地方債破綻?

時事通信で極めて興味深い記事が。何か最近方々で「学会報告論文が終わった」というコメントを見て,一人で焦っているのですがなかなかこちらは終わらないものの…。

【海外行政事情】米南部の自治体、破綻の危機=史上最大規模
【ニューヨーク29日時事】米南部アラバマ州のジェファーソン郡が、46億ドル(約4800億円)の債務を抱え、米自治体としては史上最大規模の破綻(はたん)の危機にひんしている。同郡が破綻すれば、1994年に運用で16億ドルの損失を出し破綻したカリフォルニア州オレンジ郡を大きく上回る規模となる。
支払い難の原因となったのは、同郡が発行した変動金利型の仕組み債金利負担を抑制できるはずだったが、信用不安から逆に金利が跳ね上がり、支払いコストが急増した。「日本でも財政難の自治体ほど、こうした仕組み債を利用している可能性が高い」(自治体関係者)とされ、日本にとっても対岸の火事とは言えない。
アフリカ系が人口の4割を超え、住民の平均所得も低いジェファーソン郡は、下水道の改修工事のための資金調達に当たり、「金利負担を抑えられる」との金融機関の触れ込みを信頼し、仕組み債を発行した。しかし、低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き問題をきっかけとした金融市場の混乱で金利が急上昇、元利払いは下水道収入の約2倍に膨らみ、返済不能となった。
ジェファーソン郡が発行したのと同様の仕組み債は、外資系金融機関を通じ日本の自治体にも浸透している。ただ日本の地方債市場は、米国と異なり私募発行が中心であるため、仕組み債を発行しているかどうか外部からは把握しにくい。「自治体が、住民の知らぬ間に仕組み債に手を出している可能性もある」(前出の自治体関係者)とされ、注意が必要かもしれない。

この記事はなんというか色々なポイントで考えさせる。まずこのジェファーソン郡も破綻のきっかけとなったのは「下水道」。下水道というのは行き渡らせようとするとどうしてもお金がかかって仕方がないらしい。先日のNHKスペシャル「大返済時代〜借金200兆円,始まった住民負担」(これもかなり考えさせるものだった)でもお金がかかって町の財政を圧迫していたのが下水道だった。しかも,日本では人種の問題はあまり論じられることはないとはいえ,「格差!」の大合唱の中で相対的に平均所得が低い地方部から状況が厳しくなっていく現状とも重なるものが見える。
そこで地方債。「外資系金融機関を通じ」と言い切れるかどうかはちょっと怪しいところがあって,十分日本の金融機関だってしくみ債を地方自治体に売ってるわけですが(そして評判の良くないところもあるみたいですが)。しかし,記事の中の「日本の地方債市場は、米国と異なり私募発行が中心であるため、仕組み債を発行しているかどうか外部からは把握しにくい。」というのは全くその通り。だって調べようとしてもよくわからないし,「把握しにくい」というけどどういう方法を使えば把握できるのかすらよくわからん,と。まあ各自治体に電話して聞くぐらいしか思いつかないわけですが。ちなみにしくみ債の現状については地方債協会が報告書をまとめているようです。
[研究][地方財政]地方債二題
ただちょっとわからないのは,三段目を見る限り下水道収入と元利払いを比べているところを見ると,これは下水道関係のレベニュー・ボンドなのかな,という気もするけれども,それにしては4800億は多くないか,というところ。まあ単純に日米比較はできないにせよ,今ざっと,平成18年度の市町村別決算状況調で市町村の地方債残高を見てみると,4800億というくらいのロットで借金持ってるのは政令指定都市くらいなわけで,アメリカのひとつの郡が抱える借金としてそんなに大きくなるのかはよくわからない。どちらかというと日本の市町村の方が仕事をしている,というのはよく言われることなのに。