第75回会合(2008/2/18)

分権委の動画がWAVからFLVになったおかげで新幹線で見れない!と思ってたら,新幹線もN700系でインターネットを見られるようになっている,ということで,もうこれはとうとう無線LANデビューかなぁ,と。さてもうずいぶん前になってますが,2月中旬に行われた75回の会合記録を。
この日は前回(もうだいぶ前ですが)の積み残しである行政体制整備の議論と,猪瀬委員から要望があった,厚生労働省所管の独立行政法人雇用能力開発機構関連の議論。まず行政体制整備の議論については,基本的には管轄が重複しうる地方制度調査会(地制調)との関連についての話が中心に。分権委では一次勧告の中で,行政委員会の必置規制/地方議会制度/財務会計の透明性/広域連携の促進,などのテーマについて,制度に関する選択の余地を拡大する方向で勧告を行ってきたわけですが,地制調ではこのうち監査・地方議会制度についてある程度区切りがつき,いまは基礎自治体についての議論をしているということ。委員の間からは,地制調には地方議会の代表もいるから議会についての抜本的改革の提案が難しいのではないか,という懸念が出る一方で,様々なテーマを議論しなくてはいけない分権委よりも地制調の方が個別のテーマについて時間をかけた議論ができるのではないかという期待も出ています。まあ違う委員会のことを議論しても難しいですし,方向性については大きな違いがないということで,この重複問題については委員として参加している西尾代理に分権委の意向を伝えてもらうかたちになるという方向で。他に出たテーマとしては,露木委員や横尾委員から,いわゆる地方行財政会議についてどのような組織を考えるべきかという問題提起が行われ,西尾代理から,法定化するのであれば地方自治法国家行政組織法の中に位置づけるよりも,何か単発の法律を作った方がよいのではないかという見解が示されていました。
続いて雇用能力開発機構についての討議。二次勧告の中で書き込まれた出先機関関連の35000人移管という中にハローワークが大きなブロックとして入っているので,これは分権委としても大きな問題なわけです*1。はじめに内閣官房行政改革本部から経緯についての説明が行われ,2008年末の閣議決定で雇用能力開発機構の廃止と業務移管の方向性が示されたことが報告されています。特に地方分権と関わりがある決定として,それぞれ民間委託の拡大を図りつつ,離職者の訓練をするポリテクセンターを長期的には都道府県へ移管,学卒者の訓練をする職業能力開発大学校(ポリテクカレッジ)は移管希望を把握した上で,ブロックごとに水準を維持することを図るということで。なおその他の業務について,相談業務は都道府県労働局との調整を行い,あと残った財形や雇用促進住宅といった仕事が独立行政法人勤労者退職金共済機構などへ移管するということなのかな,と。一つの焦点になっていた「私のしごと館」は22年8月までに廃止して,建物については有効利用を考えるということになっているそうです。この報告について,猪瀬委員は特に雇用促進住宅関連について質問するものの,行革事務局としては厚労省から報告を受けているだけで自ら遡って調査しているわけではないという応答が。また,露木委員から雇用保険のお金の流れについての質問がありましたがそれほど詳細な返答はなく,行革事務局との議論としては「工程表をちゃんと作らないとね」みたいな話になってます。
その次の厚労省からの説明では,行革事務局からの説明を踏まえた上で,じゃあ具体的にどうやって移管作業を進めるべきか今考えてます,という報告が。質疑応答では,移管の方法論について討議になるというよりも,雇用促進住宅関連で猪瀬委員から厚労省に対して出された質問の回答(配布資料1)の内容について,猪瀬委員が厚労省を質す,といった趣きに。データは出ているものの,各住宅の古さや大きさがわからないのでお互いに想像でモノを言うという,ややつかみどころのない話になってましたが,厚労省の主張としては「行政改革で廃止が決まっているから入居者を減らしている一方で,入居者不足を言われても困る」という感じ。まあ冷静に考えてそれはその通りだと思いますが…。規制改革会議や行政減量効率化会議と分権委が言ってることが違う,という話なんでしょうが,こういう非協力的な複数プリンシパルのケースではエイジェントの統制がうまくできず,結果として現状が維持されやすいわけで,(政治的にいろいろ難しいんでしょうけど)まずはこっちの方から何とかするべきなのではないかと思ったり*2。また,雇用促進住宅のみならずそのあとの「私のしごと館」関連でも,「高く買って安く処分する」という行動について委員から厳しい批判が出ていますが,どちらかというと省庁がいくつかの問題を統合して理解しようとしている傾向があるように思われる(議論の複数プリンシパル化を進める?)のに対して,委員の方もまとめた形で議論してしまうところがあるような気がします。「高く買って安く処分する」のは別に雇用促進住宅に限った話ではなく,それはそれとして重要な問題なわけですから,問題の性質ごとに方針を立てた方がいいのではないかという感じもします。まあそうは言ってもその場のやり取りとしては難しいのだと思いますが。

*1:結局二次勧告を受けた工程表には35000人というのが載らなかったわけですが…(後知恵ですが)。

*2:複数プリンシパルの話は,直観的にDixit[1996=2000]の議論が興味深い。もうちょっと真面目に伊藤[2003]を勉強しようと思いつつ放置中ですが…

経済政策の政治経済学―取引費用政治学アプローチ

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契約の経済理論

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