地方行財政会議

同じく10日付けの官庁速報から。知事会が,六団体が地方分権改革推進委員会でたびたび提案している「地方行財政会議」の整理案をまとめたらしい。

◎国会との関係など整理=地方行財政会議設置に向け−全国知事会
全国知事会地方分権推進特別委員会は、地方にかかわる政策立案に際し、国と地方が対等な立場で協議する場「地方行財政会議」について整理案をまとめた。知事会は政府が3年以内の国会提出を目指している「新地方分権一括法」に基づいて設置するよう求めており、整理案には、国会との関係を含めた同会議の位置付けや、協議対象などについて考え方を盛り込んだ。国と地方が協議を重ねることで、地方は「国の下請け」から脱却し、「(地方)政府」に進化すると強調している。

整理案によると、地方行財政会議は、中央政府と地方政府の政府間協議組織であり、「国会の立法権限や予算議決権を侵害するものではない」との位置付けを示した。中央政府は協議が整った事項については、「その結果を尊重するよう努める」としている。ただし協議内容・結果は国会審議の参考として国会に報告するもので、同会議での協議に沿った法律案・予算案でも国会の判断で修正できるとしている。
(中略)
メンバーは、中央側が内閣官房長官総務相財務相、経済財政政策担当相とし、他の関係閣僚は臨時議員とする。地方側は地方6団体代表(会長)とし、他の関係首長らを臨時議員とする。共同議長は官房長官全国知事会長。事務局は国の機関から独立した形で設置する。
このほか、同会議と既存の審議会との整合性についても触れており、「地方制度調査会や地方財政審議会のように首相や総務相に答申する審議会とは位置付けが異なる」と強調。ただ、地方制度調査会など国の審議会が答申した内容を具体的に立案する際は、同会議の協議対象となるとしている。

協議の対象は,地方自治関係の準則や国の関与,補助負担も含めた財政制度,ということだそうです。まあ六団体(というか特に市長会?)が前から言っていたお話ですが,具体的な組織の像の素案としてははじめて,ということになるのかもしれません。興味深いのはあくまでも国会に対して「その結果を尊重するよう努める」ことを求めるものであること,つまり決定機関ではないということと,それからやはり「事務局は国の機関から独立した形」で設置するということでしょうか。
合議制組織の制度選択について,伊藤先生の整理を参考に考えると,まず国と地方の対等な関係を維持するという観点から,内閣から独立した憲法上の合議体というのがあり得るかもしれません。現在では典型的には憲法第90条に基づく会計検査院になるわけですが。おそらく地方としてはこれが最も好ましいようには思えますし,「国の機関から独立」という観点からはこれしかないんじゃないか,とも思えますが,残念ながら憲法改正という異常に高いハードルが存在するのは事実でしょう。次に独立性が高い機関としては,「内閣の統制に服しながらも内閣以下の行政組織体系から相対的に独立した組織」という選択肢で,具体的には人事院のようなものでしょう。
その次に考えられるのは,内閣府に組織を置く,ということで,内閣府設置法のもとで規定された組織を置くということが考えられます。具体的には「内閣府重要政策会議」(例:諮問会議),「内閣府特別会議」(例:少子化社会対策会議*1),「内閣府大臣委員会」(例:国家公安委員会),「内閣府外局委員会」(例:公正取引委員会),「内閣府設置審議会」(例:地方制度調査会)という類型になります。内閣府以外に置く場合は(現状では総務省,ということでしょうが)国家行政組織法第三条が適用される行政委員会あるいは第八条の審議会,と*2
官房長官と知事会会長が共同議長という提案なので,少なくとも総務省設置ではない,ということでしょう。つまり,国家行政組織法の適用外に置く,ということで。報道を見る限り,あくまで協議の機関という扱いであるために執行機関である必要はなく,また地方制度調査会が既に内閣府設置審議会として入っていることを考えると,大臣委員会・外局委員会・審議会という選択肢が外れて重要政策会議か特別会議,というあたりを意識しているのかな,と思います。またスタイルとして諮問を受けて一年かけて答申する,という感じでもないので,審議会というのはそもそも馴染まないかもしれません。
まあただ重要戦略会議や特別会議にしても,事務局は内閣府ということになるわけで,地方が主張するように独立した事務局ということはちょっと難しいのではないかと思われます。そうするのであればそれこそ会計検査院人事院のような制度設計を志向しなくてはいけないかもしれません。それくらい大きな制度変更をするなれば,おそらく現在の総務省の旧自治部門がかなりごそっと動くことになることが予想されるわけで,現在の総務省の役割を再定義する必要が出てくるかもしれません。まあ長期的にはその方がいいでしょうが。ただそのときの問題は,新しい独立した機関がどこを見て仕事するのか,ということでしょう。基本的に国会向いて仕事することになるわけですが,予算に関することは内閣で決められるわけで,内閣を見ていかないとどうしようもない,と。予算編成のどのような段階で影響力を持つことになるのか,というのは,機関の位置づけと相俟って結構ややこしい問題のような気がします。
うーん。この話は思ったよりもややこしいのでまたもう少し。

日本型行政委員会制度の形成―組織と制度の行政史

日本型行政委員会制度の形成―組織と制度の行政史

*1:よくわかりませんが,国会で定められた基本法に付随する会議が多いようです。他には「高齢社会対策会議」とか「食育推進会議」とかあるようです

*2:ちなみに,地方分権改革推進委員会は,設置法で定められて「特例」として内閣府設置審議会になっているようで,これは設置法が一応時限立法になってることに起因すると考えられます。