秋田県知事選挙

連続して知事関連の話題についてメモ。最近連続して行われた知事選挙のうち,千葉県の方は結局のところ森田健作氏が圧倒的に票を伸ばして勝利。前のエントリのときには自民党が基本的に白石氏を推すのではないかという話だったものの,白石氏の得票を見る限りでは実際のところ自民党はほとんど森田氏に乗ったらしく,もともと保守が強いことに加えて,タレント知事ということで浮動票もそれなりに集めたということを考えると,まあ当然の結果ではないか。政党支持の話も含めて調べてみようかと思っていたら,こちらのエントリがほぼ同じことを既にやられていた。
(追記)菅原琢先生によるこの記事がさらに詳しい。分析の手堅さ,豊富なデータの利用ともにさすが,という感じ。
一方秋田県知事選挙も自民党勝利。マスコミ的には小沢民主党への批判ということで盛り上がっているらしいが果たしてそうか。いつものごとく(苦笑)八幡[2007]によると*1,新しい知事の佐竹氏は,秋田市長として全国市長会の会長であったり,以前は地方分権改革推進会議の委員だったりしてるのでその印象が強いけれども,もともとは県庁の「プリンス」としてキャリアを積んでいて,前知事である佐々木喜久治氏が汚職で辞任した後の1997年の選挙で,自民党の支持を受けて出馬するものの現知事である寺田氏に敗北したという経緯があるらしい。ちなみに今回の選挙で無所属で出ていた前羽後町長の佐藤氏は,前回選挙で自民党の支持を受けて出馬して割と大差で敗北してるわけですが。
ちょっと興味深いのは,秋田県では現知事の寺田氏以外はずーっと県庁出身者が知事になっているということ。まあ佐々木知事が5期(途中辞任),その前の小畑知事が6期でこの二人がめちゃくちゃ長いわけですが。それに対して横手市長から知事になった寺田氏は,このブログでもたびたび取り上げさせていただいているように,割と旧来とは一線を画す手法で注目を集めてきた人ではあるわけで。その寺田氏から後継指名を受けた民主党支持の川口氏と佐竹氏の対立は,単に自民の対立というよりは県庁を軸とした対立として考えられるのではないだろうか,と。河北新報この記事が実によくまとめているわけですが,地域的にもはっきり分かれているわけです。ただちょっとここからではなんともいえないのは,寺田知事が南の出身ということ。特に寺田知事の初当選時の得票の地域的な分布を見てみたいところかなぁ,と。ひょっとするとこのときは自民vs.新進で政党間の色分けがなされていて,地域間の違いが出ていない,とかいうことならわかりやすい。
要するに,マスコミ的には千葉=浮動票によるタレント候補の勝利,秋田=自民対立での自民の勝利,ということなわけですが,ホントのところは千葉=自民の勝利,秋田=地方独自の対立軸,ということなのではないかなぁ,と。だから小沢執行部の責任を追及したいなら,むしろ千葉で大敗を許したところにあるのではないかと…(まあもともと例外的なくらい保守が強いはずなわけですが)。しかし今年行われる知事選(現時点での予定)は,何か極端なものが多いような気がする。
1月25日 山形県知事選挙,岐阜県知事選挙
3月29日 千葉県知事選挙
4月12日 秋田県知事選挙
7月3日 兵庫県知事選挙
7月24日 静岡県知事選挙
9月11日 茨城県知事選挙
10月23日 宮城県知事選挙
11月6日 広島県知事選挙
岐阜県知事選挙は相乗りで全くの無風,兵庫県知事選挙も今のところそういう方向性。まあ兵庫県については,日刊ゲンダイによると大阪の二匹目のドジョウを狙う動きもあるそうですが。で,静岡・広島は既にもうぐちゃぐちゃだし,茨城も国交省元次官を推す動きがあるらしい*2。宮城は二期目だしもともと県議のときから有力だった知事ということなので無風っぽい,と。まああんま知事選観戦記ってわけでもないんですが。

*1:しかしこの本は「学術的」にはいろいろあるのかもしれないけど,簡単な経歴や任期など,裏づけによってコーディングが必要であるとしても,基本的な政治勢力間の対立など簡単に記述されていて,とりあえず調べるには便利すぎる。地方政治を研究する人にとってはしばらくどうしても手放せない一冊であり続けるのではないかと…。

歴代知事三〇〇人 日本全国「現代の殿さま」列伝 (光文社新書)

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*2:このブログの極めて興味深い記事によるとこれは南北対立の芽があるらしい