第28回会合(2007/11/13)

今回は前回に引き続いて事務局から出された「中間的な取りまとめ」の叩き台についての審議。日本の審議会の最後の方っていうのはだいたいこういう風になるというイメージなのですが,しかし何とかならないですかね。というのは,基本的に「叩き台にコメントする」という形を取るので,委員−事務局間の議論になりがちで,委員同士の議論がなかなか深まっていかないわけで。委員同士でのコミュニケーションがあっても,小早川委員が法制関係の説明をするものだったり,横尾委員・露木委員が地方の状況を説明するようなものが多かったりするのではないかな,と。事務局長は特に税財源の問題で委員同士の議論を促しているようで,確かに税財源についてはある程度委員間の議論があるのですが,最も重要であるはずの将来像について,結局のところどの部分で共通認識があって,どのあたりを課題と考えているのかというのがいまいち集約されてない。最後の記者質問でマスコミさんが聞けばいいのに,質問はいつもと同じ「5:5ということでよろしいのですか?」だけだし。そういう数字に必要以上に拘るばかりで,重要な議論は伝えなくてもいいのですかそうですか。
一応委員同士の議論がある程度なされた点としては,まずこの文書の性格ということについて。まあ基本的には面白くないとか陳腐だとかそういう話がされてるわけですが…。個人的には踏み込むところは踏み込んだいい内容だと思ったりするのですが,複数の委員から「インパクト」というか,分権論議の歴史性のようなものが物足りないという指摘が。そういう指摘は「どないすんねん?」というようなものだったりすることが多いような気がするのですが,露木委員がされていた以下の指摘は極めて的を得ているような気が。確かに中央省庁の「土俵」に乗ってるといわれればそうなのかもしれません。これをずっと見ている僕自身,将来像が大事だとか書いておきながら,基本的に現状を所与として「どう変えるか」というような見方をしているところがあります。露木委員が言うように,将来像の方を先に持ってきて「現状のどこが問題か」を指摘するような考え方は重要ではないかな,というのが率直な感想だったのですが。

統一性・広域性・専門性,中央省庁からの理屈に対してどう反論するかということが書かれていますが,この書き方だと中央省庁の土俵に乗ってしまってるのではないかという気がしてなりません。まず第一は,統一性の観点に対する考え方云々とありますが,この統一性で縛ること自体が今の日本の社会には決してプラスではないと。それの方が却って社会が弱くなってしまうんだよ,というところが統一性を問題にする最大のポイントなんですよね。ですからそこのところが打ち出すべきポイントだと思います。広域性の問題については,もう広域性を担う主体が国じゃないんですよ。都道府県同士の水平調整で,ある程度の枠組みを作っていくのがこれからの,新しい時代の広域性の主体性なんですよ。そこの部分がなく,中央省庁がこういってるからこうやって反論するんだ,っていうのじゃジャーナリスティックな点から言うと時代性がないと思います。専門性について言うと,私のように小さな自治体でやっている方から見ると,国も専門性がぜんぜん足りないですよ。専門性が不足しちゃってるんですよ。それがなぜかというと,余計なことにあれこれ口出して,本来国が深めなくちゃいけないところに力を注いでないんですよ。頭のいい人いっぱいとっといてつまらないことばっかりやってるから,本来の専門性が発揮できないわけで,そこらへんももうちょっと分権改革委員会としては切り込んでいく必要があるんじゃないかと思います。

あと,限界集落の話も多少時間使ってましたが,名称をどうするのか?とかそういう話が主だったのでここでは割愛します。議論になっていたのはやはり税財源の話でしょう。その議論のポイントは,交付税を抜本的に改革するかどうか,すなわち地方自治体間での水平調整をどのように考えるか,というところにあるように見えます。議論の中では「地域間の連携のしくみ」といったようなかたちで呼ばれているわけですが,この点について最も先鋭的に主張している露木委員は,総務省による分配ではなく,地方の方で自主的に制度を運用できるような仕組みが必要だ,ということを主張しています。小早川委員も「新しい財政調整のしくみにおいて,国の裁量に地方が依存するような仕組みは決して望ましくないと思っているわけでして」と発言していて,比較的近いのではないかと。それに対して猪瀬委員は(1)交付税特別交付税があるのに水平調整は屋上屋,(2)水平調整は応益原則に反する,という観点から反対,横尾委員はそもそも現行の交付税の改革を性急に進めるべきではない,という感じの意見を出しています。この辺りから見ると,(1)現在かなりの程度財政調整機能を持っている交付税をそもそも抜本的に改革する必要があるか,(2)抜本的な改革を行うとすれば応益原則はどのように扱うか,というところが焦点になるのではないかと。まあそういってももちろん(2')交付税については抜本的な改革ではなく必要な手直しをする,というオプションも考えられるわけですが,この議論についてはあまり出てきていない(というか技術的過ぎるので出しにくい?)という感じでしょうか。各委員それぞれ背負ってるものもあると思われるので,なかなか将来像を一致させることは難しいでしょうが…基本的なコンセンサスをどのように取るか,あるいは当面先送りしておくか,というのは「会議の進め方」の文化人類学として見ておくのもそれなりに興味深いのではないか,と思ったり。