世の中を知る、考える、変えていく

飯田高さん、近藤絢子さん、丸山里美さんと共編で、有斐閣から『世の中を知る、考える、変えていく―高校生からの社会科学講義』という本を出版しました。社会科学のうち、経済学・政治学・法学・社会学という分野とその具体的な「使い方」の紹介をしているもので、タイトルにもあるように、読者として高校生の方々を意識した本ということになります。高校生を意識する、というのは大学教員である執筆者にとってあまり慣れていないわけで、別に編者の中でも「これが普段と違うんだ」というのがあるわけではないと思います。それでも、それぞれの分野で何を面白いと考えているか、どんなところに興味を持っているかを伝えること、そして内容をある程度限定しても、大事なところをごまかさずに丁寧に説明していく、というのが基本的なスタンスになっているように思います。

私自身は「編者」という仕事は初めての体験でしたが、楽しく仕事をさせてもらったと思います。他の編者のみなさんは、お名前を知っていたもののお会いしたことはない方々で、そう思ってたら進行は全部ウェブ会議で行われたので、実はまだ他の3人の皆さんと対面であったことありません(苦笑)。それでもウェブ会議では率直に意見交換をしてきちんと合意しながらできてきたと思いますし、何よりみんな〆切をちゃんと守る感じで素晴らしいと思いました(小並感)。まあちゃんと成果も出たので一回どっかでお目にかかりたいですが。

といっても編者らしい仕事をしたのは基本的に初めのほうだけで、どういうトピックを選ぶかを決め(はじめの案からそのまま残ってるのはテクノロジーくらい?)、各学問分野を紹介する第1部をざっくりと書き、環境・貧困・テクノロジージェンダーというトピックの担当者を決め、そこから具体的に執筆される方にお願いをしていく、というくらいです*1。執筆者をお願いするときは、まず担当する編者が読んでみたいという人にお願いしたいということがあり、同時にそれぞれの学問分野の下位分類や執筆者のジェンダーなどいろいろなバランスを考える、という感じでしょうか。政治学の場合は、規範理論と実証分析、国内と国際、質的研究と量的研究、歴史と現代政治…とかいろいろあるわけですが、そのバランスを考えつつ依頼したつもりです。もちろんそうやって4人の方しか選べないので偏りが出てしまうのは否めないですが、個人的にはパズルのピースを埋めていくような、面白い作業でした。それぞれの分野・トピックで合計16人もの皆さんにお願いしたわけですが、誰にも断られることなく本当に素晴らしいものを書いていただくことができたと思います。

学問分野についてもトピックについても、網羅的というわけでは決してありませんが、それぞれが「こういう問題に取り組んでいるんだ」ということが伝わるカタログになっているように思います。自分自身、政治学だけでなく他の分野の知らないことについてもいろいろと発見する機会になったと思います。さらに、カタログで内容がてんでバラバラ、というわけでなく、社会科学として共通のモチベーション、他者の存在や行動を理解する、ということだと自分では思っているのですが、そういうことが伝わるようなものにもなっていると思います。関心のある方にご覧いただければ嬉しいです。

*1:もちろん原稿についてのコメントとかもあるわけですが、実際皆さん初めから素晴らしいものを書いてくださっているのでその辺はあんま編者らしいという感じでもなく…。