地方行財政検討会議・分科会

3月18日に地方行財政検討会議の分科会が開かれ,委員以外の専門委員のメンバーも確定した模様。具体的にはこちらの名簿に出ていますが,第一分科会が基本的に政治学者・行政(法)学者によって構成され,第二分科会は財政というより財務に関する研究者(会計・税法など)と自治体の実務者で構成されている感じ。検討の方向性について,出されている資料(第一分科会第二分科会)を見ると,第一分科会では前回のエントリでも書いたように,自治体の「ホームルール」のようなものについて議論する場になっていて,第二分科会は財務会計制度や監査制度を中心に議論することになっているらしい。というと,やっぱりやっていることは基本的に地方制度調査会に近いという感じ。
とりあえず備忘的なメモになるが,二点興味深い。まずひとつは,従来の地制調は一応内閣総理大臣の諮問に答えるということで「地方制度調査会設置法」という法律に基づいて設置され,事務局も内閣府大臣官房企画調整課におかれていた(まあ実質的には「協力」することになっている総務省自治行政局行政課,ということなのだろうけど)。さらに,以前も書いたようにそのメンバーに国会議員や首長・地方議員の代表者を加えなくてはいけなかったことも大きい。特に地方議員の代表者はしばしば地方議会改革に対して反対を表明してきたとも言われている。それに対して今度の地方行財政検討会議は,総務大臣の決定によって総務省におかれた機関であり,事務局は明示的に行政課が行うことになっている。誤解を恐れずに言えば,審議会としては内閣レベルではなく省庁レベルにおかれるという意味で格落ちということになる。一方で,国会議員・首長・地方議会などの政治家や経営者を外して基本的に専門家のみで構成される審議会であるために,いわばノイズが少なくなってアイデアとしては一貫性を持った答申(?)が可能になると考えられる。この点からは,民主党政権が(少なくともこの政策分野において)審議会レベルでの利害関係者の合意にそれほど重きを置いておらず,むしろ専門家による一貫性を持った制度設計のアイデアを必要としている(そして利害調整は総務省の政務三役が行う?)ように見える。ただ,だとすれば中途半端に公開せずに内部に専門家を呼んできっちり議論をすればよいのではないか,という気もするがどういう意図があるのかはいまいちよくわからない。
もうひとつは,第二分科会において「財政」ではなく「財務」を強調している設定になっているところ。第二回会議からの流れを考えると,この会議のメインはやはり第一分科会での議論であるように見える(前回の地制調のテーマは地方議会改革と監査制度だったが)。第二分科会は財務会計や監査というよりとっつきにくいところについて,実務者と「財務」の法律家を呼んで細かい議論をしようとしている感じ。言い換えると,この分科会ではこの手の審議会において従来しばしば問題になっている「財政」を外して,より法律的な議論が中心になる「財務」の議論に限定する姿勢が強い。29次の地制調でもひとつの専門小委員会が地方議会改革と監査の議論を両方行っていたわけだが,ここの「財務」のところだけを集中的に議論する組織ができるのってすごく珍しいのではないか。ここだけ切り取ることは,しばしば政治的な議論となってしまう「財政」と切り離したかたちで「財務」に関する制度を集中的に議論することができる,というメリットが有る一方で,例えば地方債制度などと独立して考えて良いのか(具体的には経常/投資でゴールデンルールを設定するという議論など)という問題もあると考えられる。ただ,一点目とも絡むが,厳選した専門家を呼んでいるわけだから,政治的な議論とは距離をとりつつ,複数の案を提示するコトもひょっとしたら可能かもしれない。
いずれにしても従来の自民党時代の審議会とは異なる性格を持っているような感じはする。地方分権改革推進委員会の観察からは,(まだまとめるとこまでいってないけど)個人的には従来のスタイルの審議会,「隠れ蓑」というタイプのものより「行政改革」タイプのものも,そろそろ限界かと考えていたところがあるので,新政権での審議会のスタイルが従来とは変わってくるものになるかもしれない,という期待もある。まずは前の審議会について少しまとめるところからはじめないといけない気もするわけですが…。