今は昔

時事通信の記事より。時代が変わったというか,枠組みが変わったというか。

◎尾身、中曽根氏の公認申請せず=知事選応援不十分−自民群馬県
自民党群馬県連は6日までに、先月22日の群馬県知事選で当選した党公認候補の応援活動が不十分だったとして、地元選出の尾身幸次財務相衆院比例北関東)と中曽根弘文元文相(参院群馬選挙区)を、それぞれ次の衆院選参院選で党本部に公認申請しない方針を決めた。近く党本部に正式に伝える。
同知事選で自民党は、新人で前県議会議長の大沢正明氏を公認。5選を目指した小寺弘之前知事との保守分裂選挙となった。 

県選出国会議員が知事選の応援活動が不十分と判断された場合に次期国政選挙で公認申請しないことが申し合わされていた,ということですが,現役の財務大臣と超大物の二世議員に対して地元が反旗を翻すというのはなかなかにスゴイ。日本の伝統的な政治学者の中では,以前の中選挙区制によって培われた分権的な地方組織(要するに個人後援会組織ですが)が長く続くだろうとする理解が強かったわけですが,いやいや全く。このような動きの背景には,もちろん小選挙区制の導入によって党本部の規律が強まり,(政党リーダーを除く)候補者個人の力が削がれたということがありますが,もうひとつの原因として,知事というポストの重みが増したことにあると考えられます。以前であれば,地元のボス的な国会議員に陳情して便宜を図ってもらうことが重要であったのに対して,最近では国会議員よりも知事を自分たちの影響下に置くことが地方政治家にとって決定的に重要になっているのではないかと。影響下に置く,というのが言いすぎであるとしても,少なくとも自分たちのことを無視する(可能性が高い)人が知事になるかどうかということが本当に死活問題であり,(以前はそれが全てとも思われた)国会議員に対する忠誠すらも二の次になるほどのものになっているのではないかと考えられます。そう考えると,県レベルへの権限委譲を進め,結果として知事の権限を増やすことになっている地方分権改革にはそれなりの効果が出ていることを示しているのではないかと考えられます。そして,これまではかなり緊密にリンクしてきた国政レベルと地方レベルの政党連合にズレが生じて,知事選挙を軸とした地方レベルにおける独自の連合形成が見られるようになるのではないかと。そのときには地方政党としての公明党,というのは極めて重要な位置を占めることになりそうですが…。

政界再編の研究―新選挙制度による総選挙

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