地方政治において,国政と同様に社会党は長らく自民党に次ぐ第二党で,野党の中では優勢な第一党であり,日本政治の対立軸はいわゆる保革の対立を基調としていた,というのは一般的な議論であると考えられています。僕自身も博論で地方政治の話をするときに,保革対立の話を書いたりもしますが,実際のところ,物心ついたころには社会党は最後の一花(89年参議院選挙)を咲かせたあとで,どうも社会党についてのイメージはわきません。ということで,気分転換がてら社会党に関する本を読んでみることに。まあ気分転換というには重いですが,原先生の本を読むのは好きなので。残念ながら,地方政治についてはほとんど触れられていませんでしたが,内容としては面白かった。
戦後史のなかの日本社会党―その理想主義とは何であったのか (中公新書)
- 作者: 原彬久
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2000/03/01
- メディア: 新書
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年末にいくつかの研究会で,「55年体制」というのは何だったのか,という話を聞いていて,それを意識しながら読んでいたのですが,この本を読んだ感想としては,「55年体制」という表現はその「体制」を必ずしも上手く表現していないのではないか,と思います。年代からいうとむしろ重要なのは,社会党左派が党内の主導権を掌握し,自民党との「体制選択」を控えめに有権者に迫ることを決定付けた安保の60年なのではないかと。55年の時点では,まだ社会党のなかで右派と左派の主導権争いが激烈で,議会制の中で政権奪取を目指す右派と議会制を否定する傾向を持つ左派のどちらが勝つかわからない状況にあったのではないかと思われます。この状況では,社会党右派が自民党の非主流派と連合する可能性も考えられたのではないか,と思いますが*1,左派の主導権が確立し,右派の一部が民社党として分裂した結果,まさに巷間言われるところの「55年体制」が確立したというような印象を持ちます。それは,政権党である自民党に対して,議会内での政権交代を重視する右派が凋落し,そもそも議会制を否定するような動きを見せつつ,本気で否定することができない社会党の並立,ということですが,こうなるともう政党間競争なんて…。まあそら生活が豊かになっていく中で現体制(議会制)自体を否定する政党に対しては長期的に支持が失われるのは当然でしょうし,政権党に対するAlternativeとして中道新党しかないからそこに票が流れるのも当たり前,ということですが。
しかし社会党というのは本当に謎が多い。個人的に一番よくわからなかったのは,なぜ右派が全て民社党に流れずに,左派に牛耳られた社会党に一部残ったのか,というところです。身も蓋もない話をすれば,おそらく金がないから,ということではないかと思われます。左派には最大の労働組合であった総評というバックがいて,それなりに金が入ってきたとされているのですが,じゃあなぜ総評はずっと左派のほうにお金を入れていたのだろう,という疑問は残ります。まあ単に体制変革みたいな一度挙げてしまった拳を下ろせなかっただけなのかもしれませんが,それにしてもその結果が自民党と社会党左派との馴れ合いで,自社さ政権ができただけ,というのはあまりにも…。しかし,このあたりも含めて,戦前の日本の政党政治と同様に,「体制をどうするか」「政権をどうするか」という二つの競争を同時にこなさなければならなかった時代として分析することができるかも,と思ったりします。落ち着いたらもう少し社会党関係の本を読んでみるのも面白いかも。
- 作者: 山口二郎,石川真澄
- 出版社/メーカー: 日本経済評論社
- 発売日: 2003/10/01
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- 作者: 新川敏光
- 出版社/メーカー: 法律文化社
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- 作者: 森裕城
- 出版社/メーカー: 木鐸社
- 発売日: 2002/01
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