第19回会合(2007/9/20)

中央省庁ヒアリングの二回目。今回は経済産業省内閣府防災担当+総務省消防庁ということで。比較的時間は短めだったものの,どうも長く感じてしまったおかげでまとめが進まず。まあ今回は簡単に。
まずは経済産業省。かなり長めの資料で15分の予定が結局30分に延びたのですが,そこで言われたこととしては,要するに経済産業省が行う中央政府の産業政策は,?リスクマネーの投入において規模の経済が働く,?高度の専門性や資金の集中的な投入に対応できる,?複数の都道府県をまたぐ広域的な取り組みが可能になる,という特徴を持つことが説明されます。これは具体的には中小企業支援政策やベンチャー創業支援などで一般的に言えることであるとして,中小企業支援・ベンチャー創業支援の中でそのような特徴に適合的な対象について中央政府が行い,それ以外のものについては都道府県を中心とした地方自治体が産業政策を行えばいい,という主張になります。まあ僕も聞きながらこの主張自体についてはあんまり文句を思いつかなかったので,このあとどういう話の展開になるんだろう,と思って興味深く聞いていたら,やはり「じゃあ経済産業省の政策は実際上手くいってるのか?」という政策評価のお話になりました。何らかの産業政策が必要という観点に立つ限り,経済産業省による中央地方の役割分担を強調する主張に対してはまあなかなか文句を付けにくいのではないかと思います。まあそれは地方ではなかなか難しいよねぇ,って気分になってくるわけですから。いちおう途中で丹羽委員長が最近はヴェンチャー・キャピタルなんかがリスクマネーを積極的に供給しているわけでそもそも政策自体必要ないんじゃないか?と問いかけるのですが,結局これについてはそんなに盛り上がらず。まあ地方分権改革推進委員会という場で,「そもそも産業政策自体いらないよね」っていう話にはなりにくいんだろうなぁ,とは思うところです。じゃあ他にどこでやるんだ,といわれるとちょっと思いつきませんが。
経産省についてそれなりに盛り上がったのは,前にも一度出てきた商工会議所と商工会の関係の話。おさらいをすると,商工会議所はだいたい市域に,商工会はだいたい町村域に設立されていたものの,1990年代後半の市町村合併のおかげでひとつの市に複数の商工会議所・商工会が乱立することになりこれ如何,ということ。これは僕もちょっと混乱しているところがありますが,だいたい委員と経産省の間で次のようなかたちで若干ポイントがずれているのではないかと。ちなみに以下の委員は主に小早川委員と露木委員。

区域について

  • 委員:これまで市域は商工会議所,町村域は商工会と分けてきた。しかし市町村合併によってそのような基本設計は成り立たなくなっているために,見直しをすることが必要ではないか
  • 経産省:商工団体は,自主的な活動を行う団体としての部分と公共政策を担う団体としての部分がある。公共政策を担う団体としての役割は商工会・商工会議所の両者にそれほどの違いはないが,自主的な活動を行う団体としての部分は経産省が云々すべきではなく,団体の自治に任せるべきである
  • 委員:自主的な部分はまさに自治の問題であり,法律で縛る必要はない。公共政策を担う団体として法律で担保するときに,市域−商工会議所/町村域−商工会と分けた現在の法律と現状があっていない。

補助金について

  • 委員:国はもうほとんど補助金を出していない。都道府県が実質的に商工団体の監督を行っているのだから,商工団体を整理するかどうかは都道府県と市町村の問題ではないか。
  • 経産省:商工団体の全国レベルの団体を経由して特に意欲的・先駆的な団体に補助金を出している。商工会議所は国が関与すべき事務を担っており(原産地証明),質の均一性のチェックなど,一定の関与は残しておきたい

まあ正直なところ,経産省が何を拘っているのか聞いてる限り僕にはちょっとわからない,というのが感想なのですが。委員も別に商工会を潰せ,といっているわけではなくて,単に法律による規制をやめて自主的に活動させればいいじゃないか,そして公共政策を担う団体としての役割については一元的な法律で規制すればいいじゃないか,ということだと思いますが。最後に宮脇事務局長が念押しに確認していたのですが,経産省の今回の主張からは,「なぜ法律が二本必要なのか」がちょっとよくわからないのですね。それがわからないということは,逆に「なぜ二本必要ないのか」を論証することが難しいわけです。主張することを否定する,というかたちをとることができないので。これはある意味で高度なテクニックだと思いますが,「必要ないとはいえない」という主張を繰り返すことで,「必要とはいえない」という主張を妨げることがある程度可能なのかもしれません。今回の議論は,「必要ないとはいえない」という悪魔の証明に嵌ってしまうと,これからの分権委員会が難しくなるかもしれない,とちょっと予感させるところはありました。
さて次は防災関係。正直言って,大災害はやっぱり国だろう,というところもあるのではないかと推察しますが,総じて低調なやり取り。まあ内閣府の出席者が災害時の国庫負担金の地方自治体への渡し方について「災害対策は各省庁が個別法に基づいて職責を果たし,内閣府はそれを積み上げる」という,「ホチキスか!」みたいな話からスタートしたから,というところもあるかもしれませんが。そのあと市町村が自衛隊に直接出動を要請するようにしてもいいじゃないか,という主張が出るものの,挙げられた事例はちょっと特殊すぎて,システム全体をそれに合わせて作るとちょっとコストが掛かりすぎるんじゃないだろうか,というような感じはします。あとは防災基本計画と都道府県の防災計画の関係とか,都道府県の防災計画に係る国との協議みたいな話。しかし防災計画というのはまさに広域的な計画なわけで,日本が単一国家であることのメリットというのはこのあたりに出てくると思うのですが…。まあこの委員会だけに同意を必要とするかは議論の余地があるとして(是正の要求が担保されていることを前提に),協議をなくせっていうのはまあ無理があるだろうと(実際委員もそこまでは言いませんが)。異様に強い地方政府間で連絡調整が上手くいかずに災害で失敗したらみんなが被害をこうむるわけですからね…。まあとりあえずこの分野については融合型のメリットが大きいことを前提とした制度設計(委任とか)が必要な感じがしますが…。