いただきものなど

職場の同僚である野田昌吾先生に頂きました。政権交代が起きて9月から企画が立ち上がったそうですが,そこから出版というのはなかなか大変なスケジュールです(締切の設定とか)。勉強させて頂きたいと思います。

民主党政権は何をなすべきか――政治学からの提言

民主党政権は何をなすべきか――政治学からの提言

それから,公共政策学会の年報が届いてました。政治学系が入っている雑誌の中では投稿論文の本数が多い雑誌なのだと思います。また,投稿論文ではないですが,特集の中での増山先生の論文,結論部分での「政治主導」への見立てが非常に興味深かったところ。まず,二大政党による「政治主導」が確立しているとされるイギリスでは,Cox[1987]で論じられているように*1,個々の議員が個別に利益誘導を図ろうとするという集合行為問題の解決として,立法権限を内閣に移譲することで内閣に権力が集中し,有権者が選挙によって内閣=政党(執行部?)の選択を行うようになったという歴史的展開があることが説明されます。日本においても同様に集合行為問題は発生しうるわけですが,中選挙区制度においては保守系議員が政権獲得を目指して自民党にまとまり,集合行為問題の解消は自民党の与党審査において行われる,と(一方で個々の議員は箇所付けに集中)。それには論文で議論されているような,国会法によってかけられた時間的制約が存在して,与党審査が意思決定の関門になることが前提になると考えられます。
要するに,これまで時間の制限がきつくて,国会において法案を実質的に議論することができないために,省庁による法案作成と与党審査という国会における議論の前段階のところが重要になるかたちで立法過程の制度化が促されたと。イギリスのような「政治主導」はあくまでも個々の議員から内閣への権限委譲が重要であって,現在の民主党が言うような官僚制に対抗するようなものではないと。これらの点を考えると,まずは立法の時間を制限する制度を変更するとともに,(現在民主党が進めている方向とは異なって)各議員の政策的な活動を促すことが重要ではないか,そして各議員から内閣への権限委譲が起こって「政治主導」になるのではないか,という指摘になります。「政治主導」という言葉はいろいろ言われていますが,権力が集中する内閣に注目してその経路を論じた興味深いものだと思います。これから新しい制度化が進んでいくのだとすれば,国会における意思決定の仕方(端的には国会法になるわけですが)についても議論がされていくということになるのでしょう。

追記

箇所付けの問題とか,国家公務員法の改正がクローズアップされているわけですが,それこそ別に閣議決定の段階でガチガチに決めて修正を想定しないというかたちをとるよりは,国会審議を長々とやることだって理屈としてはおかしくない。それができないのは,時間が制約されている中で多くの法案が出され,会期が終わると審議未了で廃案になるという制度があるからなわけで,同じ批判でもそっちの方をさきに問題にしたって良いのに,と思ったりするところ。本数が多くてどうしようもなという問題もあるだろうけど,そこはまさにどうやって委員会制のメリットを使うかという議論になるんじゃないのかと。
[rakuten:book:13565143:detail]

The Efficient Secret: The Cabinet and the Development of Political Parties in Victorian England (Political Economy of Institutions and Decisions)

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議会制度と日本政治―議事運営の計量政治学

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*1:2005年にペーパーバックが出ていたのですね。