最近の本

といいつつ、あんまり関係ない本読んだりして。
「最近何か面白い本ある〜?」は毎回のようにする会話ですが、どうも最近当たり!というのが少ないらしい。とはいえ、まあちょこちょこと読む本はあるわけで。竹中治堅[2006]『首相支配』中公新書、はある筋ではあんまり評判がよくないですが、確かに理論的というよりは歴史の記述と、それに基づく(まあわりとアドホックな)分析、というのは僕らがやったら怒られますからね。
やや気になるのは、最近この手の議論が新書であるとか、論壇誌(って死んだんだっけ?)で行われることが多くなってる、ということで。それって「新書/論壇だから(緻密には書けない/書かない)」っていうExcuseを誘発するような気がして。研究者による査読が入るわけではないし…(まあ編集者による査読のほうがきついのかもしれませんが…)。それが当たり!が少ないってみんなが言う状況を導いているのではないか、というのはまあ変数を定義しにくいダメな仮説ですが。

首相支配-日本政治の変貌 (中公新書)

首相支配-日本政治の変貌 (中公新書)

分析自体はそんな感じだったので、まあここからはいかに使えそうな仮説を探し出すか、というのが面白み、ということになるかとは思うのですが、その中でちょっと面白いかな、と思ったのは、例えば、

新進党の)崩壊の理由として同様に重要なのは、1996年10月の総選挙で新進党が敗北したことである。この関連で大切なのは、新進党が結党後、さらに非自民勢力を結集しようとせず、民主党の成立を傍観したことである。このために、不利なかたちで選挙に臨まざるを得なくなったのであった。(pp.80-81)

個人的には、敗北したから(あるいは政権にいなかったから?)崩壊した、っていうのは何か説明になってるのかよくわかんないのであんまり好きじゃないのですが、でも「非自民勢力を結集しようとしない」というのは、選挙制度との関連からも可能な説明じゃないかな、ということでわりとアリなのかなぁ、と。また、新進党民主党がなぜ非自民勢力を結集しようとしなかったり、しようとしたり、という違いが生まれるか、とかはやや面白いかなぁ、と思ったりするのですが。まあそんなの当然だろゴルァといわれると謝るしかないのですが。

まあ結局のところ、ここに尽きるんだろうなぁ。この議論は出尽くしてる感じもするけど。

結局は、多くの候補者が執行部の裁定にしたがわざるを得なかった。小選挙区制のもとで公認を得られないことは、半ば落選を意味したからである。また、小選挙区から比例区に転じた場合には、執行部に対する立場はいっそう弱まることになった。仮に当選しても小選挙区での足場を喪っているからだ。
自民党内で執行部の力は絶大なものとなっていく。執行部の頂点に立つのは総裁である。したがって、執行部の力が強まることは、自民党内における総裁の権限がそれだけ強まったことを意味していた。(p.134)

保守系無所属自民党に対抗して出ようとする人たちは決してコアを持った大きな勢力にはなりえない。派閥が応援して当選したとしても、結局その次の選挙では公認が必要になるわけで。それは民主党も同じことだと思うけどどうなんだろ。

最後に、この本で言うと、分析としてはやはり「2001年体制」ということになるのかと思うけど、その場合、小泉首相をどう評価するのか、という話はやはり重要。個人的には制度として「2001年体制」といえると思うけど(つまり、「内閣官房」ができて制度的にスタッフを自由にいじることができる可能性が担保されたこと)、この本を読んで浮上する問題は、小泉首相という変数が制度を「定着」させるために必要な変数であったか、ということではないか。小泉首相が「定着」を早めたという主張に異論はないけど、制度に注目するならば、しばらくの期間があればその体制はするのではないかという主張もありうるのでは、と思うところ。まあ当面は二元代表の一つとしての(!)参議院が問題にはなると思うけど*1

*1:現在の参議院議員の選出制度を考えるとやはり「再考の府」というよりは二元代表の一翼であるようにしか見えないので…