在のシステムを改革する,という役割を与えられているところだとは思うのですが,やはり委員でもない事務局の人が出てきて踏み込んだ意見を言うのはちょっと無理があるのではないかと…。言ったことが実行されなくて責任取らされるのもいやでしょうし,自分の職場に帰って「何であんなこといったんだ」って言われるのも困るだろう,と。その中でも規制改革会議の室長はよどみない感じがしましたが,それでも「個人的な問題意識は?」と問われるとさすがにちょっと答えようがないという感じで。
とまああまり書くような話題がないのですが,今回問題になったのは,独法の中では雇用・能力開発機構市場化テストではハローワーク,規制改革では保育,ということで全部厚労省マターのようです。特に雇用能力開発機構(業界的には「能開」というそうですがby猪瀬委員)については,猪瀬委員がとても批判的で,厚労省出先機関であるハローワーク地方自治体との仕事の重複という関係で,分権委でもまた取り上げられるのかなぁ,という感じです。また,ハローワークについては,西尾先生から国による無料の職業紹介事務という話を定めたILO88号条約との関係で,外務省条約局の政府解釈はどうなってるんだ,という話が出てました。前に議論になったときも取り上げましたが,市場化テストにしても分権をするにしても,解釈がどうなってるんだということで延々とやるのは非生産的な話で,政府解釈を決めてしまった方が早いのではないかという感じがします。仮に現在のように厚労省出先機関であるハローワークしかやってはいけない,ということであれば,分権の方に関して言うと「それじゃ法定受託事務ってのはなんなんだ」,というより本質的な(とはいえどこに行くかわからない)議論になるでしょうし,あるいは60年も前のILO条約との関係をどうするんだ,という議論になるのかもしれません。個人的には他の条約との関係からすると法定受託事務でやることにそれほど(法的な)問題があるようには思えませんが,ダメならだめで他の展開もあるわけで。いずれにせよ条約局という政府解釈を出す仕事を持ってるところがあるのに,厚労省と分権委(あるいは規制改革会議)の間で不毛な解釈論争をするのはもういいんじゃないか,と思ったりするわけですが。
あとメモしておくべきことといえば,規制改革会議の議論の進め方が興味深かった,というところでしょうか。どっちかというと国庫補助金で整備した施設の財産処分の話でしたが,あまり大枠を考えるのではなくて,支障事例として集めたところから個別の事業を中心に一つ一つやっていて,その結果として運用の統一化や要綱の在り方を考える,という方法をとってるそうです。またその一環,ということかと思いますが,保育関係で現在の最低基準を見直すときに,公的な保育園と東京都の認証保育園(若干最低基準が緩い)を比べてどのような問題がありうるのかを検討する,というのはぜひその結果を見てみたいなぁ,と。最低基準の話になると厚労省はいつも「科学的な検討」を言うのですが,規制改革会議の試みのように実証的に検討しようという話はあんまり聞きません。もちろんそういう調査にはいろんなバイアスがあるわけで,それぞれの立場がある機関の調査結果を元データも含めて公開していくと,結構実りのある議論になると思うのですが。…うーん。今回は本当に感想っすね。
あ,そういえば,某誌に論文を載せていただいたのですが,僕の研究テーマが「地方分権改革論」というよくわからん話になってました…。記録によると「行政学地方財政,公共政策」って書いてたことになってたのですが(いやいやそれもどうかと)。まあ誰も見ないところでしょうが。