みんなの党(4月1日追記)

Twitterで困るのは,妙にブログとの役割分担を意識してしまうところか(僕だけか?)。ふと思いついたことはTwitterで書いて,ブログにはそれなりにまとめたものを書こうと思うと,普段そんなにまとまったことを考えているわけではないからブログが書けなくなる,と。Twitterはなんか備忘録に使いにくいからこれは個人的にはやや困ったところ。

まあそんなつぶやきネタからですが,新報道2001の調査によれば,3月18日調査時に3.4%だったみんなの党の支持率が,25日の調査で7.4%と約倍増というくらいにまでいったらしい。これを受けて柿沢未途議員のTwitterでは,被調査者が政党名を自由に述べる形式の調査では「みんなの党」の支持が伸びにくいけど,書いてある中から被調査者が選ぶ形式では支持が伸びやすい,というような議論がされてました。さて,この新報道2001の調査は「場当たり的」という批判もあって*1,総理にしたい政治家とか「連立の枠組み」とか聞く質問は本当に場当たり的だとは,思いますが「あなたは今年夏の参院選でどの党の候補に投票したいですか。」とう質問については政権交代後一貫して同じ質問を同じ形式でしている(実のところ「形式」までは分かりませんが)。なかなか興味深いので,ウェブサイトのデータを時系列にまとめたものを作ってみると右の図のような感じ。
これを見ると,民主党自民党の支持率を比べると当初一瞬さらに拡大する傾向にあったのに,10月に入った頃から民主党への支持縮小と自民党への支持拡大でだんだんその差が縮小の方向へ向かってきたこと,それから「まだきめていない」がほとんど変わらないか少し拡大する傾向にあることが,何となく見えるのではないかと思います。この図でみると,一番最後にちょろっと上がってるのが「みんなの党」ですが,現状だと趨勢にはあんまり影響しないように見えなくもない。

上の図ではその差がわかりにくい,民主・自民以外への政党支持を見ると,次の図のようになる。これを見ると,民主・自民以外の政党としても,公明党(期間平均3.3%)・共産党(同2.2%)というだいたい2-5%くらいの支持を受ける政党と,それ以外の政党があるのがわかる。何かここは公明党共産党ともに乱高下しているわけですが,それは調査方法によるのだと思われる。新報道2001のウェブサイトには,「首都圏の成人男女500人を対象に電話調査」としか書かれていないので,詳しいことはわからないけれども,500人のうち1%って5人なわけですから,この辺りに来るとまさに「1人」の答えが結構大きくなってしまうわけです。それでも公明党共産党みんなの党以外の政党は基本的に1%を下回る水準でずっと推移しているわけで,それらの党が500人に調査しても基本的に5人支持を得ることがない,というのはある程度安定的な結果と言えそうです。しかしその中に連立で大きな役割を果たしている社民党国民新党があるのは驚くべきところ。
みんなの党は,民主・自民以外の政党で唯一変わった動きをしているように見える。つまり,(選挙直後は除いて)2009年内は公明党共産党以外の小さな政党と同じような支持を受けていたのに,2010年に入って突然公明党共産党と同じような動きを見せ始めると。そして直近の調査ではこれらの政党の倍以上の支持を受けていることになる。もちろんこれは「首都圏調査」であるというバイアスもあるし,サンプルは相変わらず小さいわけですが,逆に20人弱から一気に35人前後まで「支持」を表明するのは誤差としても結構な違いだと思われる。この支持が続くかどうかはよくわからないけれども,少なくとも2010年に入ってからの世論調査では公明党共産党と同程度の支持を受ける傾向にあるというのは特筆すべき。
現状でみんなの党が非常に興味深いのは,公明党共産党のように確固とした地方組織を持っていないにもかかわらず,国政において一定の支持を受けているところにある。しばしば言われていることだけれども,このような支持率調査の結果を踏まえて,比例では結構な議席を取るのではないかと。このように有権者が地方政治とは別に国政で支持する政党を選ぶことにあんまり違和感が持たれていない,というのはなかなか不思議な現象なのだろう,と。なぜなら一般的には国政において多くの政党は自分の支持を伸ばすために地方を意識しようとしますし,逆に地方の側も国政の意を呈した動きが行われることは少なくありません。にもかかわらず,地方での基盤を持っていない政党が支持を伸ばすということは,有権者の側が「国政」と「地方政治」を別々のものとして考えているというような傾向があるのではないかと。実は以前に似たような政党がひとつあって,それは1990年代初頭の「日本新党」なわけですが,これは十分に比較研究の対象になるのではないかと思われる(みんなの党側も当然意識していると思うし)。ただ,それに加えて個人的には知事を中心とした首長の動きに注目したい。1990年代頭と比べて地方首長の政治的影響力は非常に大きくなっていると考えられる。そのような首長が全国政党と手を組んだらどのようなことが起こるか。これまでは地方議員−政党(自民党)という関係しか想定されてこなかったわけだが,ここに首長が入ってくると構図としては興味深い。首長の側としても,自民か民主の二大政党のうちどちらかを選べ,といわれると外れた時のリスクが大きすぎるが(たぶんだからこそ特に参議院議員選挙では与党傾向を強めるのだと思うが),今回のみんなの党は選挙後のキャスティング・ボートの可能性がしばしば言われているために,首長として乗りにくさは軽減されると思われる。もちろん,その後の首長選挙で自民・民主とどういう関係を取り結ぶか,という話になってくるわけだが。

追記

柿沢議員のコメントについてそのまま書いたが,菅原さんによれば,「支持する政党名を自分から答えさせる形」の調査は通常ありえないし,そういう検証はきちんとなされていないとのこと。僕自身はなんとなく出口調査のイメージでそんなもんかな,と思って書いたところですが,そういう種類の調査があるとしても,確かに調査における聞き方やタイミングをきちんとコントロールして検証する必要がある話だと思います。詳しくは菅原さんのTwitterのTLを参照して欲しいところ。
もうひとつ,ちょっとフォローしてなかったのですが,逗子市議選でみんなの党が躍進というニュース。これはやはり非常に興味深い。逗子市はみんなの党の主要議員のひとりである浅尾慶一郎議員の地元ですが,それでも市議選挙で民主党関係候補が合計3828票(候補者5人,うち3人当選)みんなの党関係候補が合計5478票(候補者3人,全員当選)というのはすごい。みんなの党候補者が1・2フィニッシュで,前回選挙と比べると887→2371,707→2206というのだから,その伸ばし方はすごい。ただ事情もあるようで,逗子の政治をウォッチしているこのブログによれば,2006年市議選の1位(1925票),4位(1437票),5位(1416票)の議員がそれぞれ県議選・市長選・市長選に立候補しており,それぞれ後継と目されそうな候補はいるものの,非常に多くの票が浮いてる感じになっていた,という背景もあると考えられる。
これらの点を差し引いても,地方選挙におけるみんなの党の躍進という現象は興味深い。さっくりとその理由は二つくらい思いつく。まずひとつは,中央集権が強いために有権者が中央とのパイプを重視すると仮定すると,政権を取った民主党には入れずに全く政権に参与していないみんなの党になぜ投票するんだろう,という風に考えることができるから。もうひとつは,逆に中央集権がそんなでもないと仮定しても,みんなの党という極めて全国志向の強い政党は,必ずしも地域の利害を訴えるわけではないのではないか,ということがあるから。地方のことは地方で決める,という観点から地域の利害を強調する政党(集団)が存在しうることは理解できるし,実際そういう集団は少なくない。しかしなぜ「地方組織を持たない」といわれるように*2全国志向が強い政党が地方で選ばれるのだろうか。もちろんありうる一つの回答はとても簡単で,そもそも有権者は国政と地方政治の違いなんか気にしてなくて,直近の選挙でそのときに支持している政党に投票するということがありうる。しかし,だとすればなおさら(選挙区でも)みんなの党が伸びてもおかしくないかもしれないのに,実際はある程度地方組織を持っていないと選挙には勝てない,という話になっている。ここで国政と地方政治が別々のものでありつつも,部分的につながっていくのではないかと思うわけで,まさに面白いところ。ちょうど理論的にも盛り上がりつつあるところで,APSRとかAJPSみたいなEstablishedの雑誌にはでないけど,Electoral StidesとかParty Politicsではホットな議論になってる。この状況を整理してそのうち投稿したいと思うのだけど…まずは英語を。

*1:菅原琢,2009,『世論の曲解』光文社新書,153頁以降

世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書)

世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書)

*2:前にテレビでやってたけど,事務所はマンションの一室で,地方からの来客を想定した体制であるとは思えない。